石綿被害を巡る訴訟の判決後、記者会見する原告側弁護団=17日午後、大阪市北区 石綿(アスベスト)工場で働き健康被害を受けた男性の遺族が国に約600万円の損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決が17日、大阪高裁であった。三木素子裁判長(谷口安史裁判長代読)は、請求を棄却した一審大阪地裁判決を取り消し、国に全額の支払いを命じた。
厚生労働省などによると、国は2014年の最高裁判決を受け、一定の要件を満たした元労働者らと訴訟上の和解をし、賠償金を支払う救済策を取っているが、19年に周知しないまま、救済範囲を狭めるよう運用を変更。賠償請求権が消滅する「除斥期間」の起算点を、各都道府県の労働局が健康被害を認定した時点から、被害が発症した時点に早めた結果、男性は対象から外れていた。
三木裁判長は、除斥期間の起算点について、変更前の運用と同様、被害が認定された時点と判断。国側は認定より前の発症時点と主張したが、病状が進行するじん肺の特質などを理由に退け、男性の請求権は消滅していないと結論付けた。
原告側弁護団は判決後、「国の態度変更の誤りを明確に認めた意義は大きい」との声明を発表。代理人の奥村昌裕弁護士は記者会見で、「極めて正当な判決だ。やっと正常に戻った」と称賛した。
厚労省は判決を受け、「国の主張が認められなかったと認識している。判決内容を精査し、対応を検討する」とコメントした。起算点の運用についても検討するとしている。