
65歳以上の高齢者の5人に1人がなるともいわれている「認知症」。日常生活や社会生活に支障をきたしてしまうことにもなりかねないので、できる限り予防はしておきたいもの。そこで、認知症を予防をする上で大切な要素について、YouTubeチャンネルの登録者数が48万人を誇る、医師でヘルスコーチの石黒成治先生に教えてもらいました。
脳に“知的刺激”を与えることの大切さ
修道女678人を対象にした、30年以上にわたる認知症リスクやアルツハイマー病の進行、認知機能の変化を調べた研究があります。
その結果を見ると、脳にアルツハイマー病の病理が認められても、実際には認知機能が保たれている修道女さんが存在していました。
実は、若い頃の言語能力、複雑な文法を理解する能力などがあった人は、晩年、認知症のリスクが非常に低くなるということがわかりました。 幼少期から知的刺激や学習をしていることが、のちの認知機能の保全に影響を与えているのです。
脳を使っていると脳の予備力が高まるので、晩年になってその予備力が使われることで、一定のラインを超えないという状態を作れる。予備力がたくさんある人は認知症にならずに済むと考えられています。
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脳が認知症用の変化をしていたとしても、認知機能が生涯健全な状態を保つことができるという研究結果でした。
つまり、読書や新しいスキルを身につけるなどの活動、言語能力を高めるような脳に大きな刺激を与える状況になると、将来の認知症を予防することができると示されました。
“極端な暑さ”は老化を加速させる
もう一つの研究は、極端な暑さと生物学的な老化というものです。
極端な暑さに長期間さらされると、体の生物学的な老化が加速してしまうことが明らかになりました。
年間の高温日数が長い地域に住んでいる高齢者は、実際の年齢よりも生物学的年齢が最大で14ヶ月も進んでいることがわかったのです。
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気候変動により、熱波や高温の日数が増えると、私たちの健康に影響を与える可能性があるということになります。
特に、高齢者は体温機能調整が難しく、暑さに対しても脆弱なので、環境要因は年齢を重ねると考えなくてはいけない大事なポイントになるでしょう。
“認知症対策”は内側からも外側からも立てていく
知的活動と環境の要因の両方が老化に影響を与えます。
脳の健康を維持するためには、若い頃から知的刺激や言語活動が重要になりますし、環境要因としてはあまり高温になりすぎない、さらに湿度も関係します。
老化を加速させる上では、生活している環境自体の快適さも重要になるので、内側からも外側からも、認知症に対して対策を立てていく必要があります。
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夏場は必ずエアコンを適切に使用する、地域のコミュニティで交流やディスカッションをする、読書やクロスワードパズル、外国語の取得、楽器の演奏、音楽の練習などを高齢になってから行うといったことが、脳の機能にとってはいい方向に働きます。
認知症予防には、脳の健康を保つための知的活動、そして環境リスクの管理が重要になるので、そういったことを意識して生活を組み直していくことも大切でしょう。
(TEXT:山田周平)
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画像提供:Adobe Stock
石黒成治先生
消化器外科医、ヘルスコーチ。
1973年、名古屋市生まれ。1997年、名古屋大学医学部卒。国立がん研究センター中央病院で大腸癌外科治療のトレーニングを受ける。その後、名古屋大学医学部附属病院、愛知県がんセンター中央病院、愛知医科大学病院に勤務する。2018年から予防医療を行うヘルスコーチとしての活動を開始。腸内環境の改善法、薬に頼らない健康法の普及を目的に、メールマガジン、YouTube、Instagram、Facebookなどで知識、情報を分かりやすく発信している。Dr Ishiguro YouTubeチャンネル登録者数は48万人超(2025年1月時点)。