メレル「ベイパーグローブ6BOA」。1万7600円。写真は公式HPよりこんにちは、シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)です。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
ゴールデンウィークが近づいてきました。例年通りであれば、靴屋の本当の繁忙期がやってきます。靴が一番売れるのは3月です。この時期は在庫が入荷するので、まだマシなのですが、4月にもなるとゴールデンウィークの1〜2週間前には在庫がかなり減ってしまいます。
外国人観光客との争奪戦や、メーカーのラインナップの切り替わりなども重なり、特に昨年は、人気スニーカーが次々と店舗から消える事態に。ゴールデンウィークが終わると夏が直前に迫るため、靴メーカーもすぐに在庫を補充しないことが多いです。これには靴業界の事情があって、夏は靴が売れにくいのでメーカーは量販店に「買い切り」扱いをすることが多く、また直営店は、在庫をアウトレットやECに集約します。さらにいうと、アパレルの新作は春、秋のリリースが多く、これらの事情が複雑に絡み合って次回入荷は秋以降なんてこともよくあります。
よって気になるモデルがあれば、先に購入するかオンラインでも買えるように試着をしてサイズを把握しておくことをおすすめします。以下、ゴールデンウィークを過ぎると入手困難になりそうなモデルをご紹介します。
◆超人気モデルのアップデート版・オン「クラウド6」
2024年の4月後半には、スイスのオンの店舗在庫が旗艦店以外は東京中から消えるという事態になりました。2025年2月にド定番モデルの「クラウド5」が外見はほぼそのままで、大幅アップデートされて「クラウド6」としてリリース。大きく変わったのは2点です。一つは手を使わずにスムーズに脱ぎ履きができるハンズフリー仕様で、もう一つは、やや幅広になった木型です。
「家で靴を脱ぐ」という習慣が日本以外でもかなり浸透してきているようで、玄関でもたもたするのは一番のストレス。かといって、歩いたり走ったりしても脱げたら困ります。巷でもハンズフリーの靴が見られるようになりましたが、今回のクラウド6はその到達点とも言えます。
日常用ならゴム紐、本格的に走るのなら付属のノーマルの紐の二刀流です。前作の「クラウド5」でも爆発的に売れましたが、より指先の開放感を感じられるようになりました。チューブ状の靴底、片足260グラムの超軽量設計とミニマルなデザインはそのまま残したのがさすがオンですね。今の時期なら、たぶん店頭で各サイズをギリギリ試せるかもしれません。
◆日常でとにかく使える名作・HOKA「HOPARA」
すっかり日本に定着したHOKAの厚底シューズは、中毒者が続出しています。定番のランニングシューズはいつでも買えますが、サンダルは別です。サンダル兼アウトドアシューズのHOPARAは、サンダルとしては珍しくハーフサイズ刻みで、水陸両用、街でもアウトドアでも使い勝手が良いです。ゴールデンウィーク後に店舗に残っている可能性は低く、あっても1cm刻みの在庫というのが昨年の状況でした。
素足に合わせる方は特に注意してください。靴とサンダルではサイズ感がまったく異なるので、在庫があるうちに実際にサイズをチェックすることを強くおすすめします。類似品も目立つようになりましたが、類似されるほどの品質が証明されています。
ソールの厚みも魅力ですが、夏の都会ではつま先がガードされていることも必須です。満員電車でつま先を踏まれるのは恐怖ですが、HOPARAは鉄壁のトウガードで安心です。水に濡れたり、うっかりコーヒーをこぼしたりしても、まるごと水洗いが可能なので、衛生的です。丈夫なつくりなので、数年にわたり使用できます。
◆手出ししやすい防水靴ならコロンビア「ホーソンレイン ロー」
梅雨前だというのに、相変わらず防水靴は高いです。そこでお勧めなのが、日常から旅行まで対応できるコロンビアの名作「ホーソン」の防水版がちょうどいい。一見クラシックスニーカーに見えますが、アウトドアブランドならではの工夫が施されています。表面のキャンバスには防水加工が施され、本降りの雨でも問題ありません。高価なゴアテックスモデルのように完全防水ではありませんが、日常では何の支障もありません。
さらに、軽い。片足270グラムは競技用ランニングシューズと同等。底周りは重い合成ゴムではなく、ランニングシューズに使われる発泡スポンジを採用しており、雨を想定したアウトソールの排水、グリップも抜群です。ヒールが削れても町中の修理屋で3000円ほどでリペアも可能です。私も何度もリペアしましたが、3〜4年たっても目立った壊れ方をしていなかったことに感服しました。
アウトドアショップまで行かなくても、全国約900店舗の「靴のチヨダ」系列にレギュラーで置いてあるので、購入も簡単です。
◆履けばわかる中毒性・メレル「ベイパーグローブ6 BOA」
最後に紹介するのは、健康志向の方へおすすめの一足です。スパルタ式に姿勢や体幹、歩き方を改善できるベアフットシューズの人気が上がっています。人気の理由はシンプル、その効果があるためです。町履きでも本格トレーニングでもマルチに使え、良心的価格なのがメレル・ベイパーグローブ。
見た目はシンプルなスリッポンですが、足裏から体幹までをもれなく鍛える超薄底です。慣らし期間として2週間ほど見ておくのがいいでしょう。今年から発売されたモデルは米・BOA社のダイヤル式で、着脱と調整が一瞬で終わります。履いた感じは「靴下のまま歩いている」ようですが、靴底はビブラム社製で耐久性もお墨付き。ベアフットシューズの欠点である「薄底=短命」を見事にカバーしています。
私もベアフットシューズを愛用していますが、身体が慣れるにつれ厚底から薄底に移行する頻度が高まりました。踏ん張りが効く、指先がどこにも当たらない快感は、中毒性があります。
ゴールデンウィーク直前の週末は、私ですら靴屋にはあまり近づきません。店員さんがつかまらないほどの混雑で、店内は殺気立っています。セールでも期待以上に安くはならず、すべてにおいて客もスタッフもイライラするので、ミスやクレームが多発します。心地よくゆったり選べる今のうちに選んでおくのがコツです。
【シューフィッター佐藤靖青】
イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます『シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ』