大統領令にサインするトランプ米大統領(左)の後ろに控えるベセント財務長官(中央)とラトニック商務長官=9日、ワシントン(AFP時事) 【ワシントン時事】トランプ米政権は、中国からの輸入品に対する追加関税率を145%に引き上げた。それ以外の約60カ国・地域に対する相互関税の上乗せ部分の適用を90日間停止した。態度を一時的に軟化させて各国・地域と「ディール(取引)」を進める一方、中国には強硬姿勢を維持することで「中国を孤立させる」(米紙ニューヨーク・タイムズ)狙いだ。
「中国は自身が『悪者』であることを世界に示した」。相互関税の一部停止を決めた9日、ベセント米財務長官が発したのは中国への厳しい非難の言葉だった。報復しなかった国・地域には「協力したい」とする一方、中国には対抗姿勢をむき出しにした。
もともと相互関税は、対中国を想定した部分も大きい。ベトナムに46%、カンボジアには49%と高い税率を設定したのは「(両国は)中国が米国の関税を回避するための拠点」(米高官)とみなしているからだ。中国の迂回(うかい)輸出に協力しているとして、批判を強めていた。
ロイター通信によると、ベトナムは米国との協議で、自国を経由して輸出される中国産品の取り締まり徹底や、対中輸出の規制強化を提示。米国への協力を申し出ることで、相互関税の引き下げを求めるという。
米シンクタンク大西洋評議会のバーバラ・マシューズ氏は、米国との2国間交渉で「各国は米国と中国のどちらを選ぶのかという圧力を感じるだろう」と指摘。関税問題を軸とした対中関係が議題になり得るとの見方を示す。
米中は、トランプ第1次政権でも関税をかけ合う貿易戦争を演じた。今回も米国が中国への34%の相互関税を発表すると、中国は報復として米国からの輸入品に同率を課すと発表。米国が50%上乗せすると、中国も同様の措置を講じた。さらに11日には報復関税を125%に引き上げると表明し、対応をエスカレートさせた。米中対立激化に歯止めがかかる兆しは見えない。