世に殺し屋漫画は数多く、いずれも殺し屋ともう一つ別の要素を組み合わせるケースが珍しくない。Xに3月に投稿された『殺し屋的数学の指南』は、殺し屋と数学を掛け合わせた、誰の目にも新鮮に映るバトル漫画である。
悪党専門の殺し屋としての顔を持つ男子学生・関数馬。ある日、ターゲットを仕留められず、モヤモヤ感を抱えていると、数学教師・一二三からの補習への参加を促される。数学嫌いな関数馬が何とか一二三を言いくるめてその場を去ろうと言葉を並べていると、前日に仕留めそこねたターゲットが再度現れたとの情報が入り――。
連載漫画家のアシスタントを複数掛け持ちしながら、自身の作品づくりに日々取り組んでいるという作者の武田かいさん(@nekoguitar_818)に、ロジカルかつダイナミックな本作の誕生経緯など話を聞いた。(望月悠木)
◼︎5教科の中でも学生に圧倒的に不人気な数学
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――なぜ『殺し屋的数学の指南』を制作したのですか?
武田:本作は漫画の新人賞に出すために制作した読切漫画です。担当編集さんに企画を3本出したところ、本作の企画のウケが良くて制作を進めました。
――“殺し屋と数学”がメインの作品でしたが、そもそも武田さんは数学が得意だったのですか?
武田:数学は得意でした! 大学では教育学部の数学科を専攻していたので、数学の勉強はもちろんですが、人に教えることも勉強していました。大学卒業後は漫画家を目指してアルバイトをしていたのですが、自分のスキルを活かして塾講師をしていました。
――だからこそ、作中に出てくる計算も本格的だったのですね。
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武田:かもしれません。ちなみに、本作の企画が思いついたのも塾のバイト中でした。5教科の中でも圧倒的に不人気な数学は、しょっちゅう生徒から「どうして数学って勉強しなきゃいけないの?」と聞かれることが多くて…。
――確かにそういうことを口にする子供は多そうです。
武田:生徒たちが勉強している様子を見ながら、「数学の考え方を使って敵を倒す先生がいたら面白いかも」と考えていると、“壁を破壊して階段までの最短距離を作るシーン”がパッと頭に浮かびました。そこから「数学に苦手意識のある主人公」「数学が大好きで戦闘能力が最強な先生」という設定が決まっていきました。
――関数馬と一二三というキャラを誕生させた具体的な経緯を教えてください。
武田:まず関数馬はできるだけ読者に共感してもらえるキャラに、先生はギャグ的な存在かつ「こんな先生に教わってみたい」と思ってもらえるようなキャラにしようと考えました。また、一二三先生は割とすぐ決まったのですが、関数馬はなかなか決まらず…。髪型は私が好きな『呪術廻戦』(集英社)の狗巻くんを参考にしています。あとは“数学らしいもの”として、ピアスや襟に×印を入れたのがポイントです。
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――ちなみに一二三の武器として三角定規にした理由は?
武田:バトルシーンがあるので「一二三先生に武器を持たせなきゃ」と考えた際、真っ先にデカい三角定規を思いつきました。学校の授業で扱う物なので馴染みもあるだろうし、そもそも私自身「武器になりそうだな」と前々から思っていたのかもしれません。(笑)
◼︎数式はできるだけわかりやすいものに
――作中には様々な数字を応用した倒し方が出てきました。倒し方でこだわった部分はありますか?
武田:先ほど述べましたが、“壁を破壊して階段までの最短距離を作るシーン”を最初に思いつき、その後に使えそうな数学の分野を考えました。ただ、なるべく数学が苦手な人にもなんとなくわかるような、「できれば小中学校の内容で倒したい」と思い、速さから距離を割り出す方法を思いつきました。
――小中学校でも教わる内容ではアイデアの幅が狭まるため、かなり苦労された印象です。
武田:はい。専門性が高くなると読者に伝わらなくなるため、できるだけわかりやすい内容にする必要がありました。また、ラストシーンなどの「数学を使わないといけない状況」を作り出すことや、「この状況に無理はないか?」みたいな違和感を生まないように配慮するのも大変でした。ここは担当編集さんと打ち合わせを重ねました。
――泣く泣くボツにしたアイデアもあったのでは?
武田:ボツと言うよりは、三角比や確率などの数式は使いたかったです。本編でも使えそうなものもあったのですが、それらを活用した倒し方になると高校数学レベルになってしまうため諦めました。
――今後の活動目標などを教えてください。
武田:今はまだ新人賞で修行中ですが、ゆくゆくは連載を持ちたいと思っています!「新人賞を受賞した後、読切掲載を経て連載する」というのが今の目標です。
(文・取材=望月悠木)
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