Nothing Japanは4月8日、スマートフォンの新製品「Phone (3a)」の日本での取り扱いを発表した。8日に予約を開始し、15日に発売する。価格はメモリ+ストレージの構成別に8GB+128GBが5万4800円、12GB+256GBが5万9800円。
キャリアでは楽天モバイルが取り扱い、限定カラーを独占販売する。楽天モバイルでの価格は5万4890円からで、MNPで楽天モバイルに契約すると、最大2万ポイントが還元される。
発表に合わせて、Nothing Japan マネージングディレクターの黒住吉郎氏が製品について報道陣に説明した。
●Phone (3a)は「ユニークな特徴を持つオールラウンダー」
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Phone (3a)は、グローバルでは3月にPhone (3a)シリーズという形で発表されている。Phone (3a)の他、ペリスコープ望遠レンズを搭載した「Phone (3a) Pro」もあるが、日本ではPhone (3a)のみを展開する。
カラーバリエーションはホワイトとブラックが基本色で、他に楽天モバイルのみで取り扱うブルーがある。販路は楽天モバイルの他、Nothingのオンラインストアや量販店など一般チャネルが含まれる。MVNOではIIJmioの取り扱いが発表されている。
外観はこれまでのデザインを踏襲しながら、背面パネルを従来のアクリルから硬質なガラスに変更した。また、カメラが2眼から3眼になった。プロセッサはQualcommのSnapdragon 7s Gen 3を採用。従来のMediaTek製プロセッサから変更した理由について黒住氏は「AIによって、プロセスパワー、オンデバイスのプロセスパワーが非常に必要になった。カメラもよくなった。5Gの負荷がかなり多くなってきて、ネットワークの安定性も考慮した」と説明する。
「CPUやGPUだけではなく、AIを含めたオンデバイスの処理が圧倒的によくなっている。もちろん、通信キャリアさんのQualcommさんに対する信頼性は非常に高いものがある」(黒住氏)
デザインについては、「2眼から3眼へと大きく変わったカメラをどうやって統合するか」が課題だったという。その部分では、日本の文化や意匠、独特なタイポグラフィ、フォントをかなり参考にしているという。「3カメラだけが突出してしまうかもしれないところ、3カメラを強調して存在感を残しつつも、しっかりとNothingのデザインランゲージに融合できた」と語った。もちろん、通知やカメラのセルフタイマーなどで光る背面のライト「Glyph Interface」も健在だ。
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ディスプレイは6.77型有機ELディスプレイを採用し、Phone (2a)の6.7型から若干大きくなっている。その関係でサイズもやや大きくなったが、厚みは0.1mm薄くなっている。「ガラスを使うことで、若干コーナーがシャープになっている。全体がフラットになったが薄くなっているので、非常に持ち心地のいいプロダクトに仕上がった」と黒住氏は自信を見せる。
Nothing史上、最も大きく明るいディスプレイで、輝度は最大3000ニト、120Hzのアダプティブリフレッシュレートに対応する。バッテリーは5000mAhで前モデルと同じだが、プロセッサやNothing OSとの最適化でバッテリーの持ちは「体感的に長くなっている」とのこと。50Wの急速充電も可能だ。IP64の防塵(じん)・防滴性能を備え、おサイフケータイとeSIMにも対応している。
Phone (3a)は、「いろいろとユニークな特徴を持っているが、価格帯も相まって非常に優れたオールラウンダーになっていると思う」と黒住氏はアピールした。
●楽天モバイルは「向いている方向が似ている」
カラーに楽天モバイルのみが取り扱うブルーがあるように、Nothing Japanとして初めて携帯キャリア(楽天モバイル)に製品を納入することになった。
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「2024年4月のローンチイベントでは(キャリアの取り扱いについて)レディじゃない(準備ができていない)と言った。製品は拡充していない、オペレーションもマーケティオングも十分ではない、お客さまもつかみ切れていないという状況を伝えた。1年たって、その辺がしっかりしてきた」(黒住氏)
楽天モバイルについて、「向いている方向が似ていると思った。小さいキャリアではないけれど、他の3社と比べると、まだどうやって大きくしていくかというところだと思う。われわれも同じ。一緒になって登っていければと。また、楽天さんの業界の慣習にとらわれないやり方は賛否両論あると思うけれど、新しいことをやろうとしている。その部分はわれわれと非常に似ていると思っている」との印象を語った。
楽天モバイルはブルー、ホワイト、ブラックの3色を取り扱う。オンラインショップの他、リアルのショップでも販売される。スマホだけでなく、Nothingのオーディオ製品も販売するという。
●カメラはハードウェアとソフトウェアの両面から改善
「いまひとつという評価に悔しい気持ちだった」と黒住氏が言うカメラは、ハードウェア、ソフトウェア、使い勝手まであらゆる方面から見直し、アップグレードした。
背面のカメラはメインがサムスン電子製「ISOCELL GN9」センサーを採用した光学式手ブレ補正付き5000万画素カメラ。GN9センサーについて黒住氏は「同じサイズの他のセンサーと比べて、かなり多くの情報量を取り込むことができる。暗いところでもきれいに撮れて、細部まで鮮明に表現できる。非常に優れたセンサー」と高く評価している。
センサー自体はPhone (2a)と同じものだという。しかし、今回はサムスンとともに「ディープラーニングを使って、かなりの書き込みを加えた」センサーになっている。
