多発性骨髄腫の治療は、長期にわたり悪化しないようコントロールすることが目標

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2025年04月18日 19:10  QLife(キューライフ)

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治療薬の開発ラッシュもいまだ根治に至らず

 多発性骨髄腫は血液腫瘍です。主な症候・症状には高カルシウム血症(C)、腎機能障害(R)、貧血(A)、骨病変(B)などがあり、これらをまとめてCRABと呼びますが、とりわけ骨病変では骨折が多くみられ、高齢者で発症しやすい骨粗鬆症との判別が難しいとされています。診断数は2020年に7,269人(そのうち男性3,920人)、2023年の死亡数は4,258人1)、高齢者に多くみられる疾患で、わが国では高齢化に伴って患者数は増加傾向にあるとされ、引き続き社会の高齢化が進行すると想定される中で、適切な治療を行うことが重要な課題となっています。


半田寛先生(ヤンセンファーマ提供)

 製薬企業のヤンセンファーマは、2025年4月4日に多発性骨髄腫のメディアセミナーを開催。その中で、群馬大学大学院医学系研究科内科学講座血液内科学分野診療教授の半田寛先生は、多発性骨髄腫の治療薬や治療を続けていくうえで重要なポイントを紹介しました。

 多発性骨髄腫の治療では近年、治療薬の開発ラッシュが続いています。1960年代にメルファラン(M)+プレドニゾロン(P)という薬剤を併用するMP療法が開発されて以降、1990年代にメルファランを用いた自家造血幹細胞移植併用大量化学療法が施行されるようになるまで治療法に大きな変化はありませんでした。しかし、2006年にプロテアソーム阻害薬が開発されると、その後免疫調節薬、CAR-T療法などが続々と開発されています。多発性骨髄腫は今なお根治療法はありませんが、これらの治療薬の登場以降は生存率が大きく改善しています2、3)。

 現在は、このような新しい治療薬を用いて、できる限り長期にわたり、悪化しないようコントロールすることが多発性骨髄腫の治療目標の1つとなっています。多発性骨髄腫の治療は、たとえ根治できなくても治療効果が高いほど生存率に寄与すると考えられており、半田先生は「がんの治療中や治療後に患者さんの体内に残っていると想定されるがん細胞を微小残存病変(MRD)と呼び、これが検出感度未満の場合、治療が奏功している状態と言える。多発性骨髄腫の治療においてもMRDの検出感度未満を達成し、かつ患者さんの寿命も健常者と変わらないところでまで維持できるようになるような時代が訪れると、根治したと同等とみなせるのではないか」と指摘しました。

悪化予防には「感染予防」「生活習慣」「運動」「笑って楽しく過ごすこと」が重要

 また半田先生は、多発性骨髄腫を悪化させないために、患者さん本人や家族ができることを紹介しました。

 まず、大切なのが感染予防で、手洗い、歯磨き、うがい、洗顔、マスク、ほこりとり(掃除)、定期的な歯科検診、予防接種などにより、感染リスクをできるだけ低下させることが重要です。食事を含めた生活習慣も重要で、禁煙、節酒、食事(カロリーコントロール、腸内細菌叢に良い食事、腎機能に配慮した食事)などに留意する必要があります。さらに、姿勢の維持、立つ、歩くといった動きの基礎となる筋肉「抗重力筋」を意識した運動により、骨がもろくならないよう予防すること、笑って楽しく過ごすことも多発性骨髄腫の悪化抑制には効果的なのではないかと先生は考えています。

 最後に半田先生は、「人生は英語で❝Life❞だが、Lifeには命という意味もある。医師の使命は、患者さんの命を救うことだが同時に患者さんの人生も豊かにすることを考えていきたい。いったん多発性骨髄腫を発症すると、今のところ完治できないが、治療法の進歩により適切な治療を行うことで発症後の生存率の改善が期待できる。患者さんの生活の質を落とさないよう、なるべく健康な状態で治療に挑み、人生を治療で埋め尽くさないことが重要。また、患者さん自身が何をしたいかを明確にしておくことで、治療法の選定などで医師は手助けをしやすくなる」と述べました。


上甲恭子さん(ヤンセンファーマ提供)

 今回のメディアセミナーでは、日本骨髄腫患者の会代表の上甲恭子さんも講演。上甲さんは「多発性骨髄腫を発症したとしても、その後の人生が治療のために生きるような状況になってしまうのは好ましくない。治療の目的は生活の質を高く保ちながら長く生きること。多発性骨髄腫とともに生きながら、生活の質を高く保つためによい塩梅(絶妙なバランス)を見つける必要がある。また、生活の質の価値観は患者さんによって異なるため、それぞれが治療目標を設定することが重要である」と指摘しました。(QLife編集部)

1)国立がん研究センター 癌情報サービス「最新がん統計」(2025年4月10日閲覧)[https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html] 2)S K Kumar et al. Blood,2008, 111(5):2516-2520, 2008 3)S K Kumar et al. Leukemia, 28(5), 1122-1128, 2014

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