万博史上最多となる160以上の国・地域、国際機関が参加する大阪・関西万博。4月13日に開幕し、早くも盛り上がりを見せていますが、会場のシンボルともいえる「大屋根リング」(以下、リング)の大きさにびっくりする人も多いようです。
世界最大級の木造建築物であるリングの高さは12メートル(外側は20メートル)、幅30メートル、全周は約2キロに及びます。各パビリオンを楽しむには、このリングをくぐる必要があるため、いわばメインストリートといえます。また、リングの上を歩くだけでなく、下には雨風や日差しを遮る機能も備わっています。それにしても、なぜ「木造」なのでしょうか。
会場デザインプロデューサーの建築家・藤本壮介さんによると、世界的に今、大きなオフィスや集合住宅などを木造でつくる動きがあるそうです。理由は、持続可能な社会を目指しているから。ご存じのとおり、木は二酸化炭素を吸収するので、環境に優しい素材とされています。建築材料として木を切ったあとは、植林して森を再生する。こうした取り組みが行われていますが、日本は少し遅れているそうです。
ただ、日本には1000年以上も木造建築の伝統があって、森林も豊か。そんな日本の環境を生かすために、リングの開発にあたって「伝統と最新のテクノロジーを組み合わせました」と藤本さんは話します。
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例えば、柱と梁(はり)の組み合わせについて。柱に穴が開けられて、梁がそこに通されてくさびで止める――。京都・清水寺の舞台などで使われている「貫(ぬき)」と呼ばれる工法ですが、そのまま使っても現代の建築基準法をクリアできません。というわけで、くさびの部分に金属を使っています。こうした技術はこれまでになかったので、「何度も試験してデータを取ってようやく完成しました」(藤本さん)
●リングの東側に芝生を設けた
リングの上の斜面はかなり急で、ところどころ植栽の部分がありますが、人が立ち入れないようになっています。しかし、芝生の部分だけは少し傾斜が緩やかに。ここだけは入ることができて、来場者がゴロゴロしてもよい場所になっています。
芝生は東側の一部に設けられていますが、全周2キロの中で、なぜここだけなのでしょうか。東側にあるということは、正面が西側になるので、反対側のリングに向かって夕日が落ちていく。また、天気がよければ、瀬戸内海の海水面が見える。そうした光景を転がりながら楽しんでもらうために、この部分だけ芝生を設けたそうです。
ちなみに、記者もリングを1周しました。ゆっくり歩いて30分ほどかかりましたが、疲れたときにはどうすればいいのか。たまたま芝生のスペースがあればそこでゴロンとできますが、椅子などは見当たりません。
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芝生のスペースを増やすか、椅子を設けるか。今後の取り組みによって、回遊性の向上だけでなく、来場者の滞在時間や満足度の向上につながるかもしれません。
(土肥義則)
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