『仮面ライダークウガ』25周年、小説版が描く13年後の後日談 一条薫が抱く五代雄介への想いとは

2

2025年04月12日 08:00  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

荒川稔久 (著)

  2025年は『仮面ライダークウガ』放送開始25周年のアニバーサリーイヤーである。同作は、「平成仮面ライダー」シリーズの記念すべき第1作として放送され、その衝撃的な内容は世間に大きな衝撃を与えた。今なお続く「仮面ライダー」シリーズの新たな礎を築いたと言っても過言ではない本作には続編が存在している。


  脚本を担当した荒川稔久による続編『小説 仮面ライダークウガ』(講談社)は、TV本編の13年後を舞台に物語が展開していく。小説版からは、TVシリーズ本編を補完できる点が多々見えてくる。



テレビ版『仮面ライダーアギト』とは異なる世界線

  五代雄介がクウガとなり未確認生命体を駆逐してから13年後。刑事の一条薫は、かつて共に戦った捜査本部の面々が新たな人生を歩み続けている中、いまだに第一線で仕事をこなす。ある日、再び未確認生命体(=グロンギ)のものと思われる事件が頻発。一条は、行方不明となっている五代の力に頼らずに、部下として配属された夏目実加らと共に事件解決へと挑む……というストーリーだ。


  そもそも『仮面ライダークウガ』の続編として位置づけられた作品と言えば、翌年に放映された『仮面ライダーアギト』があり、漫画版にはアギトが登場したりといった描写があるのだが、この小説版には一切「アギト」に対しての言及はされていない。なので、「クウガ」の世界線としての13年後の日本が描かれているといえるだろう。


  13年後の一条は相変わらずワーカホリック気味の生活を送っており、結婚をするわけでもなければ、恋人がいるような描写もない。ただ重要なのは、一条の心に、かつて共に戦った五代雄介=クウガのことが常にある、ということだ。詳細なネタバレは避けるが、本作で明かされる衝撃的なエピソードを、TV本編で脚本を務めた荒川稔久が丁寧な筆致で読者の心を揺さぶりながら焦燥感を煽る。


13年後の一条薫が抱く、五代への感情

  その焦燥感のもっとも顕著な人物は、一条薫だろう。携帯電話やリボルバーを片手に、未確認生命体との戦いを繰り広げたのはすでに過去。13年の時を経ると、スマホを使いこなし、SNS隆盛の情報社会にしっかりと対応している。それでもかつての戦いで五代を無理な戦いへ強いたことへの罪悪感を抱いており、他人と深い関係になり過ぎないよう努めているように見える。


  かつて九郎ヶ岳遺跡での第0号との戦闘後、雪が降りしきる中、クウガと0号の2人が倒れたのを目にした一条だが、結局のところ、五代の姿だけは発見できず、生死は不明のまま。五代は冒険の旅に出たと自分の中で折り合いをつけたのだという。


  一条は、自分と同じく無茶をする五代を制止しなければならない立場であったが、心のどこかで人々を守る使命よりも、五代と共に戦うことを楽しんでいたのではないだろうか。なぜなら白いクウガが再び目撃されるようになると、五代が生きていた、というよりも、もう一度一緒に戦えるのではないかという喜びの方が上回っているようにさえ読み取れるのだ。どこかやり場のないやるせなさや物足りなさを新たな未確認事件の捜査で発散したいという願望さえ垣間見られるのだ。


   小説には他にも注目すべき点は多々ある。TV本編で幾度となく一条に命を救われてきた中学生・夏目実加が、13年の時を経て、再び発生した未確認事件を捜査するために一条とチームを組むことになる。劇中では一条との関係性も描かれており、夏目は一条に対して「認知的不協和」がもたらす恋心を抱いてしまう。


  ファンからすると驚くような展開かもしれないが、ここで一度、TV本編における夏目実加のキャラクター像に立ち返ってみたい。もともと自らの信じた正義のためならば手段を厭わず突っ走る性分の夏目。そして、幼い頃に父親を失った夏目にとって父親代わりのような存在だったのが、一条薫である。つまり小説版の夏目が一条に対して好意を抱くのは、当たり前のことと言えるのかもしれない。


本作の舞台、日本の状況

  本作の舞台となっている日本は、2011年の東日本大震災や原発事故など、過去に起きたショッキングな出来事や社会現象を想起させる描写があり、リアリズムが通底しているのは、荒川稔久の真骨頂といえるのかもしれない。


  他にも男気溢れる刑事の杉田、「ポレポレ」の個性派マスター・おやっさん、五代の妹・みのり、関東医大病院に勤務する医師の椿秀一といった懐かしの面々が顔を揃えている点は大きな魅力で、彼らの声が活字を通してしっかりと伝わってくるようだ。放送開始25周年というタイミングに刊行された『小説 仮面ライダークウガ』。TV版とはまた異なるクウガの作品としての「強さ」を知ることができるはずだ。



このニュースに関するつぶやき

  • オダギリ・ジョーさんがクウガを再演しない副産物として、クウガの世界は良くも悪くも、最終回から25年間止まったままになってるんだよね���饯��
    • イイネ!7
    • コメント 2件

つぶやき一覧へ(1件)

ランキングゲーム・アニメ

前日のランキングへ

ニュース設定