「大食いへの憧れ」から生まれた飯漫画、『週末やらかし飯』小村あゆみインタビュー

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2025年04月08日 13:41  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
漫画アプリ『コミックDAYS』で現在連載中の『週末やらかし飯』(著・小村あゆみ、講談社)は、ストレス社会を生き抜くOL・空子さんが、週末の夜にいっぱい食べて、寝て、ストレス発散をする、SNSでも話題の飯漫画です。


とにかく大量のご飯が登場する漫画ですが、主人公の空子さんは決して大食いではありません。週末に”やらかす”というテーマを通じて、「やりたいことをやってみよう」と読者の背中を押してくれる、新生活にぴったりの作品です。今回は、作者の小村あゆみ先生に、作品に込めた想いや制作の裏側についてお話を伺いました。



⇒試し読み『週末やらかし飯』はこちら!


○プロフィール:小村あゆみ


1月15日生まれ。鹿児島県出身。2003年7月号『ザ マーガレット』(集英社)NEWまんがゼミナール入選作『アンテナ』で漫画家デビュー。代表作は『うそつきリリィ』『ミックスベジタブル』『神様のえこひいき』など。

現在、コミックDAYSで『週末やらかし飯』を連載中。



○「大食いへの憧れ」から生まれた飯漫画



――小村先生は、「うそつきリリィ」「神様のえこひいき」をはじめ、これまで恋愛モノを手がけられています。ご飯をテーマにした最新作「週末やらかし飯」はどのようなきっかけで生まれたのでしょうか。



前回の連載『勝ち目がないのは俺だけか!』が終了した後、次の連載に向けていろいろネームを作っていました。担当さんや友だちからは、「食べるのが好きだから、料理モノを描いてみたら?」と言われたりもしたんですが、これまで恋愛漫画ばかり描いてきたこともあって、どんな作品にすればいいのか分からなくて……。



ちょうどその頃、YouTubeでハメを外したご飯を食べる動画をよく見ていたんです。たくさんのご飯をおいしそうに食べる人を見るのが好きで。でも同時に「自分には真似できないな」ってずっと思っていました。



じゃあ、どうやったらできるんだろうと考えたときに、「一回で食べ切らなくてもいいなら、自分もできるんじゃないか」と思い立ったんです。それでパッと描いたネームが、『週末やらかし飯』の第1話でした。


――「大食いしたいけどできない」というご自身の体験が元になっているんですね。



そうですね。主人公に好きなだけ食べさせて「食べ切りました!」と描くこともできたんですけど、見ていて気持ちのいい大食い漫画は、もうすでにたくさんあるじゃないですか。だから、私が描く必要はないのかなって。



私が描きたかったのは、大食いに憧れているけど、「自分にはできない」って諦めている人たちに向けて……いや、そう思っていた自分に向けての漫画なんです。だから、ネームを見てもらったときに「こういう大食い系、いいですね!」と言われると、「大食いの話じゃないです」って説明したりして(笑)。私はこの作品で、目の前に食べきれないぐらいご飯があるって幸せだよね、ってことを伝えたかったんですよね。



だから空子さんは、「人よりはよく食べるけど、フードファイターみたいに食べられるわけではない」キャラクターなんです。


――目の前に食べきれないぐらいのご飯がある幸せ。なんだかすごく共感しました。



ただ、そういうのを描くからには、食べ物を残す罪悪感とかフードロスへの懸念は、しっかりと取っ払いたいと思いました。1話ごとにアレンジレシピを紹介したり、1週間かけて残ったご飯を楽しむ空子さんを描いたりしているのは、そういう理由からです。「自分で最後まで責任が取れるなら、たくさんの料理を用意してもいいんだ」って思ってもらいたいなと。


○自分の「やりたい」という願望を、漫画にギュッと詰め込んだ



――『週末やらかし飯』というタイトルが生まれたきっかけについて教えてください。



最初は、もう少し背徳感があるタイトルがついていたんですが、それがあまりしっくりこなくて。担当さんに相談して、締め切りギリギリに出てきたワードが「やらかし飯」でした。そこに担当さんが「週末」をつけてくれて、これだー!って。



――背徳感があるタイトルは、しっくりこなかったんですね。



この漫画に出てくるご飯は、「背徳的でハイカロリー」ではなく「やってみたいけど、ふだんはできない」を基準にしているんです。だから、空子さんは、でか盛りのチキンラーメンを食べる日もあれば、バーニャカウダを食べることもあるし、デパ地下で大人買いをするときもある。

「週末やらかし飯」というタイトルは、週末にやっているよと端的に伝えつつ、カロリー、手間、金銭面、いろんな“やらかし”を描けるので本当に気に入っています。


――作品の中で登場するご飯を選ぶときのこだわりはありますか?



やってみたいけど、ふだんはできないことをやるのがこの漫画のテーマなので、とにかく私の「やってみてぇ〜!」を大事にしています。チキンラーメン5玉とかは、まさにそうですね。



といいつつ、半分くらいはふだんから私がやっているものだったりします。デパ地下とかカルディでアホみたいに買っちゃうとか(笑)。


――家に帰ってきてラクな服に着替えるのもリアルな描写だと思ったのですが、あれも小村先生の日常ですか?



