「JR九州高速船」が浸水を隠して運航を継続した高速船「クイーンビートル」=4日、福岡市博多区 JR九州の子会社「JR九州高速船」(福岡市)が昨年、博多と韓国・釜山を結ぶ高速船「クイーンビートル」の浸水を隠したまま約3カ月半にわたり運航を続けていた問題で、福岡海上保安部は9日、船舶安全法と海上運送法違反などの容疑で同社の田中渉・前社長ら8人と法人としての同社を書類送検した。8人はいずれも容疑を認めているという。
海保は今回、北海道・知床半島沖の観光船沈没事故を受けて厳罰化された海上運送法の安全確保命令違反を初めて適用した。
ほかに書類送検されたのは当時の安全統括管理者だった小川仁・前企画部長、運航管理者だった柴田康祐・前運航部長ら。
送検容疑は、2024年2月13日〜5月30日、国土交通相に提出した「安全管理規程」に基づいて事業を行わなかったほか、安全な運航を確保するために必要な措置を命じる「安全確保命令」が出ていたにもかかわらず、船首部分の浸水を隠したまま運航を継続するなどした疑い。
23年6月に施行された改正海上運送法では、安全確保命令に違反した場合の罰則を強化。従来は個人、法人ともに100万円以下の罰金だったが、改正後は個人に懲役刑を導入、法人の罰金上限も引き上げた。法人は1億円以下の罰金、個人は1年以下の懲役もしくは150万円以下の罰金、または両方を科すとした。
JR九州高速船の書類送検は2度目で、23年にも船体のひびや浸水を確認したのに、必要な検査を受けずに運航を続けたとして、船舶安全法違反容疑で書類送検された。その後、国交相から安全確保命令も出されていた。