ITエンジニアなどデスクワークが多い人たちは、長時間椅子に座りっぱなしになることが多い。しかし長時間の座りっぱなしでいると、下半身の血行などが悪くなり、健康に害をなす恐れがある。立って仕事ができるようにスタンディングデスクなども流行ったが、技術でこれを解決しようと「座りすぎ検知システム」を開発したITエンジニアがいる。
AIベンチャー・PKSHA Technology(東京都文京区)に所属するソフトウェアエンジニアの中村光伴さんは、イスに着席していた時間を検知するシステム「座りすぎ検知システム」を開発。またの名を英訳の「CHair ResidesNce Observing System」から取って「クロノス」とも呼ぶ。
中村さんは2024年にPKSHAに入社した新卒エンジニア。学生時代から競技プログラミングに取り組んでいたが社会人になった後は、デスクの前で座っている時間がより長くなった。「座りすぎは健康に良くない!」──そう考えた中村さんは、椅子に座りすぎを予防するシステムの開発を自らの手で手掛けるに至った。
クロノスでは、椅子に仕込んだ感圧センサーで座面にかかる圧力を2秒おきにセンシングする。直近30分間で25分以上の座り状態が続くと、一緒に取り付けた電子ブザーが「ピーピー」と鳴り、利用者に「座りすぎ」を知らせる仕組み。在宅勤務をしている中村さんは、クロノスを自宅の椅子に実装した。
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「椅子の裏に、Arduinoのボードや充電池を付けたが、取り外しがしやすいようマジックテープを使った。また、2秒おきにセンシングしデータを集めているため、使い続けるとArduinoがメモリ不足になってしまう。そのためデータ構造には『queue』を採用し、処理を最適化。また集めたデータを可視化するため、Wi-Fi経由でセンシングデータを送信する仕組みも構築した」(中村さん)
中村さんがクロノスを開発したのは、24年夏ごろ。使ってみた感想を聞くと、実際に座り続ける時間を減らすことに成功したという。
中村さんは「ブザーが鳴った後に起立すると音は消えるが、5分以内に座り直してしまうと再度『ピーピー』と鳴るようにした」と説明。スマートフォンにプッシュ通知を仕組みも検討したが、ブザー音のほうが強制力があると続ける。
また、25分+5分の周期を計測していることから、集中する時間と休憩時間を繰り返すことで、仕事のペースを生み出す時間管理術「ポモドーロテクニック」用のタイマー(ポモドーロタイマー)としても使えるとも話す。「作業効率化が上がったかと聞かれると分からない部分もあるが、足がスッキリした実感はある」
●クロノスに存在したリスク そして現在は……
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そこからさらに時間がたった現在、中村さんの今のデスク環境はどのように進化したのか。
「クロノスには、オンライン会議中にブザーが鳴るリスクがあるなどの問題点も存在した。これを見越して、取り外し可能な形態にはしていたが、11月にはウオーキングマシンも購入してしまった。現在はこれを使いながら仕事をする機会が増え、クロノスはあまり使わなくなってしまった」
(関連記事:現在の中村さんのデスクはこちらでチェック)
とはいえ、クロノスの開発を通して電子工作など経験を積めたのは大きかったとも続ける。今後もクロノスは改善する予定で、定点カメラを使った猫背を判定するシステムなども作ってみたいなど、今後の展望を語った。
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