AYANEOが最新の7型ポータブルゲーミングPC「AYANEO 3」を6月中旬に発売する。ポータブルゲーミングPCは、PCに詳しいパワーユーザーだけでなく、PCゲーム自体に興味があるライト層からの関心も高まっているジャンルの製品だ。
他のPCメーカーからも新製品が続々と投入されることから、ハードウェアとして進化するスピードも速い。ゲーミング性能だけでなく、小さなボディーだからこそ快適にゲームを楽しむための工夫も目立つ。
新しいAYANEO 3も性能やギミックの両面で期待が持てるポータブルゲーミングPCに仕上がっているようだ。今回はそんなAYANEO 3のレビューをお送りしよう。
●まずはAYANEO 3の仕様をチェック
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まずはAYANEO 3の基本仕様や外観、機能を確認していこう。プロセッサはAMDの「Ryzen AI 9 HX 370」または「Ryzen 7 8840U」から選べる。Ryzen AI 9 HX 370は最新のZen 5アーキテクチャを採用するなど、AMDのモバイル向けプロセッサの最新世代だ。
ゲーミングPCという位置付けになるが、外付けのグラフィックスカード(GPU)は搭載していない。しかし、AYANEO 3で選択できるRyzenに内蔵されたGPUは、Ryzen AI 9 HX 370であれば「Radeon 890M」、Ryzen 7 8840Uであれば「Radeon 780M」となり、デスクトップ向けGPUの「Radeon RX 7000シリーズ」と同じRDNA 3アーキテクチャをベースとしているため、意外と多くのゲームを快適に動かすことが可能だ。
CPUとGPUの実際のパフォーマンスについては、後述するベンチマークテストにて確認してほしい。
メインメモリは32GBまたは64GBから選べる。ストレージは高速なPCI Express 4.0に対応したSSDで、こちらも1TB、2TB、4TBが用意されている。
ディスプレイは7型有機ELまたは液晶で、解像度はフルHD(1920×1080ピクセル)だ。リフレッシュレートは有機ELが最大144Hz、液晶なら最大120Hzまでとなる。遊びたいゲームジャンルで選んでもいいだろう。
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それ以外の仕様については全て共通だ。OSはWindows 11 Home、ワイヤレス機能は無線LAN(Wi-Fi 6E)、Bluetooth 5.3に対応し、生体認証は電源ボタンとセンサーが一体化した指紋認証を利用できる。
デュアルアンプを搭載したフロントスピーカーや、6軸ジャイロセンサー、振動機能といったゲームプレイに影響するハードウェア仕様についても共通だ。
正規代理店の天空が運営するECサイト「ハイビームオンライン」では、既に予約の受け付けが始まっており、価格は税込み16万8000円からとなる。
なお、今回テストするモデルはプロセッサがRyzen AI 9 HX 370、メインメモリは32GB、ストレージが1TB SSD、ディスプレイは有機ELのモデル(22万3000円)だ。さらにメモリ、SSDが多いモデルも用意されているが、基本的には“AYANEO 3の上位モデル”にて各種テストを行っていると認識していただきたい。
●外観、機能をチェック
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続いてAYANEO 3の外観や特徴的な機能をチェックしていこう。本体正面やディスプレイ、コントローラー部分は1枚のガラスパネルで継ぎ目がない設計で、ディスプレイ部のエアギャップも少なく見やすい。
左右のコントローラー部分からディスプレイまでスペースが設けられているので、操作中に指でディスプレイが隠れてしまったり、タッチパネルの誤操作を招くようなこともなかった。
本体下部は左からコントローラーモードのインジケーター、コントローラーモードの切り替えボタン、マイク、USB Type-Cポート、microSDメモリーカードスロット、3.5mmのヘッドフォンジャックが配置されている。
本体上部は、コントローラーのボタンを除くと左から順に指紋認証センサーが一体化した電源ボタン、ボリュームボタン、OCuLinkポート、USB Type-Cポート、そして大型の排気口が並んでいる。
そして背面は大きく開いた吸気口が本体の半分近くを占めている。上部の排気口と合わせ、排熱処理にはかなり気を遣っていることが一目で分かる。
ボタンは一般的なゲームコントローラーでいう「L1・L2/R1・R2」に相当するトリガーボタンに加え、さらに「L3/R3」ボタンも上部に用意されている。
加えて背面には、グリップした際に中指から薬指で操作できるバックトリガーボタンも左右にあるため、うまく各キーに機能を割り当てれば、かなりテクニカルな操作も容易に行える。
