味の素AGFのコーヒー「地元ブレンド」好調 きっかけは九州支社長の一言

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2025年04月05日 08:10  ITmedia ビジネスオンライン

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ちょっと贅沢な珈琲店(同社提供、以下同)

 「九州では苦味がなくまろやかで、少し酸味のあるコーヒーが好まれる」――この一言から生まれたコーヒーがある。味の素AGFが2018年から販売するエリア限定商品「地元ブレンド」シリーズだ。「地域によって好まれる味が違う」と聞くとしょうゆやみそを思い浮かべるが、こうした嗜好の違いはコーヒーにもあるのだとか。開発の裏側を、味の素AGFの木村茉莉氏(コンシューマービジネス部 レギュラーコーヒーグループ)に聞いた。


【画像】地元ブレンド エリア&テイスト一覧(全2枚)


 地元ブレンドは、味の素AGFの「ちょっと贅沢な珈琲店」ブランドから販売している。現在は「北海道」「東北」「北関東」「北陸信越」「東海」「関西」「瀬戸内」「九州」という8エリアの嗜好に合わせたコーヒーを展開。味の素AGFの調査によれば、北に行くほどコクがある濃いコーヒーが好まれ、南に行くほどまろやかな味わいが好まれるそうだ。


 木村氏によると、こうした嗜好の違いは、しょうゆやみそと同様に、地域性や食文化が影響しているそうだ。例えば、北海道は重厚なコクとほどよい苦味のあるコーヒーが好まれる。「北海道は神戸や横浜といった港町から遠く、運ばれてくる間に上質な豆が売られてしまいました。残った質の良くない豆をおいしく飲むために深煎りの濃いコーヒーが根付いたといわれています」(木村氏)。北陸信越は和菓子文化が発達しており、お茶のようにすっきりと飲め、香りがよいのコーヒーが好まれるそうだ。


 東海は濃厚な味わいのコーヒーが人気だが、これは「モーニング文化が関係している」と木村氏。トーストをバターやあんこと食べるので、それらに負けないように濃厚な味わいのコーヒーが選ばれるようになっていったという。しょうゆや出汁が甘めの九州は、コーヒーもまろやかで酸味は少ないものが人気だそうだ。


●きっかけは九州支社長の一言


 地元ブレンド開発のきっかけは、2017年にさかのぼる。当時の九州支社長が本社を訪れた際、開発チームに「九州では苦味がなくまろやかで、少し酸味のあるコーヒーが好まれる」と話したそうだ。 


 味の素AGFでは、以前から全国の消費者を調査しており、「インスタントコーヒーとレギュラーコーヒーのどちらを好むのか」「ミルクや砂糖を入れて飲むのか」といった好みについて、地域ごとに差があることは分かっていた。九州支社長の言葉をきっかけに、木村氏を含む開発チームはさらに詳しく分析を開始。これまで蓄積していた好みに関するデータに加え、売り上げデータからも、地域ごとの人気商品に偏りがあることが分かった。


 実際に九州に赴き、地元の喫茶店で出されるコーヒーも調査した。開発チームのメンバーが実際にコーヒーを飲んで、味わいを4象限にプロットし、九州の人が好む味わいをデータ化していった。「その結果、支社長の言葉通り、九州ではまろやかな風味のコーヒーが好まれ、売れていることが分かりました」(木村氏)。この結果をもとに、九州の人が好むコーヒーの開発に着手した。


●営業担当も開発チームに


 通常の商品では、マーケティング部門が一貫して開発を担当する。しかし九州で人気のコーヒーを再現するには、九州をよく知る人の意見が欠かせない。「そのため、開発チームに九州支社の営業担当者を加えました。地元で生活しながら、日々小売店を回る営業担当者は、その土地の好みに詳しいからです。コンセプトの策定から味わいの決定まで、営業担当者から意見をヒアリングしながら進めました」(木村氏)


 約1年かけて開発し、2018年秋に発売した九州エリア向けの地元ブレンド。社内からは「そんなニッチなもの作って売れるの?」と懐疑的な声多かったというが、想定以上に売れたという。


●次に狙うのは「お土産」需要


 九州エリアの成功を見て、次に手を挙げたのが東北エリアの営業担当者だった。九州エリア向けの地元ブレンドと同様のフローで開発を進め、2019年に発売。「『九州だから成功したのかも』という不安はあったものの、売れ行きは好調でした」(木村氏)。その後、全国各地で開発がスタートし、現在の8エリアまで拡大した。


 現在地元ブレンドがないのは、沖縄と首都圏エリアのみだ。木村氏は「沖縄はエリアが狭いため、商品化しても売り上げを立てることが難しいのが現状です。首都圏は地方出身者が多いため、地元の味を見つけるのが難しく、商品化を見送っています」と説明する。


 地元ブレンドの登場は、各地の営業活動にも好影響を与えたそうだ。スーパーやドラッグストアなど、地元の小売店に営業する際、地元ブレンドは仕入れ担当者の心を掴みやすく、契約成功する確率が高いのだとか。営業担当者が直接開発に携わっているので、営業トークへの熱も入りやすいという。


 地元ブレンドが次に狙うのは、お土産需要だ。地元ブレンドはこれまで、スーパーやドラッグストアなど小売店中心に展開してきた。今後は観光客向けに、空港やサービスエリアでの取り扱いを強化する。「地元ブレンドはお土産としては比較的安価で、かつ個包装なので配りやすいです。十分見込みはあると思います」と木村氏。地元ブレンドの今後に注目だ。



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