リゲッタ「ルーペインソール」。1650円。写真は公式HPよりこんにちは、シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)です。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
気に入った靴がいまいち合わない、疲れると思ったら、インソールを替えると高確率で解決します。靴というものは革靴でもスニーカーでも安全靴でも、「縦のサイズと幅」しか選べません。一番足に触れる部分は人それぞれなので、ここをカスタムしないのは本当にもったいない。うれしいことに今の靴は安いものでもインソールが差し替えられる仕組みになっているので、靴探しで延々と苦労するよりインソールを替えてみましょう。
とはいえ、インソールは100均にもあれば本格スポーツ店で一万円以上のものもあり、どれを選んでいいかわからない方が多いはず。不景気な世の中、ショップは大きな声で「高価な製品でなくても高機能なものはあります」と発信できないこともあり、今回はインソール初心者でも手出しがしやすい、リーズナブルだけれどしっかり効果を感じられるインソールを厳選して紹介します。
◆革靴もコンバースも快適に。リゲッタの薄型インソールが激推し
超実力派・低価格ならまずリゲッタ「ルーペインソール」(1650円)。リゲッタは、もともとコンフォートシューズを製作している日本の靴メーカーですが、インソールでも隠れた名品として有名です。代表作が「ルーペインソール」です。世間一般のイメージとは違い、かかと〜ふまずまでの半分しかありません。半分で十分なんです。特徴はひとこと、薄い。薄いのに硬くて弾力があり、足裏を「ガシッ」とつかんでくれます。つま先側に干渉しないので、靴の上から乗せるだけでもきつくなりません。革靴やコンバース、ローテクスニーカーなどの「インソールが取れないもの」ならリゲッタの出番です。全体が硬化ゴム(TPR・サーモプラスチックラバー)なので靴の中でも滑りません。
足が疲れる、どこかフィットしないのは、骨が靴に密着せず隙間が空いていることがほとんどです。そこをうまく埋めてくれるのがリゲッタです。ルーペみたいに穴が開いているのも、かかとの骨がピンポイントでぴったり収まるためです。手のひらサイズのこんな小さいもので本当に変わるの?と思われがちですが、骨とふまずの根元が乗って体重をしっかり支えます。必然的に足の接地面積が広がるので、疲労感は格段に減ります。余分なものを徹底的に省いた「引き算の機能美」です。水洗いも可能。これで1650円というのは衝撃価格です。
◆ビジカジでもスニーカーでも無双。2200円で手に入る最強インソール
低価格で高スペックなら口コミでも大人気なのが、ニューバランス「サポーティブリバウンドインソール」(2200円)。これは名作です。スニーカーやビジネスカジュアルでインソールが取り外せるものはこれに差し替えると無双です。ニューバランスは120年以上の歴史がありますが、スタートは靴ではなくインソール会社でした。スポーツメーカーは無数にありますが、ここまでインソールに注力しているブランドはニューバランスがダントツです。靴とは別に、インソールだけでも1000円台から1万円弱のものまで随時数種類を販売していますが、個人的には2200円のこれ一択で十分です。オレンジ色のパーツが硬化プラスチックでできており、リゲッタと同様にかかと周り〜ふまずの根元をピンポイントでサポート。かかとのぐらつきがなくなります。かかとがぐらつくと確実に全身もぐらついて、無意識に足の裏に力が入るので非常に疲れます。
かなり歩く、走る方には本当におすすめ。表面のグレーの部分が帝人の「ナノフロント」を採用しており、グリップもすさまじいです。髪の毛の7500分の1の細さの繊維で編まれているので、表面積を最大限に生かします。巻き爪や指先のトラブルで悩んでいる方には特におすすめです。ニューバランスの旗艦店まで行かなくても、実はABCマートにいつでも置いてあるので、気になったらすぐに試せます。
ABCマートではたいていレジの隣に配置されており、ニューバランスのインソールはこれしか置いていないので迷う心配も皆無です。ニューバランスのインソールだからニューバランスにしか使えないと勘違いされやすいですが、そんな心配は全くありません。インソールが脱着できる靴であれば、ブランドに関係なくほぼ応用可能です。
◆梅雨の足元に安心を。腰に優しいインソールのダークホース
これから梅雨の季節です。通勤や仕事でゴム長靴を履くなら必須アイテム。日本野鳥の会「ソールラックサポート」(1870円)。このインソールは一般にあまり知られていませんが、あるのとないのとで大違いです。ひっくり返すと裏にかなりしっかりしたプラスチックのプレートがついています。
ゴム長靴や、レストランのキッチン用の厨房シューズで腰を痛める方は本当に多いです。靴の製法上、型にゴムを流し込むので、無駄に靴がぐにゃぐにゃと曲がります。踏ん張ることができないので、足にかかるべき力が方向を見失い、知らないうちにぎっくり腰を起こすこともあります。そういった惨事を防ぐには、このインソールが抜群の効果を発揮します。プレートの上に足の骨と体重がしっかり乗るので、自然に踏ん張ることができ、疲労感は段違いです。安全靴で作業される方にも良いですね。
注意点がひとつ、サイズがやや小さめです。野鳥の会のゴム長靴に合わせた設計なので、履いている長靴より少し大きめのサイズを選んでください。筆者の靴のサイズは28.0cmですが、一番大きいサイズでもやや小さめでした。目安として、靴のサイズが27cmくらいまでの方におすすめです。
◆インソール選びの注意点
110円〜3000円くらいのインソールの99%は「クッション」が謳い文句ですが、ほぼ効果はありません。靴本体で十分にクッションは効いているので、疲れるとしたら原因は「ぐらつき」です。クッションにクッションを重ねるとぐらつきも倍になるので、かえってケガの原因にもなります。宣伝文句に惑わされないように、賢く選んでください。
【シューフィッター佐藤靖青】
イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます『シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ』