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兵庫県内の工場でアスベスト(石綿)を吸ってじん肺を発症した男性の遺族が国に約600万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は17日、国に請求額全額の支払いを命じた。20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」を理由に請求を棄却した1審・大阪地裁判決(2023年12月)が取り消され、遺族側の逆転勝訴となった。三木素子裁判長(谷口安史裁判長代読)は「国側は、じん肺の特質を正しく理解していない」と述べた。
男性は1963〜71年に工場で石綿セメント管の製造作業に従事。99年10月19日にじん肺の健康診断を受診し、00年5月30日に労働局から石綿による健康被害を認める決定(管理区分決定)を受けていた。20年5月に提訴し、後に死亡。遺族が訴訟を引き継いだ。
国の当初の和解基準では男性は救済の対象だった。しかし、国が19年に除斥期間の起算点を「管理区分決定時」から「石綿被害の発症が認められる時」に早めたため、国側は「男性の提訴時には請求権が消滅していた」と主張。訴訟では、起算点の見直しの是非が争点となった。
判決は、じん肺が特異な疾患で、進行の程度や速度が多様である特徴を踏まえれば、じん肺による損害は、行政が正式に被害を認める「管理区分決定時」に発生したとみるべきだとし、ここが除斥期間の起算点となるとした。
国側は、男性が健康診断を受けた99年10月19日を起算点としたが、判決は「男性が管理区分決定を受けた00年5月30日だった」と判断。管理区分決定時を起算点とすると、男性の提訴は19年11カ月後になることから、判決は「除斥期間は経過していなかった」と認めた。
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さらに、石綿被害者を救済してきた過去の判例を引用して、判例は管理区分決定時が除斥期間の起算点となると読み解くのが相当だとし、「国側はじん肺の病変の特質や、最高裁判決を正しく理解していないと言わざるを得ない」と批判した。厚生労働省は「判決内容を精査し、対応を検討したい」とのコメントを出した。【岩崎歩】
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