AYANEO 3の商品パッケージには、本体以外に最大65W出力のACアダプター、USB Type-Cケーブル、ジョイスティックの交換キャップ、USB Type-C→USB Type-A変換アダプター、マニュアルが付属している。キャリングケースやキーボードなどは付属していないので、必要であれば別で調達する必要がある。
今回、セットアップには付属のUSB Type-C→USB Type-A変換アダプターを経由させてキーボードをつないで行った。タッチパネルにも対応しているため、スクリーンキーボードを使うこともできるが、手持ちのキーボードを適当につないで使えるというだけでセットアップのストレスはだいぶ軽減されるため、何気ない付属品である変換アダプターの存在は大きかった。
本体重量は公称値で約690g、実測で684gだった。組み合わせるコントローラーボタンのモジュールによって重量に多少の変化はあるが、ほぼ公称値通りの重さと思っていいだろう。
左右のコントローラー部分のエルゴノミクス形状も、成人男性としては手の小さい方の筆者であっても大きすぎると感じることなくグリップ感は良好に感じた。各種キーやボタンに対しても、指が届かないようなこともなく操作感は良好だ。
ただ、本体重量を考えると「ごろ寝で仰向きでの操作」は厳しく、両手に持って机の上や膝上、または寝転がって使う場合でもうつ伏せでの利用が望ましい。
AYANEO 3の独自機能として注目を集めているのが「Magic Module」によるコントローラーのカスタマイズ機能だ。Magic Moduleはソフトウェアでボタンの役割を変更するのではなく、物理的にボタンやスティックの位置を変更できるものだ。
AYANEO 3は標準で「ジョイスティック+十字キー」「ジョイスティック+ABXYボタン」が取り付けられているが、別売で「タッチパッド+十字キー」や「ABCXYZボタン」などが用意されている。
また、Magic Moduleは上下を反対に取り付けることも可能だ。コントローラーを握った際に、親指が自然に届く位置にジョイスティックがあった方がいいと思う人もいれば、十字キーがあった方がいいと思う人もいるだろう。
Magic Moduleの上下を入れ替えれば、使いやすい位置に任意のキーを配置できる。さらに「ABXYボタン」のように、ボタン表面に刻印があるものはボタン自体を取り外し、上下を逆さに取り付け直すこともできる。
交換もかなり簡単で、内部のケーブルをつなぎ替えるような手間は一切ない。ソフトウェア上で交換の操作を行うと、Magic Moduleのロックが解除され物理的に浮き上がるので、取り外して上下を入れ替えたり、別モジュールに差し替えたりすれば自動で認識される。
特にモジュール部分がぐらついてしまうようなこともなく、がっちりロックされるため、激しい操作を行っても外れてしまうような不安もない。
もちろん、Magic Moduleによる物理的なキーやボタンの変更だけでなく、ソフトウェア側からカスタマイズできる幅も広い。プリセットされているものを選べるし、全てのキーを自分の好みの割り付けするようなカスタマイズもできる。また、ジョイスティックの感度も細かく設定できるため、ゲームタイトルやプレイスタイルに応じたカスタマイズを行い、自分好みの1台に仕上げていくのもAYANEO 3の使い込みとして楽しい。
これらのカスタマイズは専用ソフトウェアの「AYANEO Space」から行うのだが、AYANEO 3を起動すると自動的にAYANEO Spaceが立ち上がるようになっている。
AYANEO Spaceではインストールされているゲームを一覧にしてくれる機能や、ゲーム中に設定を切り替えるランチャー機能などもある。
初期設定としてWindows自体のさまざまな設定を終えた後は、見慣れたWindowsの画面を見ることなく、AYANEO Spaceからゲームを起動して遊ぶ、完全なポータブルゲーム機としての使い勝手の良さも高い点は、今回の試用において筆者の気に入ったポイントだ。
●モンハンワイルズも余裕で遊べるパフォーマンス
ここからは実際にいくつかのベンチマークテストやゲームタイトルを実行し、AYANEO 3のパフォーマンスをチェックしていこう。今回は純粋にゲーム機として、どこまでのゲームが遊べるかを確認するテストを行った。
モンスターハンターワイルズベンチマーク
まず真っ先に試したのがモンスターハンターワイルズ ベンチマークだ。今このタイミングで性能を測るとすれば、モンスターハンターワイルズが遊べるかどうかで購入を決めるという人は多いだろう。
設定はベンチマークを起動した際に自動的に選択された「プリセット:最低」のまま、内蔵GPUのRadeon 890Mでも利用できるフレーム生成を有効にしテストを行った。
結果は平均FPSで「71.24」となり、ベンチマークの判定は「問題なくプレイできます」となった。
さすがにデスクトップPCに専用のGPUを搭載した場合よりもスコアは低く、またグラフィックにも粗さは感じられる。だが、ポータブルゲーミングPCを使うシーンや、画面サイズ、画面までの距離を考えるとそこまで粗さが気になることもない。
