「iPhone 16e」全方位レビュー、iPhone 16 Proと比較して分かった“真の実力” Apple好きほど選べない?

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2025年04月07日 14:30  ITmedia Mobile

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Apple製「iPhone 16e」は最新の廉価版だが、部分的には上位モデルiPhone 16 Pro並みの機能を備えたモデルだ

 「iPhone 16e」は、6.1型ディスプレイにApple Intelligenceに対応するA18チップ、2倍撮影にも対応した4800万画素カメラ搭載や長時間動作に対応しながらも、一括価格では9万9800円(税込み、以下同)からと現行のiPhoneでは一番低価格なモデルだ。


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 この春商戦では、大手キャリアがMNP契約による上限4万4000円の割引と、2年後の返却がお得な下取りサポートを組み合わせることで 実質1000円前後、店頭では“実質0円”に近い金額で利用できるとアピールしており、乗り換えや初めてのスマートフォン向けのモデルとして注目を集めつつある。これまでの廉価モデルiPhone SE(第3世代)の6万2800円と比べると高額だが、現在の市場にはある程度適応できている。


 iPhone 16eを実際に購入して利用したが、確かに高性能でバッテリーの持ちもいい。部分的にはiPhone 16 Pro並みの性能を有しており、初めてのiPhoneに適したモデルだ。一方で、既にiPhoneとApple製周辺機器を活用している人からすると評価が大きく落ちるモデルという印象も受けた。この評価が真っ二つに割れがちなiPhone 16eの実力について、iPhone 16 Proとも比較しつつ詳しく見ていこう。


●有機ELの画質とスピーカーは良好、動画やアプリを存分に楽しめる


 デザインや周りの仕様は、iPhone 12〜14あたりまでのモデルを踏襲している。サイズは6.1型の有機EL(2532×1170ピクセル)で、上部の中央に顔認証Face IDのセンサーやインカメラを搭載する。明るさは通常の利用時だと最大輝度800ニトで、明るい屋外でも画面をしっかりと確認できる。リフレッシュレート60Hz表示で、色周りの表現は周囲と色温度などを合わせるTrue Toneに対応する。


 ディスプレイの仕様を他のiPhone 16シリーズと比べると、普段使いでの差は少ない。Dynamic Islandも、便利さと表示の邪魔さで一長一短だ。一方で、こだわりのある人向けの16 Proの120Hz表示や、撮影時にやや便利な16 Proと16の屋外で最大輝度2000ニト表示といった機能はばっさりカットしている。


 映像再生周りの仕様は広色域P3対応かつ輝度(HDR時)最大1200ニトで、高画質HDR動画も明るく鮮やかに再生できる。内蔵ステレオスピーカーはiPhone 16 ProやiPhone 16に近く、音が大きめで立体感もあり映画の音も楽しめた。スピーカーについては、昔のiPhone SEシリーズやiPhone 12以前とは別物だ。


 背面はガラスで、つや消しの磨りガラス加工が施されている。カメラの回りの透明なガラスによるアクセントはない。ホワイトは他のiPhoneで見られる暖色寄りのホワイトと違い、寒色寄りのホワイトだ。実際に手にしてみると、このホワイトと表面のざらつき感からプリンタ用の上質紙のようだという感想だ。保護ケースで自分好みの色や触感へとカスタムした方が満足できるだろう。


 背面のワイヤレス充電は、Qi(最大7.5W)にのみ対応する。iPhone 16と16 Proなどが対応する高速なMagSafe(最大25Wまたは15W)、Qi2(最大15W)充電には非対応で、マグネット対応の周辺機器も利用できない。ただし、市販のマグネットを搭載した保護ケースを装着すれば、多くの周辺機器やQi2充電器で低速なQi充電を利用できる。ただし、Apple純正のウォレットが持つ認識機能は反応しない。


 側面や底面はiPhone 12〜14までと同様のデザインだ。サイズは71.5(幅)×145.7(高さ)×7.8(奥行き)mm、重量167gだ。ほぼiPhone 16と同じ大きさで3gだけ軽い。


 以前のiPhoneにはあった左側面上部の消音スイッチは、16や15シリーズと同じくカスタム可能な「アクションボタン」に変わっている。一方で、iPhone 16と16 Proで新たに加わった「カメラコントロールボタン」は搭載していない。


 AI機能の「Visual Intelligence」を側面のボタンから起動したい場合は、アクションボタンの設定を変更して使うことになる。ただ、現状のVisual Intelligenceは米国以外だと実質Google画像検索とChatGPTとの連携機能が中心で、そこまで重要な機能とはいえない。


