中日ドラゴンズ 公式Xアカウントより引用 ロスジェネ世代の野球ライター2人が、野球界の話題を取り上げる新企画がスタート。アメリカでの生活経験を活かし、日刊SPA!などでMLBを中心とした記事執筆などを手掛ける八木遊と、野球専門誌の編集畑出身で現在はフリーライターとして活動する上村祐作がお届けする。
第1弾は、「セ・リーグ新監督2人の手腕」と「セ・リーグDH制導入の是非」について、ざっくばらんに語り合った。
◆台風の目「中日」をどう見る?
八木遊(以下、八木):早速だけど今年の春もキャンプに行ったんだっけ?
上村祐作(以下、上村):春季キャンプの取材で4チームくらい回りました。10年以上前から2月はほぼ毎年、沖縄ですね。
八木:個人的に、今年はセ・リーグの台風の目として中日を推しているんだけど、キャンプの雰囲気はどうだった?
上村:井上(一樹)監督はとにかく明るい方で、チームの雰囲気はすごく良かったですよ。選手とも積極的にコミュニケーションを取っていたのが印象的ですね。休みの日も二軍の練習に足を運んでいました。
八木:去年は二軍監督だったからいろいろ気になるのかな。
上村:二軍の練習を見に行くために、あえて一軍と二軍の休みをずらしたと言ってましたよ。
◆中日・井上監督の采配は?
八木:やる気に満ち溢れているね。でも開幕から采配が批判されることも少なくない。
上村:阪神ほどではないにしても、球団柄、あれこれ言われるのは仕方ないかなと。石川の4番起用に関しては、「チームの柱を育てないといけない」と常々言っていたので、ある程度腹をくくっていたのだと思います。
八木:地元出身の石川に託したんだと思うけどちょっと空回りしちゃったかな。
上村:石川は日本ハムの野村(佑希)とよく比較されますが、野村も4番で失敗を経験して今があるんですよね。チームの柱を育てたいという考えは理解できますし、石川には奮起してもらいたいです。
八木:あとは結果を残しているブライト(健太)をなかなかスタメンで起用しないことも批判されていた。でも打線がこれだけ点を取れないと、終盤までいい打者を温存しておくっていうのは理にかなっているのかも。
上村:中日は「3点取れば勝てる」野球ですからね。その投手力ですが、今年はチーム防御率が両リーグトップの2.28。去年がセ・リーグ4位の2.99だったので、大幅に改善しています。
◆井上監督の「隠れたファインプレー」とは
八木:エースの高橋(宏斗)が本調子に程遠い中で、2.28というのはすごい。
上村:ライデル(・マルティネス)と小笠原(慎之介)が抜けたにもかかわらず……ですからね。新外国人は打者がボスラーだけだったのに対して、投手はマラー、マルテ、ウォルターズなどを獲得しています。打てないのはある程度仕方がないので、現実を見て投手整備から着手したのは、井上監督の隠れたファインプレーだと思っています。監督も「ピッチャーに重きを置いたのは僕の希望」と話していました。
八木:打線は水物っていうし、強みをより強固なものにしようと。そういう考えのチームがあってもいいかも。そういえば井上監督ってプロ入りしたときは投手だった。
上村:キャンプでもよくブルペンに入って、投手ともコミュニケーションを取っていました。何年か前のキャンプ地で僕が仕事の電話で話していたら、「君、鹿児島出身なの?」って声を掛けられたことがあって。ちょっとした訛りも見抜いちゃうんだって驚いた記憶があります。
八木:そうか、井上監督も鹿児島出身だ。話がそれたけど、ここまで1試合平均得点が2点未満(14試合26得点)、エースの防御率が5点台か……。
上村:そんな中でも借金は2つだけ(5勝7敗2分)ですから。打線がこれ以上悪くなることはないと思うので、最下位脱出はもちろん、勝率5割も狙えるんじゃないかと思っています。
◆苦戦する藤川監督の継投策
八木:ところで同じ1年目の藤川球児監督はどう?継投で苦戦しているイメージだけど。
上村:苦労というか……ゲラの乱調は痛いですよね。去年の防御率が1.55なのでちょっと信頼しすぎたのかなと。逆に登板過多を心配してか、桐敷(拓馬)をあまり使っていないんですよね。
八木:去年は70試合に投げているからね。それにしても「魔の6回」と言われるほど6回の失点が多い。監督の心理として、先発投手には6回まで頑張ってもらって、残り3イニングをリリーフでという気持ちがあるはず。そこで交代のタイミングがワンテンポ遅れているのかな。
上村:今季も「投高打低」。1点の重みが違いますから、一つの継投ミスが勝敗を大きく左右します。
◆セ・リーグにDHは必要か?
八木:「投高打低」といえば、来春から東京六大学野球もついにDH制を導入するとか。もうセ・リーグもDH制にすべきじゃない?
上村:完全に同意します。交流戦が始まってパ・リーグが圧倒していた頃から言われていますが、ずっとDH制導入には賛成派です。
八木:投手は打席や塁上でケガのリスクもあるし、打席の隅っこに立って三球三振は見たくないよ。セ・リーグの心理戦というか、監督同士の駆け引きが昔から好きで反対派だったけど、そろそろ導入してもいいと思う。
上村:打てる投手がいるなら、日本ハムみたいにどんどん二刀流にチャレンジさせればいいんですよ。むしろDHは2つくらい枠があってもいいんじゃないかと。
八木:DHが2人!?
上村:たとえば守備だけは自信がある選手のところに2つ目のDHを置くとかですね。さすがにプロ野球では無理でしょうけど、少年野球とかならあってもいいかなと。
八木:なるほど、斬新なアイデアだね。確かに打撃専念のDHがあるなら、守備専念の選手がいてもいいかも。
文/八木遊
【上村祐作】
1980年生まれ。鹿児島出身。上京後、複数のスポーツ系アルバイトを経験したのち、野球専門誌で編集者兼アナリストとして従事。2013年から独立し、選手の技術本制作やウェブ媒体の執筆に携わる。可能な範囲で現場取材も行い、春季キャンプ期間の2月はほぼ沖縄にいる。
―[八木遊×村上祐介の野球雑談会]―
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。