【フィギュア】王者イリア・マリニンの日本勢への思い「鍵山優真の技術はお手本」「三浦佳生はおもしろい男」五輪への計画も語る

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2025年04月05日 10:20  webスポルティーバ

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世界王者 イリア・マリニン インタビュー後編(全2回)

 世界選手権の連覇を達成し、男子フィギュアスケート界を牽引する存在となったイリア・マリニン(アメリカ/20歳)。鍵山優真との戦い、日本人スケーターへの思い、そして2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪への計画など、彼の現在地を語ってくれた。

【鍵山優真は成長のためのお手本】

ーー今回の世界選手権は、鍵山優真選手との優勝争いと言われていました。ショートプログラム終了時点で鍵山選手が約3点差につけ、大きなリードではなかったことは、フリーでの闘争心に影響がありましたか?

イリア・マリニン(以下同) 優真がすばらしい演技をしたことは、とてもうれしかったです。僕の演技でアメリカの観客が盛り上がったあとだったけれど、優真はシーズンベストの演技をした。それは、ものすごい精神力が必要なことです。リンクサイドで彼の演技を見ていたのですが、本当に誇りに思います。僅差ということは、優真がいかに努力してきたか、そして僕がいかに努力してきたか、僕たちの切磋琢磨を示していることなので、うれしいことです。

ーーフリーでは鍵山選手が力を出しきれず、それでもショートの点差を活かして3位となりました。

 とても驚きました。本当に残念なことでした。優真も、この世界選手権で今季のベストを出そうと努力してきていました。フリーの直前に、「お互い頑張ろう」と声を掛け合っていたんです。ショートはあれだけすばらしかったのだから、フリーは緊張したのかもしれません。でも、最後まであきらめずに滑り抜いたことで、表彰台に乗った。それはすばらしいことです。優真は、僕にインスピレーションを与え、向上し続けるよう背中を押してくれる存在です。来季も一緒に頑張りたいと思います。

ーー鍵山選手からは、どんな刺激を受けていますか?

 優真は、大好きな日本人スケーターのひとりです。もちろん僕に刺激を与えてきたスケーターは、羽生結弦や宇野昌磨など、たくさんいます。優真はそのなかでも、スケーティングがとても上手で、エッジワークがとても深く、エッジコントロールにも秀でています。そしてジャンプの着氷がとても柔らかく、伸びがある。僕とはタイプが違うスケーターだからこそ、彼の技術はとても参考になりますし、僕が成長していくためのお手本だと思っています。

【三浦佳生はエネルギーをくれる】

ーー日本の選手と、とても仲がいいですね。日本語は少しわかりますか?

 日本での試合やショーが増えているので、少しずつ単語を覚えはじめています。日本のファンのためにも、基本的な日本語を知っておくことは意味があると思います。日本のスケーター同士が会話している時も、僕がいると彼らはちょっとした英単語で翻訳してくれますし、僕の言葉も訳してくれる。やりとりしているうちに、自然に単語を覚えています。

ーー4月の「スターズ・オン・アイス」と世界国別対抗戦が終わるまでは日本に滞在するのでしょうか?

 そうですね。3週間は日本にいることになります。とても楽しみです。

ーー日本語がわからなくても、日本の選手と仲良くなることは簡単ですか?

 はい。どんな日本のスケーターでも友だちになれます。僕はあまり人見知りをしないですし、日本語がわからないから話しかけない、なんてことはしません。英語の簡単な単語はみんな知っていますし、それを翻訳してくれれば日本語も覚えられる。いつもと違う環境を楽しんでいます。それにスケーター同士であれば、相手の状況や性格はわかっていますから、こんなことを話したら喜ぶなというのは、想像できます。

ーーそういった性格は、スケートの演技にも出るのでしょうか?

