『ぼざろ』『ガルクラ』ロック漫画がヒットの本命? 最注目『ロックは淑女の嗜みでして』が熱すぎる理由

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2025年04月09日 08:00  リアルサウンド

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福田宏『ロックは淑女の嗜みでして』(白泉社)

ここ数年、アニメ界隈ではロックバンドを主題とした作品が次々とヒットを記録している。4月3日から放送が始まった『ロックは淑女の嗜みでして』(TBS系)は、そんなムーブメントをさらに熱く燃え上がらせる起爆剤となるかもしれない。


 同アニメは、福田宏が2022年から『ヤングアニマル』(白泉社)で連載しているマンガが原作。公式が「お嬢様×ロック青春譚」と銘打っている通り、一見花のように可憐なお嬢様たちが情熱的なロック魂を見せ付けていくストーリーだ。



 物語の舞台となるのは、一流の淑女(レディ)しか在籍を許されないという超お嬢様学校「桜心女学園高等部」。主人公の鈴ノ宮りりさは“関東の不動産王”を父にもつ令嬢で、洗練された所作によってほかの生徒たちの憧れの的となっている。しかし実際には1年前まではただの庶民で、親の再婚をきっかけに上流階級の仲間入りを果たした“なんちゃってお嬢様”だった。


 窮屈な毎日にストレスを感じつつ、「学園一のお嬢様」(ノーブル・メイデン)の称号を得るため本性を隠すりりさだったが、ある日学園の有名人である黒鉄音羽がドラムを叩いている場面に遭遇する。さらに彼女からギターを弾けることを見抜かれ、タイマンでのセッションを持ち掛けられることに。そしてりりさの胸に、かつて捨てたはずのギターへの情熱が蘇ってくる……。


 魅力といえば、なんといっても登場人物たちのギャップの大きさだ。普段は砂糖菓子のように外面をコーティングしたお嬢様たちが、いざ演奏となるとスイッチオン。まるで獣のごとく闘争心剥き出しになり、汗まみれでパフォーマンスを行う。しかも人格まで一変し、“本音”で罵り合いながらお互いを高めていく。たとえば普段のほほんとしている音羽は、初めてのセッションで豹変するとりりさの演奏を「線香花火」「不燃ゴミ」と切り捨て、挙句の果てには中指を屹立させる。


 本作を手掛けた福田宏は、激しい戦闘描写で知られる『常住戦陣!!ムシブギョー』の作者でもあるため、バトルマンガのいろはを熟知していることは想像に難くない。その技術を注ぎ込んでいるためか、『ロックは淑女の嗜みでして』の演奏シーンは命がけの真剣勝負といった迫力が醸し出されている。


本格的なバンド描写で世界に羽ばたく?

 『ロックは淑女の嗜みでして』の肝とも言える演奏シーンだが、アニメ版ではその熱量の高さが見事に再現されていた。CGを活用しつつ、キャラクターのダイナミックな動きを描いているのが特徴的で、声優陣の演技もそこに独特の勢いを加えている。とくに第1話の時点では、『はねバド!』の荒垣なぎさ役などで知られる島袋美由利が音羽の“豹変”を絶大なインパクトと共に演じていた。


 しかも演奏シーンではモーションキャプチャーが導入されており、オープニング主題歌も担当するBAND-MAIDのメンバーたちがそれぞれのキャラクターのアクターを担当。その結果、身体の動きや腕の使い方などに至るまで、かぎりなくリアリティの高い演奏描写が実現されている。



 なお『ぼっち・ざ・ろっく!』や『ガールズバンドクライ』、『BanG Dream!』シリーズなど、近年のバンドアニメは当然のようにモーションキャプチャーを取り入れ、洗練された演奏シーンを実現している。そのなかで同作が特徴的なのは、さわやかさではなく激しさに振り切ったハードロック路線であることだろう。


 というのもBAND-MAIDといえば、メイド服姿でありながら聞く者を圧倒するようなハードロックを奏でる女性5人組バンド。そのコンセプトによって海外でも人気を博し、ワールドツアーも成功させているほか、YouTubeに投稿されている『Thrill』のMVは2,200万回近く再生されている。


 優雅な見た目とのギャップも、ゴリゴリのロックサウンドという音楽性も、『ロックは淑女の嗜みでして』のキャラクターたちと共通する点だ。そうした背景があってこそ、モーションキャプチャーによる高度なシンクロが実現しているのではないだろうか。



 近年ではBAND-MAIDだけでなく、BABYMETALやLOVEBITESといったハードロックあるいはメタル系のガールズバンドが海外進出し、人気を博している。そうした文脈の真っ只中で生まれた同作は、海外で大きな注目を集めることになるかもしれない。


 また映像表現としては、さながらデイミアン・チャゼル監督の映画『セッション』のような“スポ根”の演奏描写となっていることも同作の面白いポイント。オリジナリティあふれる青春バンドものの秘密兵器として、アニメシーンに新しい風を吹かせてくれることに期待するばかりだ。



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