バルサにとって伝説的シーズンに? 「相手をねじ伏せる攻撃」はCL8強でもさく裂するか

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2025年04月09日 07:10  webスポルティーバ

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 4月9日(現地時間)、バルセロナはチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝で、ドイツのドルトムントと、ベスト4進出を懸けてまずはホームでファーストレグを戦う。

「バルサ優位」の予想は動かない。

 バルサのハンジ・フリック監督は、バイエルンの監督時代にドルトムントと5戦して5勝。今シーズンのCLリーグフェーズでも敵地で対戦し、2−3と打ち勝っている。6勝無敗で「カモにしている」相性のよさだ。

 無論、勝負は時の運である。何が起きてもおかしくない。特にバルサはリスクを背負った戦いをしているだけに......。しかし、結果がどう転ぶにせよ、バルサは英雄の冒険譚のようなアグレッシブなサッカーを見せるだろう。

 今シーズン、フリック・バルサは欧州を席巻している。スペインスーパー杯優勝、CLベスト8進出、スペイン国王杯決勝進出、ラ・リーガでは首位。多くの試合で4点、5点とゴールに放り込み、相手をねじ伏せる攻撃力が代名詞だ。

 一時は極端なハイラインが狙われて失点を繰り返し、批判の的になったこともあった。バルサ系スポーツ紙『スポルト』も、「パーソナリティ? 不必要なリスク?」などと皮肉っていた。しかしドイツ人指揮官は一切耳を貸さず、"変人"のように扱われながらも変節しなかった。

 振り返ると今季の序盤、バルサはラ・リーガで開幕7連勝した後、CLでバイエルンを4−1と下し、レアル・マドリードを敵地サンティアゴ・ベルナベウで0−4と撃破。無敵を誇っていた。ところが11月、レアル・ソシエダに負けると、歯車が狂った。セルタに引き分け、ラス・パルマスに負け、レガネス、アトレティコ・マドリードに連敗を喫し、深刻な失速ぶりだった。

 しかし、年が明けて、スペインスーパー杯決勝でレアル・マドリードを5−2で下すと、勢いを取り戻した。2025年に入ってからは無敗で、ハイラインによる攻撃を確立。プレッシングのファーストディフェンスが整備され、トランジションも精度を高め、弱みをさらけ出さなくなった。フリックの揺るぎない信念が、バルサ伝統の「ボールを持っていれば失点はしない」という美学と結びつき、伝説的シーズンになりつつある。

【攻撃のための守備の構造を整備】

 ラミン・ヤマル、ペドリのプレーは確かに神がかっている。彼らを見るだけで、バルサの強さは語れるだろう。しかし、ふたりが際立っているのは、バルサというチームの仕組みのおかげでもある。

 それはどのような構造なのか?

 90分間、敵陣でプレーする構造を保つには、まず相手を恐れさせないといけない。単純に言えば、それは暴風のような攻撃力である。言わば「攻撃こそ防御なり」の猛々しさだ。

 ここまでラ・リーガでは最多83得点を記録し、相手は心をへし折っている。2位レアル・マドリードが63得点、3位アトレティコ・マドリードが49得点、最下位バジャドリードが19得点だから、並外れた数字である。

 レアル・マドリードのキリアン・エムバペを抑えて得点ランキングトップに立つロベルト・レバンドフスキは25得点。レアル・ソシエダの総得点が30だから、まさに怒り狂った神のような暴れ方と言える。第29節のジローナ戦で見せたアクロバティックなボレーでの得点は圧巻だった。

 そしてフリックは、レバンドフスキを中心にした得点力を最大化するため、ロジカルに守備を整備した。

 フリックは前線にハイプレスを求めるが、やみくもではない。36歳のレバンドフスキにセンターバックを追い回させても、足を使ってせっかくの得点力を失わせるだけ。そこで、敵センターバックには両サイドの足を使える選手が寄せ、レバンドフスキとトップ下は相手のボランチのラインを寸断。苦しい状況に追い込み、「蹴らせる」。簡単にはハイラインの裏を狙わせない形だ。

 ドイツ人指揮官は、「1点多く取れば勝つ」というバルサの精神を信奉し、"ストライカーを有効に活用するのが大事"という原則を心得ている。ストライカーが余力を残して得点を狙えるポジションを取るだけで、危険を感じた相手DFがつられるためにスペースが生まれる。そこに、ラフィーニャ、ダニ・オルモ、フェルミン・ロペス、ガビなどが突っ込む。

 守備のための守備ではなく、あくまで攻撃で相手をノックアウトするための守備の構造だ。

 また、フリックは下部組織「ラ・マシア」の若手を抜擢する手腕を発揮しており、マルク・カサドなどを用いたのは見事だった。ただし、固執はしていない。自分が敷いた仕組みのなかで個性を発揮できる選手を次々に登用。しかもそのタイミングが優れている。

 たとえば、一時は戦力外の報道があったフレンキー・デ・ヨング、エリック・ガルシアを、うまく生かしている。33歳のイニゴ・マルティネスはキャリアハイの安定感で、ジュール・クンデは「センターバックを希望する」と起用に不満げだったのが懐かしいほど、今や世界最高の右サイドバックの称号にふさわしい。懐疑的な声が大きいフェラン・トーレスも、今年に入ってカップ戦も含めて11得点で切り札的存在になっている。

 フリックが推し進めたサッカーを、選手たちが体現している。

 エキセントリックな戦いこそ、バルサがバルサである所以だろう。言い換えれば、ハイラインの危うさは、彼らの流儀を反映しているのかもしれない。

「私はちょっとした変人なんだよ。理想主義的なプロフェッショナル。だから、そういう風に見てもらえればいいよ」

 これはバルサの中興の祖と言えるヨハン・クライフの言葉である。偏屈さが魅力的に映るか。そのプロフェッショナリズムこそ、バルサの栄光そのものなのである。

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