そうですね。といっても、私はずっと家で仕事をしているから、あまり着替えるみたいなことはないんですけど。やっぱり外の格好よりもラクな格好でいたいなという気持ちはあります。

――ご自身のやりたいこと、やっていることがギュッと詰まっているんですね。



自分が日常でやっていることを落とし込める漫画を作れたのは、本当によかったと思います。今まではそういうことができなかったので、とても新鮮です。

○主人公と一緒にやらかしながら、物語を描いていく



――「作者がマジで作中のヤベェー飯を作って動画にあげている」という声も寄せられているYouTube(コムラボ/小村あゆみの漫画研究所)の実食動画をアップされはじめたきっかけを教えてください。



作画のために試作するけど、それだけだともったいないから撮っとくかーっていう軽い理由です。今はなかなか編集する時間が取れないのですが……。


――ということは、作中のレシピはすべて試作しているということですか?



やったことのない料理とか、想像で考えた料理は、実際に作ってみないとどんな失敗をするか分からないので試作しています。ネームを描いて、試作をして、それを元にネームを調整するって感じで進めていますね。



――アレンジレシピが地味に一番大変だと思うのですが……。



はい。むしろアレンジの試作が、一番大事だと思っています。ただ私自身、ふだんから大量の食材を買い込んでは、「どうやって食べ切ろうかな」と考えることが多いので、苦労をしている感覚はあまりありませんね。



実際に作ってみたら、思いもよらなかったアレンジが生まれることもあって。たとえば、空子さんと兄がカップラーメン食べ比べを行った23話「カップラきょうだい」で、残った麺はアレンジが難しそうなので作中では兄妹で食べ切らせたけど、試作してみたら「こんな食べ方もありかも!」っていう発見があって急遽アレンジレシピを追加しました。


――試作をとても大切にしているんですね。



でも、もはや試作はこじつけで、本当は自分がやってみたいから作っている気もします。「あ、ネーム描くから作らなきゃ。やったー!」みたいな(笑)。



最近なんて、漫画の料理を再現するために、寸胴鍋を買っちゃいました。「空子さんが使うんだから、仕方ないよね〜」って言い訳しながら(笑)。いつかは、空子さんを理由に、パスタマシンなんかも買いたいなって思っているんです。


――もはや、一緒にやらかしているんですね(笑)。そんな小村先生が、これまでのお話の中で、「一番ストレス解消できる」と思うレシピは?



24話「クリスマスデミグラス」のデミグラスソースかな? 大変ではありますが、時間と手間をかけて自分のためだけに大作を完成させると自己肯定感が上がるんです。そういう意味では3話で紹介した「くそでか角煮」もいいですね! 単純に「でかい」って元気が出ます。


空子さんは、いっぱい作って食べることでストレスを解消していますが、私も漫画で行き詰まるとキッチンに行って何かを煮込みはじめたりします。自分が食べたいものがドンピシャでできたり、家族が喜んでくれたりするととても満たされます。



――「週末やらかし飯」は、ご飯がテーマでありながら、読者のやりたいことを応援してくれる作品でもあると思います。これから新生活を迎えるマイナビニュース読者の皆さんに向けて、小村先生からメッセージをお願いします。



ストレスで爆発しそうなときは、自分がどうしたいのかをじっくり自分に聞いて、しっかり叶えてあげてください。料理を作りたくないときは作る必要はないし、手間をかけたいときはガッツリ手間をかけて、たまには贅沢をしてみたりなんかもする。



そうやって、自分のためだけにバカになって、自分に優しくしてあげることが大切かなと。そういう意味では、ご飯である必要は無くて、自分の好きなことだったらなんでもいいんだと思います。


もし暇があれば『週末やらかし飯』を、ちょっと手に取ってみてほしいですね、「あ、これいつかやってみたいな」って思ってもらえる話がひとつでもあれば幸せです。


好きなものを好きなだけ食べて、お腹いっぱいになったら眠る。そうやって、自分の機嫌をとりながら、ストレス社会を生き抜く空子さん姿には、きっと元気づけられる人も多いはず。



『週末やらかし飯』は、「コミックDAYS」で大人気連載中。単行本は1巻と2巻が発売されています。ぜひチェックしてみてください。

○『週末やらかし飯』(小村あゆみ/講談社)


ストレス社会を生き抜くのに必死なOL・空子さんの唯一のストレス発散方法は、いっぱい作って食べて眠ること! 週末の夜は背徳的ハイカロリーごはんでストレスをぶっとばせ! 限界OLのストレス発散ハートフルnew飯漫画、開幕!

『週末やらかし飯』は、コミックDAYSで連載中、コミックス1〜2巻は書店・電子書店で好評発売中! 最新第3巻は4月9日発売です。



(c)小村あゆみ/講談社(しばた れいな)

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