アンカツの目に適った「3歳牡馬番付」 皐月賞とダービーで頂点に立つ馬とは

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2025年04月17日 07:30  webスポルティーバ

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安藤勝己選定「3歳牡馬番付」(後編)

前編◆アンカツ厳選の「3歳牡馬番付」 打倒クロワデュノールを果たせる馬は?>>

 安藤勝己氏がクラシックに挑む精鋭たちの実力を分析し、独自の視点によって選定した「3歳牡馬番付」。GI皐月賞(4月20日/中山・芝2000m)、GI日本ダービー(6月1日/東京・芝2400m)において、最も戴冠の可能性がある横綱、大関に指名したのはどの馬か――。

大関:ジョバンニ(牡3歳)
(父エピファネイア/戦績:5戦2勝、2着3回)

 今年はこの大関の選定に、ことのほか頭を悩ませた。クラシックに向かう路線が多様になって、各馬の能力比較が難しくなったこともあるが、現状の力と将来性、どちらを上に取るかという点においても逡巡したからだ。

 結局、いろんなことに考えを巡らせて、実績重視と決断。ここまでのレースで常に上位争いを演じ、安定した走りを見せ続けていることを評価して、ジョバンニとした。デビューからの戦績は、5戦2勝、2着3回。一度も連対を外したことがなく、その堅実なレースぶりには目を見張るものがある。

 とりわけ、クロワデュノール(牡3歳)の2着に食い込んだGIホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)のレース内容はよかった。道中は中団の内を追走。直線半ばで最内からやや外目に出して、鮮やかな追い込みを見せた。

 勝ったクロワデュノールには2馬身の差をつけられたが、のちにGIII共同通信杯(2月16日/東京・芝1800m)を快勝したマスカレードボール(牡3歳)、GII弥生賞(3月9日/中山・芝2000m)を勝ちきったファウストラーゼン(牡3歳)、GIIスプリングS(3月16日/中山・芝1800m)を制したピコチャンブラック(牡3歳)らを一蹴。有力馬がひしめくハイレベルな一戦において、クロワデュノール以外には先着を許さなかったことは価値がある。

 高いポテンシャルを秘め、最後は必ず伸びてくる。精神面もしっかりしていそうなのも強み。ただ、クロワデュノールと比べると、破壊力に欠ける。皐月賞、ダービーともに上位には入ってくると思うが、勝つまではどうだろうか。

横綱:クロワデュノール(牡3歳)
(父キタサンブラック/戦績:3戦3勝)

 クロワデュノールをこの世代ナンバー1、つまり「横綱」と認定するのは、誰も異論はないだろう。デビューから無傷の3連勝。しかも、GII東京スポーツ杯2歳S(11月16日/東京・芝1800m)、ホープフルSと、クラシックに直結する主要レースで見事な勝利を飾ってきた。

 東スポ杯2歳Sでは、馬体重がプラス24kg。明らかに太め残りだったが、それでも最後はきっちり差しきった。ホープフルSでは、その強さが際立っていた。3コーナーすぎから徐々に進出すると、直線半ばで先頭に立って、そのまま突き抜けた。

 この馬のいいところは、とにかくレースがうまいこと。騎手の指示どおり、どんな競馬でもできるところがすばらしい。馬体も500kg前後と雄大。それでいて、柔らかさがあるのがいい。

 また、クラシックへ向かうローテーションに余裕があるのも好感が持てる。最近の2歳戦、3歳戦はレースレベルが高くなっている分、一戦ごとの消耗が激しくなっている。それが、トライアルをスキップして、年末年始あたりのレースからクラシック本番へ直行で挑んでくる馬が増えている要因でもあると思う。その点、この馬は十分な間隔をあけて本番に臨むことができ、勝つための条件は整っている、と言えそうだ。

 しかしながら、「二冠濃厚」と巷で言われているほどの評価を、自分はしていない。本当に強い馬というのは、どんなにヘタなレースをしても勝つことができるが、この馬にはそこまでの強さを感じない。もちろん、皐月賞も、ダービーも、中心的な存在であることは間違いない。ただ一方で、同馬を負かす馬が出てきても不思議だとは思わない。

         ◆         ◆         ◆

 今年の牡馬戦線の特徴は、トライアル戦が有力馬の"試走"というより、例年以上に"権利獲り"優先のレースになったこと。おかげで、いずれのレースもやや低調だった。

 そうした状況にあって、皐月賞はともかく、ダービーに向けて注目したいのは、既成勢力よりも、現状では無名に近い新興勢力、いわゆる力を秘めた1勝馬や2勝馬だ。そのうえで、トライアルと本番までの間隔が延びたことを考えると、GII青葉賞(4月26日/東京・芝2400m)からの出走馬が、史上初めてダービー制覇を果たす可能性もあるのではないだろうか。

安藤勝己(あんどう・かつみ)
1960年3月28日生まれ。愛知県出身。2003年、地方競馬・笠松競馬場から中央競馬(JRA)に移籍。鮮やかな手綱さばきでファンを魅了し、「アンカツ」の愛称で親しまれた。キングカメハメハをはじめ、ダイワメジャー、ダイワスカーレット、ブエナビスタなど、多くの名馬にも騎乗。数々のビッグタイトルを手にした。2013年1月31日、現役を引退。騎手生活通算4464勝、うちJRA通算1111勝(GI=22勝)。現在は競馬評論家として精力的に活動している。

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