【プレミアリーグ】佐野海舟の市場価値が右肩上がり 滅法強い1対1は「マンC新時代」の旗手になれる能力

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2025年04月10日 07:21  webスポルティーバ

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 佐野海舟(マインツ)の評判がすこぶるいい。

 遠藤航と守田英正の名コンビではなく、「海舟を使え」との指摘があちらこちらから聞こえてくる。「遠藤をセンターバックに、海舟を中盤に」というアイデアも目にした。いまやヨーロッパ屈指のハードワーカーとして人気・実力とも急上昇中の24歳ミッドフィールダーに対する期待は、日に日に高まっている。

 日本代表を率いる森保一監督は慎重居士だ。守田と遠藤のバランスを簡単に崩すとは思えない。とはいえ、今年2月の欧州視察中に佐野と面談した経緯からも、北中米ワールドカップの構想にこの男が含まれている公算は大きい。プライベートの問題が解決した今、佐野が再び日本代表のユニフォームを着る日は近い、と筆者は推測している。

 北中米ワールドカップを遠藤が33歳、守田が31歳で迎える事実を踏まえても、中盤センターの層は厚ければ厚いほど目標の優勝につながっていくはずだ。さらに田中碧、旗手玲央、鎌田大地などが佐野の活躍に刺激されれば、世界制覇も現実味を帯びてくる。ベスト8では小さい。目標はでかいほうがいい。

 今シーズン、鹿島アントラーズからブンデスリーガのマインツに移籍した佐野は、開幕節のウニオン・ベルリン戦は85分で、3節のブレーメン戦は79分でピッチをあとにしたものの、その他26試合はスタメンフル出場。無尽蔵のスタミナと計算されたポジショニングに基づくボール奪取で攻守をつないでいる。

 28節終了現在、2504分に達したプレータイムは、マインツのフィールドプレーヤーでは最長だ。56本を数えたシュートブロックはブンデスリーガ3位、45本のインターセプト数は5位。堂々たるデータを残している。

 佐野のようなタイプは、「3つの肺を持つ男」とか「地球上の3割をカバーする」と表現されてきた。その昔なら韓国代表の朴智星(パク・チソン)、近年ではフランス代表のエンゴロ・カンテ(現アル・イテハド)、ウルグアイ代表のフェデリコ・バルベルデ(現レアル・マドリード)だ。彼ら同様、佐野の貢献度も非常に高い。

【「カイシュウは大した男だよ」】

 また、佐野は1対1に滅法強い。14節のバイエルン戦でジャマル・ムシアラを、17節のレバークーゼン戦ではフロリアン・ヴィルツを完封した。ともにドイツ代表どころか、明日のサッカー界を担うといわれるスーパースター候補を無力化したのだ。

「ムシアラを自由にするなと指示されていたので、ある程度はできたかなと思います。でも、自分としては納得していません。突き詰めなければいけない部分がまだまだあります」

 ムシアラを封殺したにもかかわらず、さらに上を目指す佐野の心意気は頼もしい。当然、マインツのボー・ヘンリクセン監督も絶賛する。

「相手にパスが渡った瞬間は、あえて間合いを詰めず、まだ距離があるなと錯覚を招くようにフェイクを仕掛ける。相手の重心が自分のエリアに傾いた瞬間、ボールを奪う。カイシュウは大した男だよ」

 今シーズンの大ブレイクによって、佐野は移籍市場の「推奨銘柄」になりつつあるという。ただ、あくまでもマスコミ辞令。憶測の域を出ないどころか、どう考えてもフィクションだ。

「ムシアラを圧倒したバイエルンが佐野を高評価。今夏のターゲットに」

 こうした情報を見かけるようになっているが、このクラブの中盤センターはヨシュア・キミッヒ、アレクサンダル・パブロヴィッチ、コンラート・ライマー、ラファエル・ゲレイロなど多士済々だ。佐野を獲得する必要性はまったくない。バイエルンのトップターゲットはヴィルツ(前出)であり、ウリ・ヘーネス名誉会長も「是が非でもほしい」と公言してはばからないほどだ。

 マインツからバイエルンが大きなステップアップだとしても、現状では絵に描いた餅にも至っていない。従って、今シーズン終了後は残留が最善策と考えられる。

 2025-26シーズン終了後には、北中米ワールドカップが開催される。新天地で定位置獲得を目指す刺激的なチャレンジよりも、ある程度の出場機会が約束されているはずのマインツのほうが、日本代表にも選ばれやすい。クラブチームのレギュラーは、日本代表でも選考基準のひとつだ。

【佐野の個性が生きるクラブは?】

 もちろん、いつの日かステップアップの時はやってくる。ムシアラやヴィルツがブンデスリーガを飛び出し、ラ・リーガのメガクラブにチャレンジするかもしれない。トレント=アレクサンダー・アーノルドはリバプールで5年間プレーしたあと、レアル・マドリードに移籍する確率は99パーセントとも言われている。

 機が熟すまで待ったほうがいい、ということだ。少なくとも1年はマインツで攻守とも磨きをかけ、世界が放っておけないレベルに達してからの移籍でも遅くはない。佐野は24歳だ。焦る段階でもない。

 そして来シーズン以降のパフォーマンス次第では、プレミアリーグも佐野をレーダーに捉えるに違いない。1対1に滅法強く、運動量が豊富で、なおかつクレバーな中盤センターは希少だ。市場価値が現在の1900万ポンド(約35億円)から、2.5倍ほどの4700万ポンド(約88億円)前後に高騰していても、佐野にアプローチしてくるだろう。

 では、佐野の個性が生きそうなプレミアのクラブはどこか。たとえば、若返りを図るマンチェスター・シティは魅力的だ。

 成功のサイクルが終焉を迎え、10年間在籍したケヴィン・デ・ブライネが退団する。負傷が多く、回復まで時間を要するジョン・ストーンズは構想外。今冬にローンでACミランに去ったカイル・ウォーカーはキャリアの最後を飾るべく、古巣シェフィールド・ユナイテッドに向かう公算が大きい。イルカイ・ギュンドアンも明らかに衰えた。

 彼らに代わる新時代の旗手として、佐野が中盤センターに立つ。鳥肌もののシナリオ......いやいや、マンチェスター・Cはファイナンシャル・フェアプレー規則に抵触し、罰金ではなく大幅な勝ち点削減というペナルティを複数年、科されるリスクが高まってきているという。強化まで規制される、との見方も浮上してきた。

【未来は自力で動かせる】

 その一方で、2028年にクラブ創立150周年を迎えるマンチェスター・ユナイテッドが興味を示すかもしれない。リバプールが遠藤航に続くふたり目の日本人タリズマン(守り神)として迎えるのか、あるいはチェルシー、アーセナルといった強豪がリストアップするのか。
 
 今シーズンのパフォーマンスを来シーズンも維持できれば、佐野の存在価値は右肩上がりだ。プレミアリーグだけではなく、レアル・マドリードやバルセロナの獲得リストにまで上がる可能性もあり、『KAISHU SANO』の名前は世界中に知れ渡るだろう。

 過去は変えられないが、未来は自力で動かせる──。

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