
3歳牡馬ランキング(前編)
3歳牡馬戦線は、クラシックの前哨戦、トライアルが行なわれるたびに、GIホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)を制した2歳王者、クロワデュノール(牡3歳/父キタサンブラック)の評価が高まる事態となっている。
なにしろ、直近の皐月賞トライアル、GII弥生賞(3月9日/中山・芝2000m)、GIIスプリングS(3月16日/中山・芝1800m)、リステッド競走の若葉S(3月22日/阪神・芝2000m)においても、ファウストラーゼン(牡3歳/父モズアスコット)、ピコチャンブラック(牡3歳/父キタサンブラック)、ジョバンニ(牡3歳/エピファネイア)と、いずれもホープフルSでクロワデュノールに屈した面々たちが勝利を飾っているからだ。
こうして春の牡馬クラシック、GI皐月賞(4月20日/中山・芝2000m)、GI日本ダービー(6月1日/東京・芝2400m)に向けては、クロワデュノールの完全な「1強」状態にある。
はたして、このままクロワデュノールが春の二冠を獲得するのか。はたまた、王者と未対戦の新興勢力の台頭があるのか。まずは、牡馬クラシック第1弾の皐月賞を前にしての、3歳牡馬の『Sportiva オリジナル番付(※)』を発表したい。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、JRAのホームページでも重賞データ分析を寄稿する競馬評論家の伊吹雅也氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、クラシックに挑む3歳牡馬の、現時点における実力・能力を分析しランクづけ。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。
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「1強」クロワデュノールこそ断然の評価を受けているが、それ以外は混戦状態にある3歳牡馬戦線。おかげで、5位には3頭がランクインした。エネルジコ(牡3歳/父ドゥラメンテ)、ファンダム(牡3歳/父サートゥルナーリア)、ジョバンニ(牡3歳/父エピファネイア)である。
木南友輔氏(日刊スポーツ)
「1勝クラスのセントポーリア賞(2月2日/東京・芝1800m)をデビュー2連勝で制したエネルジコ。東京にこだわったローテを組んで、狙うはGII青葉賞(4月26日/東京・芝2400m)からのダービー制覇。
ノーザンファームはドイツオークス馬、同好走馬を繁殖牝馬として何頭も輸入していますが、この馬の母エノラもドイツオークスの勝ち馬。日本では際立った成績を挙げる産駒がなかなか出てきませんでしたが、ついにこの馬から大物が出たか、という印象です」
吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「3戦無敗でGIII毎日杯(3月29日/阪神・芝1800m)を制したファンダム。新馬戦(9月8日/中山・芝1600m)では、1分32秒8のレコード勝ち。時計が出る馬場設定だったとはいえ、その勝ちタイムは出色のものでした。
2戦目のリステッド競走・ジュニアC(1月5日/中山・芝1600m)は、緩いペースだったこともあって時計が少し遅かったのですが、それでも1分33秒5の好タイムで快勝。そして、続く毎日杯でも鮮やかな勝利を飾りました。
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初の関西遠征、プラス1ハロン距離を延長しての一戦でしたが、それまでとは違う後方待機策から豪脚を発揮。メンバー最速の上がり32秒5というタイムをマークして、前を行く馬をまとめて差しきりました。逃げ馬が2着に粘るスローペースにあって、そんな芸当ができるのは、能力の違い、と言うしかありません。
中山での2戦は前づけから抜け出す競馬をしながら、毎日杯ではじっくり構えて新味を見せるあたり、こちらの想像を超えるものがあります。皐月賞はスキップして、今後の目標は現時点では未定ですが、時計の速い舞台ならさらなるパフォーマンスアップが期待できる1頭です」
土屋真光氏(フリーライター)
「皐月賞トライアルの若葉Sを勝ったジョバンニ。ここまでの戦績は5戦2勝、2着3回。すべて連対を果たしていて、クロワデュノールとエリキング(牡3歳/父キズナ)以外には先着を許していません。
相手関係から休み明けでも落とせない若葉Sは、着差こそわずかながら、危なげない走りで勝ちきりました。ここまでの順調な過程を考えると、きっかけひとつで有力視されているエリキングとは着順が変わってもおかしくありません。ダービーはともかく、皐月賞ならエリキングとは互角か、それ以上の評価ができると見ていいと思います」
4位は、前回と同じくマスカレードボール(牡3歳/父ドゥラメンテ)。ホープフルSでは11着と大敗を喫したが、それ以外は負けなし。クラシックとの関連が深い前走のGIII共同通信杯(2月16日/東京・芝1800m)を快勝し、皐月賞では「打倒クロワデュノール」の有力な一頭と目されている。
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伊吹雅也氏(競馬評論家)
「3月30日終了時点で、本賞金は6520万円、一走あたりの賞金は1630万円。いずれもJRAに所属する現3歳世代の牡馬としては、単独8位にとどまっています。とはいえ、JRAのオープンクラス、かつマイルより長いレースを複数回勝っているのは、エリキング、クロワデュノールとこの馬だけ。牡馬クラシック戦線においては、実績上位と言える一頭です。
近年の皐月賞は、関東圏の重賞で連対したことのある差し馬が優秀な成績を収めています。さらに、前走のレースが共同通信杯だった馬は、2020年以降に13頭いて3着以内6回、3着内率46.2%。共同通信杯を勝ちきった点はもちろん、その共同通信杯から直行してきた点も高く評価できますから、引き続きマークしておいたほうがいいのではないでしょうか」
3位は、前回2位のエリキング。デビューから無傷の3連勝を飾っているが、脚部不安によって、皐月賞にはGIII京都2歳S(11月23日/京都・芝2000m)からのぶっつけで臨む。その点をどう判断するか......。
木南氏
「トライアルを通じて、クロワデュノールの評価がグングン上がる現状。実績馬のなかでは、直接対決のないエリキングが逆転候補となりそうです。
オープン特別の野路菊S(9月21日/中京・芝2000m)、京都2歳Sと、ともに地味な勝ち方でしたが、ホープフルSでクロワデュノールの2着となったジョバンニに、それらふたつのレースで連勝。およそ5カ月の休み明けで皐月賞に挑むことになりますが、その戦績を踏まえれば、評価を落とすことはできません」
(つづく)◆「3歳牡馬ランキング」の1位と2位は?>>