むしろこれだけ動くのであれば、移動中やPCやテレビの前に構えてプレイする時間が割けないときでも、軽めのクエストを少し進めておくような遊び方ができる。AYANEO 3だけでプレイするというよりは、他の環境も用意しつつ、隙間時間でも一狩り行きたいときに使うとちょうどいいだろう。
Cyberpunk 2077
続いてのテスト発売から時間が経過した現在も、PCで遊ぶには重量級タイトルの定番である「Cyberpunk 2077」だ。
こちらはプリセットから「高」および「低」の2パターンでテストを行った。
「プリセット:高」では平均FPSが47.24、「プリセット:低」では平均FPSが89.11となった。さすがに高画質設定では60fpsを割ってしまうものの、オープンワールドを自由きままに散策しながら進めていくゲームとしては、そこまで動作に難があるようには感じられなかった。
もちろん戦闘やフィールドも場所によっては更にフレームレートが低くなることもあるため、プリセット:低や中といった、もう少し画質を落とした設定にすれば、重量級のゲームタイトルでもストレスなく遊べるだろう。
ARMORED CORE VI
もう1つ、ここ数年で話題になったゲームタイトルである「ARMORED CORE VI」もテスト対象として動かしてみた。
こちらはベンチマーク機能がないため、別途「CapFrameX」をインストールし、フレームレートの計測を行った。ARMORED CORE VI側の画質設定は「最高」に設定した状態で、120秒間の計測における平均FPSは「46.4fps」を記録した。
グラフィックのキレイさの割には軽量なタイトルなので、最高設定であってもまずまずのフレームレートを記録している。
ただ、やはり高速な戦闘シーンでは少しばかり動きにカクつきを感じることもあったため、実際に遊ぶ際にはもう少しグラフィック設定を落とすとよさそうだ。
話題作と重量級ゲームを実施に動かしてみると「意外と遊べる」というのが、AYANEO 3のパフォーマンスだ。これまでポータブルゲーミングPCは「ゲーミングと言いつつ、話題のPCゲームを遊ぶには非力」と思われるものが多い印象があったが、それを拭えるくらいの性能はあるといっていいだろう。
PCMark10(バッテリーベンチマーク)
では、これだけしっかりゲームが遊べるのはいいとして、ポータブルゲーム機として持ち運んでゲームを遊ぶ場合に、どれだけバッテリーは持続するのだろうか。PCMark 10のバッテリーベンチマークテストで「Gaming」を選択し、バッテリー駆動時間の計測を行った。
結果は1時間14分となり、これを短いとみるか、長いとみるかの評価は分かれそうだ。テスト内容はかなり重ためなので、今回ゲームパフォーマンスの評価に使ったような重ためのゲームタイトルを遊んだ場合は、このベンチマーク結果に近いバッテリー駆動時間になるだろう。
ただ、通勤や通学にかかる時間が長めだった場合、その片道分の時間くらいはバッテリーが持つともいえる。もちろん時間が短ければ往復分、バッテリー稼働で遊べるともいえる。
またUSB Power Delivery(USB PD)による充電にも対応しているので、モバイルバッテリーやスマートフォン用の充電器でもAYANEO 3の充電ができることを考えれば、バッテリーが減っても遊ばない時間で充電すれば問題ないとも評することができそうだ。
性能、バッテリー駆動時間、そしてUSB PDによる急速充電、この3つの要素で十分にAYANEO 3は「ポータブルゲーミングPC」を確立させていると言っていいだろう。
●性能もカスタマイズ性も、ゲーマーを納得させる1台
ポータブルゲーミングPCの中でも定番のメーカー、モデルとなりつつあるAYANEO。これまでのモデルも他のメーカーにはないようなギミックや、高性能なSKUのCPUを積極的に採用してきているが、最新モデルとなるAYAENO 3も、これまでのモデル以上に驚く機能や性能に満足できる1台にまとまっている。
特にギミックの面ではMagic Moduleによる物理的なコントローラーのカスタマイズ機能は面白い。ボタン自体が外れるギミックで、ハードウェアとして少し剛性に不安を感じたりするのではと心配だったのが、実際に使ってみるとその心配は杞憂だった。
筆者自身は昔ながらの横スクロールアクションゲームが特に好きで、ジョイスティックよりも十字キーやABXYボタンが使いやすい方が好みのボタン配置だ。「ポータブルゲーミングPCで旧作のゲーム移植を移動中に遊べたら……」と考えてることは多いため、AYANEO 3であれば満足のいくキー配置で遊ぶことができそうで、今回のレビューを通じかなり物欲を刺激されている。
話題作のゲームも十分に動き、重量級のゲームももちろん遊べる。そして専用のソフトウェアでPCであることを気にすることなく、専用のゲームコンソールのように扱うことができる点など完成度も高い。
これからポータブルゲーミングPCを買うのであれば、AYANEO 3を選んでおけばまず不満が出ることはにないだろう。かなりオススメできる1台だと感じた次第だ。\
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