●処理性能はハイエンド級、AI処理はiPhone 16 Proと同等


 iPhone 16eは、iPhoneとしては低価格帯モデルながらも最新の「A18」シリーズのプロセッサを搭載している。ただ、同じA18シリーズでも16 ProはA18 ProでGPUが6コア、16のA18は5コア、16eのA18は4コアと差別化されている。メモリ容量はAI機能のApple Intelligence対応を考慮してか、いずれもiPhoneとしては大容量の8GBだ。16eの動作は当然ながら快適で、近年の高画質ゲームもおおむね快適にプレイできる。


 処理性能の検証にはiPhone 16eと、現在の最上位モデルiPhone 16 Pro、前世代モデルだがAI対応のiPhone 15 Pro、iPhone SE(第3世代)を用意した。まずは総合ベンチマークのAnTuTu Benchmarkと、CPUとGPUテストのGeekbench 16、ゲームなどの3Dグラフィックを想定した3D Markの結果をまとめて見ていこう。


 結果、iPhone 16eの性能は16 Proより1〜3割ほど低いものの、1モデル前の最上位機種である15 Proとは同等に近い処理性能を持つことが分かる。iPhoneの中では高性能といっていいだろう。AnTuTuのスコアがやや低めなのは、MEMのストレージのリード・ライトに関する数値が大きく影響している。ベンチマーク側の問題か、低コスト化のために従来モデルと差別化した可能性もあるだろう。


 iPhone SE(第3世代)と比べると、CPUやGPUの処理性能はおよそ1.3〜1.5倍高速だ。GPUは世代の差もあり、レイトレーシング対応テストの3D Mark Solar Bayでは2倍近い性能となっている。なお、日常の操作では処理性能に加えて、メモリ容量の増加が快適さの改善に大きく寄与しているという印象を受けた。


 AI対応機能を快適に動かすための、NPUに関するベンチマークも行った。16eと16 Proが同等の性能で、以前のiPhoneを大きく引き離すスコアを記録した。特に、AI処理で多く利用される半精度浮動小数点(Half Precision)と量子化(Quantized)のスコアが大きく伸びている。今後利用が増えるApple Intelligenceのオンデバイス処理に関しては、16シリーズなら比較的快適に利用できそうだ。


 なお、AI機能のApple Intelligenceは本体を米国の英語設定にしないと利用できなかったが、4月1日から提供されているiOS 18.4にアップデートすることで、日本語でも利用できる。Siriの会話やアプリ連携、通知の優先度の強化や、画像生成、一部の被写体を消すなどの画像編集、テキスト要約や書き換えなどを提供する。ただ、文書生成や高度な機能はChatGPTを利用することも多い。


 Apple Intelligenceには複雑な処理をAppleのクラウドで行う仕組みもあるが、Appleとしてもできる限り端末のNPUによるオンデバイス処理や、外部のChatGPTで完結して欲しいという考えもあるのだろう。


●ロングバッテリー&iPhone 16 Pro越えの27〜30W急速充電に対応


 AppleがiPhone 16eの特徴として大きく挙げているのが、「並外れたバッテリー駆動時間」だ。実際、16eのバッテリーの持ちはスペック値でも6.1型前後のiPhoneの中では16 Proと並んで長く持つと記載されている。AppleはiPhoneのバッテリーの仕様を詳細には公開していないが、この点について検証してみた。


 まず、16eと16 Proの普段の利用を想定したバッテリー持ちのテストを行った。両モデルにドコモのSIMを入れて10時間外出し、持ち歩く途中でSNS、動画再生、ブラウザ、ゲーム、マップ、カメラについて同じ操作を行った。両モデルともバッテリー劣化を示す最大容量は100%で、16 Proの常時画面表示はオフにしている。


 検証した結果、16eは42%減少し、16 Proは48%減少した。普段使いでは16eの方がバッテリー持ちはややいいようだ。


 次に屋内のWi-Fi環境にて、YouTubeのライブ配信を10時間再生した場合のバッテリーの減少を計測した。明るさは50%、フルHD画質だ。結果、バッテリー残量は16eが42%、16 Proが40%となった。スペック表の、動画再生では16 Proの方がややバッテリー持ちがいいという表記が裏付けられた格好だ。16 Proは常時点灯対応もあり、より省電力のディスプレイパネルを搭載しているのかもしれない。


 まとめると、普段使いでは16eのバッテリー持ちは同サイズのiPhoneの中でトップクラスなのは確かだ。ちなみに、フル充電時に必要な供給電力を16eと16 Proで計測して比較したところ、16eは16 Proの約1.13倍必要だった。推測にはなるが、16eはバッテリーの容量自体がやや大きいのだろう。


 充電についてだが、iPhone 16eはUSB PD充電器で最大27〜30Wの電力供給に対応していることを確認できた。これまでの16 Proを含む6.1型前後のモデルは最大20W前後だったので大きい変化だ。これから充電器を購入するなら、小型化が進むUSB PD 30W以上の充電器を選んだ方がいいだろう。


 実際の充電時間はUSB PD 30W以上の充電器を利用すると50%まで25分、80%まで50分、100%まで90分だった。ちなみに、16 Proの場合は50%まで28分、80%まで58分、100%まで109分かかる。


●4800万画素カメラは16 Proゆずりの絵づくり、夜景撮影も十分な品質


 iPhone 16eの背面カメラは、広角26mm相当の4800万画素カメラを搭載。画素数を生かした2倍望遠52mm撮影にも対応する。記録サイズは標準で2400万画素、2倍望遠や夜景撮影時は1200万画素になる。画素数はiPhone 16 Proや16の広角カメラと同じだが、Exifの情報から推測すると、センサーサイズはこれらのモデルよりも小さい。インカメラは1200万画素だ。


 撮影機能を他のiPhoneと比較すると、広角と望遠2倍に対応するが、超広角はない。最短撮影距離は実測でおよそ6センチとかなり寄れる。背景をぼかすポートレート撮影は人の顔にのみ対応する。動画撮影は4K/60fpsに対応し、電子式手ブレ機能を利用できる。より強力なブレ補正のアクションモードと、シネマティックモードには対応しない。


 実際に撮影してみると、明るい屋外では16 Proと同様の絵作りで画質もほぼ遜色ない。絵作りは実際の撮影シーンを重視しつつも、やや鮮やかに味付けする今どきのものだ。絵作りを調整したい場合は、16シリーズの最新世代ではないが、13シリーズから搭載されている「フォトグラフスタイル」機能でカスタムできる。


 一方で、16 Proとの差が見えたのは屋内撮影や夜景モードだ。普段使いではあまり気にならないが、比較すると16eは暗所ノイズが出やすい。夜景モード撮影も16 Proが1秒前後で撮れるシーンに3秒ほどかかり、肉眼で見えないレベルの暗所はうまく描写できない。とはいえ、画質によほどのこだわりがなければ16eも十分優秀だ。一方で、撮影にこだわりを持っている人は16や16 Proを購入すべきだろう。


●新5Gモデムチップに特別な違いはなし、ただしUWB非対応は気になる


 iPhone 16eはモデムチップとして、新たに自社製の「C1」を搭載した。一方で、日本向けモデルでは16 Proや16と違い、1.5GHz帯のBand11やBand21をカバーしていない。実際にドコモのSIMを入れた16 Proと一緒に外で持ち歩き、同じ操作をした印象では通信と通話ともに違いを感じられなかった。通信が快適な場所はもちろん、ラッシュ時の駅で遅くなる場合もほぼ同様の挙動だった。


 スピードテストをSub-6の5Gエリアかつ空いている時間帯に実施したところ、両方とも下り1Gbps前後、上り100Mbps前後の速度を確認できた。モデムチップが変わったとはいえ、現時点で明確な違いはなさそうだ。


 Wi-FiはWi-Fi 6の2.4GHzと5GHz帯のみに対応する。16 Proや16と違い、Wi-Fi 7やWi-Fi 6Eの6GHz帯には非対応だが、現時点ではWi-Fi 6の5GHz帯でも十分高速なので、実用上の問題はないだろう。


 一方で不便なのが、忘れ物防止無線タグのAirTagを探すUWBが非搭載という点だ。このため、近くでAirTagの細かい位置を探す機能を利用できない。iPhone 11以降(SEを除く)を利用しており、AirTagを常用している人はiPhone 16eの購入を避けた方がいいだろう。なお、UWBに非対応でも現在のおおまかな位置情報の確認と音を鳴らすことはできる。


●初めてのスマートフォンとしては優秀、だがApple好きほど選べない?


 iPhone 16eはここまで紹介した通り、普段のアプリやゲームの利用、カメラ撮影、バッテリーの持ちのいずれも十分優れたモデルだ。これからiPhoneや初めてのスマートフォンを購入する人や、古いiPhoneを利用しているが周辺機器はAirPodsぐらいしか使っていない人にとってはかなり優秀なモデルだ。


 その一方で、カメラの表現力や新機能を求める人や、Appleの周辺機器をそろえている人がiPhone 16eを欲しくなることはないだろう。特に周辺機器に関しては、Apple WatchやAirPodsを普段から利用しており充電を楽にするためにワイヤレス充電をそろえている人にとってはMagSafe/Qi2が足りない。また、AirTagを利用している人にとってはUWBによる探す機能がない時点で選択肢から消えることとなる。


 初スマートフォンとしてiPhone 16eを購入した人がAppleの周辺機器を購入すると、次は上位モデルのiPhoneが欲しくなるようにできているともいえる。Appleのエコシステムを沿った製品設計だ。一眼デジタルカメラでは交換レンズ入門に適した高コスパモデルを“まき餌レンズ”と呼ぶこともあるが、iPhone 16eはAppleの“まき餌iPhone”としてよくできた高コスパモデルともいえる。



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