 間違いなく、僕の表現面に影響があると思います。氷上でプロブラムを滑る時は、そのプログラムのキャラクターを演じます。でも、もちろん本物の自分も存在する。つまり自分らしさは、演じるうえでも必要なんです。そういった意味で、僕たちは自分のパーソナリティを理解して、そしてインタビューやメディアに出る時に、公開していったほうがいいと思っています。ありのままの自分を見せることで、生き方やスケート観も伝わりますし、どんなキャラクターを演じたいのかも理解してもらえるはずです。

ーー昨年12月の全日本選手権の試合前に、三浦佳生選手に励ましのメッセージを送ったそうですね。

 全日本選手権の時、佳生はケガをしていました。そのことを知っていたので、メッセージを送ったんです。「君なら、できるよ」「うまくいくことを祈っているよ」と。僕は佳生を本当に応援しているんです。彼はとてもおもしろい男で、試合でもショーでも、一緒にいる時はいつもおしゃべりしています。彼は、持っているエネルギーをみんなに振りまいてくれる存在なんです。氷の上でも、氷の外でも、一緒にいるととても楽しいです。

【五輪王者の先にある目標とは?】

ーーいよいよ来季は五輪シーズンですが、今回の優勝を、ミラノ・コルティナ五輪にどうつなげていきたいですか?

 この優勝はゴールではありません。来季の五輪に向けて、自分がどのように戦うかを見極めるためのシーズンでした。五輪へは、とにかく最大効率の練習を積み重ね、そして万全のシミュレーションをしていくことです。ジャンプ、スケーティング、演技すべての要素をどこまで磨くことができるか。今季より戦略的に挑むと思います。

ーー五輪の金メダルは、スケート人生におけるひとつの目標ですか?

 スケート人生最大の夢かというと、違う気がしています。五輪は間違いなく、大きな目標のひとつ。でも最大ではない。若い頃は、五輪は最終目標だとずっと思っていましたし、五輪で金メダルを獲った先には、何もないと思っていました。でも、今は違います。五輪王者として世間に知ってもらうこと、そして人に感動を与えることで、フィギュアスケートという競技そのものに影響を与えられると思う。そこに目標があります。

ーー元フィギュアスケーターのご両親も五輪経験者です。体験談などを聞くことはありますか?

 不思議なことに、両親は五輪の経験をまったく話してくれません。もしかしたら、五輪が近づくにつれて、何かを話してくれるのかもしれません。ただ、五輪を特別だと考えず、「ほかの大会と同じように自分のベストを尽くせ」という意味なのかも知れません。

ーー五輪でも「7本の4回転」に挑むプランでしょうか?

 やはり来季は戦略的な計画を立て、僕が本当にやりたいことを、ブレインストーミング(アイデアを出し合い、新しいアイデアを模索すること)する必要があると思います。「7本の4回転」については、世間的にはさまざまな意見があるとは思いますが、僕にとっては理想の結晶なんです。でも、僕の体調や完成度次第だし、リスクが大きすぎると感じたら、計画を変更しなければならない。いろいろな選択肢はありますが、ネガティブな思考ではなく、いかにポジティブに選択できるかが大切だと思います。

ーー今大会でチームUSAは3種目(男子、女子、アイスダンス)で優勝し、来季のミラノ・コルティナ五輪の団体戦への期待が高まっていると思います。

 4種目のうち3種目でアメリカが世界王者となったことには、とても興奮しています。そしてチームUSAがお互いを支え合っていることの証明でもあります。この母国開催のイベントで、お互いを応援し、力を発揮できるようにサポートし合ってきました。チームUSAは家族のように絆が深まり、来年の五輪を心待ちにしています。

ーーありがとうございました。まずは「スターズ・オン・アイス」と世界国別対抗戦での演技を楽しみにしています。

終わり

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<プロフィール>
イリア・マリニン/2004年、アメリカ・バージニア州生まれ。2022−2023シーズンからシニアへ移行し、USインターナショナルクラシックで史上初の4回転アクセルを成功。2023−2024シーズンにGPファイナルと世界選手権で初優勝。2024−2025シーズンはGPファイナルや世界選手権など出場した全試合で優勝している。

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