「シーン別にいろいろな撮影パターンを、われわれとサムスン側で蓄積して書き込んだ。正式なプロダクト名はGN9DLと「DL」が付いていて、そのバージョンはわれわれだけが使う」(黒住氏)
最もアップグレードしたのは5000万画素の望遠カメラだという。望遠レンズ自体の性能としては2倍で、ロスレスで4倍になる。光学とデジタルのズームを合わせて最大30倍のウルトラズームが可能だ。このウルトラズームについて、「もっと高倍率にできるが、そうするとロスが出るので、最大30倍で調整した。これは妥協しないためのわれわれとしての判断」と語っている。ちなみに、黒住氏のお勧めは2倍で撮る人物のポートレート写真だ。
超広角については、従来と同じソニー製センサーの800万画素カメラ。インカメラは3200万画素だ。
Nothingが「TrueLens」エンジンと呼ぶコンピュテーショナルフォトグラフィのエンジンは3世代目。GoogleとNothingの技術を組み合わせて実現しているUltra HDRも搭載している。有効にすると、かなりはっきりした映像になるので、黒住氏は好みに応じてオン/オフすることを提案していた。
カメラのUXは、Nothing OS 3.0で新しいUXに変わっている。初期のUXは非常にシンプルで、他社スマホでは使える機能も使えない場合があったが、今回は「シンプルさを残しながらもいろいろな機能が使えるようになった」。例えば、カメラモードのときにシャッターボタンを長押しすると、ビデオ撮影あるいはバーストモードになる(設定で選べる)。ズームのインジケーターも簡単に出せるようになった。
また、「プリセット」と呼ばれるカメラの設定がデフォルトで4種類(Soft Focus、B&W Film、Wide Angle、Lenticular)用意される。自分でよく使う設定を追加することも可能だ。
Nothing OS 3.0では独自のアルバム機能も追加された。今はシンプルな機能だが、今後はいろいろな連携が予定されているという。
●専用キーから呼び出せる「Essential Space」
Phone (3a)には、電源キーの下にもう1つ、「Essential Key」というキーがある。気になるコンテンツを見つけたときや、アイデアが浮かんだときにEssential Keyを押すと、端末内のEssential Spaceに情報が保存される。情報は自動的に整理され、提案、要約、アクションプランを生成するという。
●急成長を遂げるNothing イヤフォンはChatGPTとも連携
Nothingや日本ローンチ後の動きについても説明があった。
「Make Tech Fun Again(テックをもう一度楽しく)」をミッションとして掲げるNothingは、2020年10月にカール・ペイ氏が英国で設立したスタートアップNothing Technologyのブランドだ。日本では、2024年4月から本格的に展開されるようになり、スマホでは「Phone (2a)」と、レッド、イエロー、ブルーの三原色を配色した「Phone (2a) Special Edition」、ファンとともに作り上げた「Phone (2a) Community Edition」を販売。Community Editionは世界で1000台のみの販売で、日本でもごく限定で販売されたが「15分で売り切れた」という。
Phone (2a)はおサイフケータイに初めて対応。今も非常に好評で、黒住氏は「ユーザー層が広がった」と語っている。
Nothingはスマホだけでなく、ワイヤレスイヤフォンも開発している。「Ear」「Ear (a)」はPhone (2)と同時期に発売され、Ear (a)のイエローは価格が1万4800円と手頃なこともあって「一気に裾野を広げたプロダクト」になった。Amazonでは長く品切れ状態が続いたという。2024年10月には外音も聞こえるオープンイヤー型の「Ear (open)」を発売した。
これら、Nothingの製品は全て生成AI「ChatGPT」と連携する。OpenAIとは「仲良く、戦略的に」取り組んでおり、「ChatGPTをスマートフォン、イヤフォンに使いやすく統合したのは、われわれがこの業界で初めて。ユーザーが簡単に、ワンクリックでChatGPTにアクセスできるのはわれわれだけだと自負している」と胸を張った。
Nothingはサブブランドの「CMF」も持っており、ワイヤレスイヤフォンの「CMF Buds Pro 2」はノイキャン付きで高音質ながら1万1000円と低価格。また、スマートウォッチの「CMF Watch Pro 2」は、Ear (a)と同様に品切れが続く人気商品になっているという。
スマホの「CMF Phone 1」は2024年10月に発売。「Nothingらしいアイコニックなデザイン、カラフルな色、そして温かみのある素材感」で、Nothing Phoneとうまく差別化されている。最大のポイントはカスタマイズできることで、背面パネルを取り換えてカラーを変えたり、ストラップを取り付けられたりする。
CMF Phone 1はIIJmioで「CMF Buds」がセットになった発売記念BOXが出ている。IIJとは以前からコラボレーションしていたが、「このモデルで関係性を強化した」という。
Nothing Technologyは成長を継続しており、製品の販売台数は700万台、累計売上高は10億ドルを突破した。「1500億円ぐらいなので、まだまだ小さいが、駆け出しのスタートアップとしてはしっかりとしたステップを踏めている」と黒住氏は評価する。
日本でも成長している。具体的な数字は明らかにしなかったが、Nothing Japanの公式サイト「jp.nothing.tech」の2024年1年間のページビュー数が、2023年と比べて約3倍になったという。
黒住氏は「このペースを続けていきたい。まだ4年目、日本の本格ローンチから1年なので、この数字は当たり前。これから3倍を5倍、6倍にして成長を維持できるかどうかが、私たちが抱えているミッション」と語っていた。
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