幼少期から性的虐待を受けたことが原因で心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとして、広島市の40代女性が父親に約3700万円の賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(平木正洋裁判長)は16日付で、女性の上告を棄却する決定を出した。
不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」が経過しているとして女性の請求を棄却した1、2審判決が確定した。小法廷は「上告理由に当たらない」とだけ述べた。裁判官5人全員一致の判断。
1、2審判決によると、女性は保育園に通い始めた頃から父による性的虐待を受け、小学生4年から中学2年の頃まで性行為を強要された。
訴訟では、除斥期間の起算点がいつになるのかが争点となった。女性の提訴は2020年で、父親による性的虐待を不法行為の起算点と捉えると提訴時には除斥期間が経過していたことになる。
ただ、裁判例の中には除斥期間の起算点を「不法行為時」ではなく、症状が出た「損害発生時」としたものがある。女性側は明確なPTSDの症状が初めて表れたのは18年以降だとし、この時期を起算点とすべきだと訴えた。
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22年10月の広島地裁判決は、女性が10代後半の頃に耳鳴りやめまいといった症状が出ていたことから、「損害発生時」の理論をとったとしても除斥期間の起算点は遅くとも20歳ごろだとし、賠償請求権の消滅を認めた。
女性側は「20歳以降は耳鳴りなどの症状が一時治まった。18年に発症したPTSDは10代の頃とは異なる症状。新たな損害だ」と控訴した。しかし、23年11月の広島高裁判決は、二つの症状は質的に異ならないとし控訴を棄却した。【巽賢司】
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