抜群の攻撃力誇るバルサと堅守速攻のインテルが激突...チャンピオンズリーグ(CL)4強決定

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2025年04月17日 18:31  webスポルティーバ

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 チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝が終わった。舞台から去ったのはレアル・マドリード、バイエルン、アストン・ビラ、ドルトムントで、準決勝の組み合わせはアーセナル対パリ・サンジェルマン(PSG)、バルセロナ対インテルに決まった。

 ウィリアムヒルほか英国ブックメーカー各社の予想によれば1番人気はバルセロナ。以下、PSG、アーセナル、インテルの順で続く。組み合わせは1番人気(バルサ)対4番人気(インテル)。2番人気(PSG)対3番人気(アーセナル)だ。

 しかし、上位3チームの優勝予想オッズは僅差だ。このなかでPSGとアーセナルのどちらかは準決勝で消える。その分だけオッズは抑えられている。組分けに恵まれたバルサが両者の間隙を縫って浮上したとの見方もできる。

 まず、バルサとインテルだ。

 PSG対アーセナルががっぷり四つに組んだ撃ち合いになることは予想できる。ともにオーソドックスな4バック同士の対戦で、スタイルも似ている。だが、バルサとインテルはそうならない。インテルは5バックになりやすい3バックで戦う変則スタイルのチームだからだ。噛み合わせはよくない。攻めるバルサ、守るインテル。インテルの攻撃はラウタロ・マルティネスを軸とするカウンター主体になることが予想できる。

 バルサがインテルの守備的サッカーの罠にはまった試合として記憶されるのが、2009−10シーズンの準決勝、セカンドレグだ。ジョゼップ・グアルディオラ対ジョゼ・モウリーニョの一戦である。モウリーニョはバルサでボビー・ロブソン監督時代は通訳、ルイス・ファン・ハール監督時代はアシスタントコーチを務めていた過去がある。グアルディオラはその時代、バルサの中心選手としてピッチに立っていた。

 モウリーニョがピッチに姿を現わすと、カンプノウはブーイングの嵐に包まれた。だがモウリーニョは萎縮することなく、恐ろしい手を使った。

 ピッチに立ったメンバーが、記者席に配布されたメンバーと違っていることにまず驚かされた。ゴラン・パンデフ(マケドニア代表)の姿はなく、クリスティアン・キブー(ルーマニア代表)が立っていた。

【大きいレバンドフスキの存在】

 試合直前の練習でパンデフがケガをしたためだとされるが、パンデフはアタッカーでキブーはディフェンダーだ。気がつけば布陣まで従来の4−2−3−1から5−2−3に変わっていた。突如、作戦を変更してきたのだ。

本当にパンデフはケガをしたのかは怪しい限りであるが、この守備的な作戦はズバリと的中する。このセカンドレグはバルサが1−0で勝利したが、ファーストレグが3−1でインテルが勝利を収めていたため、合計スコアは3−2。モウリーニョ率いるインテルが守り倒すことに成功した。

決勝に進出したインテルは、サンティアゴ・ベルナベウで行なわれた決勝でもバイエルンを下し、優勝を飾った。15年前の話だが、その後、5バック志向のチームがCLを制したのはトーマス・トゥヘルが率いた2020−21シーズンのチェルシーしかいない。

 シモーネ・インザーギ監督率いる現在のインテルは、そうしたCLの潮流を覆すことができるのか。ある時期、特に1990年後半から2000年台前半に掛けて、イタリアといえば守備的サッカーと、相場は決まっていた。鋭いカウンターを武器に、敵を一刺しするサッカーで欧州を席巻した。その後、イタリアでも守備的サッカーから脱するチームが増えていったが、インザーギ率いるインテルはまさにかつてのイタリア的手法で臨んでいる。堅守速攻。なにより守備が固い。5人で守るので当然といえば当然だが、この牙城をバルサは崩すことができるか。

 対するバルサの強みはアタッカー陣のバランスがいいことだ。ラミン・ヤマル(右)、ロベルト・レバンドフスキ(中央)、ラフィーニャ(左)。トップ下にはケガから回復したダニ・オルモが座るのではないか。

 そのなかで、いまあらためて大きな存在に映るのがレバンドフスキだ。トップにボールが収まるサッカーを可能にしている。遅攻に選択肢が多く、安定感がある。

 PSGにもアーセナルにもこの魅力はない。ウスマン・デンベレ(PSG)とミケル・メリーノ(アーセナル)。それぞれのワントップと、レバンドフスキとの違いは明白だ。

【好勝負必至のPSG対アーセナル】

 バルサといえば17歳のヤマルが何かと取り沙汰されるが、貢献度で勝るのは今季これまで12ゴールをマークしているラフィーニャだ。左ウイングでありながらCLの得点ランクで2位に入る高い決定力を魅せている(1位は13ゴールのセール・ギラシ/ドルトムント)。

 何より光るのは優れたポジション感覚だ。ブラジル人選手にはあまり見かけない動きをする。ブラジル人の左ウイングと言えば、ガブリエル・マルチネッリ(アーセナル)とヴィニシウス・ジュオニール(レアル・マドリード)を想起するが、ラフィーニャも負けていない。10年ぶりの優勝を狙うバルサの、浮沈のカギを握る選手と言っても言い過ぎではない。

 一方、PSG対アーセナルは全くの互角。好勝負必至である。PSGはグループリーグの終盤まで下位を彷徨っていた。際どく勝ち上がってきたチームだが、ここにきての伸び率は他の3チームを大きく上回る。冬の移籍でナポリからジョージア代表クビチャ・クワラツヘリアを獲得したことが大きい。ラフィーニャもそうだが、右も左もできる多機能型選手でありながら、縦突破と切れ込んでのシュートの両面を、どちらのサイドでもバランスよく発揮する。文字どおり今日的なウインガーである。

 さらに、19歳のフランス人ウインガー、デジレ・デュエも右肩上がりの成長を見せる、PSGに欠かせない選手である。この選手も右も左できる多機能型で決定力もある。中心的であるウスマン・デンベレ、さらにはもうひとりのウインガーであるブラッドリー・バルコラについても同じことが言える。つまりPSGのアタッカー陣は、すべてウインガータイプということになる。一本調子になりやすい面なきにしもあらずだが、ツボにハマれば破壊力満点なので、そのあたりは試合展開に懸かっている。自慢のドリブル&シュートは遅攻より、速攻のほうが活きるかもしれない。

 アーセナルは、前回覇者で通算15度の優勝を誇るレアル・マドリードに完勝したことで、さぞ自信をつけたに違いない。CLを制した経験がこのクラブにはない。その点でリバプール、マンチェスター・シティ、チェルシーとは一線を画す。アーセナルの弱みはそこになる。ただしPSGも優勝経験がないという点では一致する。先述のとおり、ブックメーカー各社の予想ではPSGが若干有利となっている。

 準決勝でチャレンジャーになるのはどちらか、受けて立つのはどちらか。それぞれの立ち位置も実際の対戦に大きな要素として絡んでくる。レアル・マドリードに対してはチャレンジャー精神を貫くことができたアーセナルは、PSGに対してはどうなるか。最も目を凝らすべきやはりウイング対決だろう。サイドを制したものは試合を制す。そんな展開になる気がする。

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