「久保建英は革命家」と絶賛する現地紙 下部組織出身の若手選手を啓発するプレーを連打

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2025年04月07日 18:30  webスポルティーバ

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 4月6日(現地時間)、ラ・リーガ第30節。レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)は、ラス・パルマスの本拠地に乗り込み、1−3と快勝を収めている。ヨーロッパリーグ(EL)とスペイン国王杯では惜しくも大会敗退が決まったが、"再起をかける一戦"として、これ以上ない内容だった。リーグの順位も8位に浮上し、5位、6位に与えられるヨーロッパのカップ戦出場権に望みをつないだ。

" 未来を懸けた一戦"で格の違いを見せたのが、久保建英である。過密日程のターンオーバーで、63分からの出場になったが、右サイドを中心に敵を蹂躙。追いすがるラス・パルマスからしたら、行く手に立ちはだかる魔神のように見えたはずだ。

 ラス・パルマス陣営も、必死になって久保を止めようとしていた。久保と同年同月の生まれで、バルセロナの下部組織「ラ・マシア」育ちの左サイドバック、ミカ・マルモル(久保はジュニア年代の在籍、マルモルはユース年代の在籍で、かぶってはいない)は、久保を抑えようと死力を尽くしていたが、ことごとく無効化されてしまい、最後は哀れにも足をつって倒れ込み、苦痛で顔をゆがめていた。

「革命家」

「エル・ムンド・デポルティーボ」紙は、久保のプレーをそう評している。

「日本人ウインガーはピッチに出てくると、試合の流れを変えた。フットボーラーとして格調高い時間だった。敵チームにとっては何光年も先の存在であることを証明した」

 これ以上ない絶賛と言えるだろう。だが今や、こうした論評は当たり前のようになっている。過去の日本人選手に対し、こうした手放しの賛辞が与えられることは少なかった。やや大げさに言えば、日本人、アジア人に対する"メディア差別"が霧散したのだ。久保は偏見を打破した日本人サッカー選手と言える。

 ラス・パルマス戦、久保はアディショナルタイムを含めても30分ほどしかピッチに立っていない。しかし、エースとして模範を示した。若い選手たちに(彼自身も23歳と十分に若いのだが)指南するプレーだった。

【久保のおかげでチームがアップデート】

 交代出場直後、まずは22歳のDFジョン・アランブルのパスを引き出し、ライン間で受けると、マーカーを片手のハンドオフでいなしながら、21歳のMFパブロ・マリンに"黄金"を感じさせるラストパス、シュートはGKに防がれたが、決定機を作り出した。その後、アランブルのスローインをポストワークで落とし、こともなげに3点目を演出している。

 77分、久保は自陣で簡単にボールを収めると、24歳のMFホン・アンデル・オラサガスティとワンツーで縦に抜け出し、スペースをうまく使い、中央のマリンへ。さらにパスを受けた20歳のFWオーリ・オスカールソンのシュートは甘かったが、連係は鮮やかだった。79分には再びオラサガスティのパスを引き出し、縦に抜け出すとひとりで持ち込むが、アウトサイドのパスはわずかに逸れた。

 87分、久保はセルヒオ・ゴメスのクイックスタートを促し、ハイラインを突破。ドリブルでディフェンスをかわし、ネットを揺らしたが、VARでオフサイドの判定になった。さらに終了間際には、自らプレスバックでボールを奪い返し、自陣からカウンターを発動。うまく敵を引きつけながら、オスカールソンに絶好機を作った。これも枠に入れられなかったが......。

 久保がどれだけ周りと協調し、その力を生かし、高めていたか、この短い記述でも伝わるだろう。

 ラ・レアルは、久保という牽引役のおかげでチームとしてアップデートできている。最近は補強での失敗が多いが、一方でクラブは主力の半数以上が下部組織「スビエタ」出身で、若手を啓発する有力選手がいることで強さを増す構造がある。20歳のレフティアタッカー、アルカイツ・マリエスクレーナは「久保の後継者」と言われるが、その仕組みのなかにいるひとりだ。

「スビエタ」の選手育成の強みは、ユースからトップに昇格するのではなく、まずは3軍のラ・レアルC、次に2軍のラ・レアルB(通称サンセ)でプレー経験を積み、成熟する点にあるだろう。マリンも、オラサガスティも、マリエスクレーナも、マルティン・スビメンディでさえも、それは変わらない。しっかりとプロの土台を作っているから、トップに上がったら定着できるのだ。

 久保はスビエタ出身者ではないが、そうした健全なチームマネジメントのなかだからこそ、十全に力を発揮できるし、同時に自らも先頭に立って成長を遂げている。来シーズンもラ・レアルに残留するのか、どこかへ新天地を求めるのか。それは決定していない。彼が傑出したプレーを見せるほど、移籍の可能性は高まるわけだが、ラ・レアルでの活躍は語り継がれることになるだろう。

 次節は久保がラ・リーガで一歩目を記した古巣、マジョルカ戦だ。

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