「万博ガンダム」の勇姿、夢物語ではない? 最新技術が見せる説得力

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2025年04月17日 08:11  ITmedia ビジネスオンライン

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「ガンダムパビリオン」がスゴすぎる

 大阪・関西万博が4月13日に夢洲(ゆめしま)で開幕した。158の国と地域が参加する中、バンダイナムコホールディングス(HD)が手掛ける「GUNDAM FUTURE PAVILION」(以下、ガンダムパビリオン)は、「ガンダム」の世界観を現実の産業技術に結びつけた体験型展示として注目を集めている。その内容とは、どのようなものなのか。


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 ガンダムパビリオンは、5つのフロアを移動するウォークスルー型の施設だ。ガンダムシリーズが描いてきた「宇宙での暮らし」や「まだ実現していない科学技術」を、新作映像とパビリオン空間による没入体験で提供する。


 屋外に設置した高さ約17メートルの「実物大ガンダム像」は、そんな宇宙や未来に向けて手を差し伸べる姿を表現しているという。


 体験は予約制で、所要時間は約40分。来場者は、西暦2150年の夢洲を舞台に架空企業の「GOIC」(GUNDAM OPEN INNOVATION CONSORTIUM)のツアーに参加するという設定だ。ツアーでは、上空3万6000キロの静止軌道を周回する巨大宇宙ステーション「スタージャブロー」から、モビルスーツ(架空の人型兵器の総称)が活躍する様子を見学できるようになっている。


 パビリオンで体験する未来では、宇宙空間に人類が生活できる環境が整備されており、戦争のために生み出されたモビルスーツも、宇宙活動に適したスーツとして平和利用が進められている。


●最新技術で実現するバーチャル宇宙旅行


 エントランスでは、GOICの活動を紹介するほか、プラズマ技術で窒素肥料をつくるという設定のもと、「ビームサーベル」(モビルスーツ用の近接戦闘武器)が農業に使われていることも紹介されている。こうした展示を通じて、テーマのひとつである「まだ実現していない科学技術」による未来の姿を来場者に印象付けている。


 スタージャブローへ高速移動する軌道エレベーターの床面には、ソニーの触覚提示技術であるハプティクスにより全身に感触を届ける「Haptic Floor」を設置し、移動中の振動を再現。窓に映る映像は、大阪から宇宙へ移行していく様子を表現した。


 スタージャブロー内へ移動すると、モビルスーツがスペースデブリ(人工物や残骸などの宇宙ゴミ)を処理する様子を観察できるようになっている。


 体験のハイライトは、暴走デブリから現れたガンダムシリーズに登場する兵器「ジオング」(MSN-X17 ジオング タイプMA)との戦闘だ。


 ジオングがジャブロー周辺で作業する「ザク」(モビルスーツの一種で、量産型の主力機体)を破壊し始め、ツアー参加者は緊急退避ポッドへの移動を促される。ピンチを迎える中、グラスフェザーという装備を付けた「ガンダム」が現れ、来場者を守ろうと奮闘する──というのが今回のストーリーだ。


●映像と振動で臨場感が高まり、没入体験も向上


 パビリオン内には最大18×8メートルを超える大型映像のほか、フロアに宇宙をのぞく窓として、複数の画面が用意されている。登場するキャラクターたちは画面を行き来して動くため、参加者はその動きを目で追うことになる。


 退避先のポッドでは、窓に見立てた画面からジオングとガンダムの戦いを見ることができ、ハプティクスによる振動が爆発音と同期して、「宇宙にいる」という臨場感を提供する。バンダイナムコHDによると、場所によって振動の強弱に差があるため、立ち位置によって体験の質が変わる可能性もあるという。


 特に戦闘シーンはスピード感があり、床面の「Haptic Floor」による振動が臨場感を生む。新作アニメーションの映像には「Unreal Engine 5」(ゲームを作るための開発ツール)を使用。音と振動も相まって、ガンダムの世界観への没入体験を味わえるアトラクションに仕上がっている。


 参加した来場者の様子を見ると、振動を全身で感じ、高い臨場感を得ていたようだ。複数の技術を組み合わせることで、ガンダムの世界に入り込んだかのような体験を実現している点が、本パビリオンの大きな特徴といえる。


●三菱重工業など異業種と連携する「ガンダムオープンイノベーション」


 今回のパビリオンで体験できるストーリーはフィクションだが、設定には2021年にバンダイナムコグループが開始した「ガンダムオープンイノベーション」(GOI)の考えを取り入れている。


 GOIは、三菱重工業や東京理科大学などのパートナーとともに、ガンダムの世界観を現実の技術で再現し、社会課題を解決することを目指す産学連携プロジェクトだ。


 現在、GOIでは4つの公認プロジェクトが進行している。人類の宇宙活動と地球が調和した循環型の「宇宙世紀」を実現させる「TEAM SPACE LIFEプロジェクト」、モビルスーツの社会実装に向けた新しい操縦ロボットの「プロトタイピングプロジェクト」、人類の宇宙での暮らしを目指す「グリーンコロニー・プロジェクト」、ガンダムの「ビーム・サーベル」の発想を応用した「プラズマ農業プロジェクト」だ。


 異業種連携の取り組みは、アニメの世界観をもとにビジネスを創出する新たなイノベーションモデルとして注目されている。今回のパビリオンでは「ビームサーベルを使った農業」「モビルスーツの社会実装」といったビジョンが特に強調されている。


 テレビアニメ『機動戦士ガンダム』の総監督である富野由悠季氏は、「ガンダムパビリオンで展示した内容は夢物語だが、実現の可能性もある」と語る。これは、まさにGOIが目指す方向性であり、エンターテインメントが描く世界観と先端技術の融合は、新たな産業を創出する可能性を示す。


 ガンダムシリーズが描く世界観には、まだ実現できていない新しい技術や可能性が詰まっており、今回のパビリオンでは、それらを未来の可能性として提示している。


(カワブチカズキ)



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  • 「GOIでは4つの公認プロジェクトが進行」→個人的には、第一に「プロトタイピングプロジェクト」を、第二に「グリーンコロニー・プロジェクト」を、期待している。
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