中村敬斗のプレミアリーグ移籍の可能性は? 今季あと4ゴールでビッグクラブからのオファーも...

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2025年04月19日 07:21  webスポルティーバ

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 移籍市場に特化したデータサイト『transfermarkt』によると、中村敬斗の市場価格は1000万ポンド──およそ16億円だそうだ。

 随分と安く見積られたものだ。少なくとも3000万ポンド──およそ48億円は必要だ。中村本人、エージェント、そして所属するスタッド・ランスは、決して安売りしてはならない。

 なぜならこの日本人アタッカーは、いまやトレンドというべき「ウイング・ストライカー」になれる逸材だからだ。縦に鋭く突破し、カットインした際は右足で強烈な一撃。トップ、2列目でもプレーできる汎用性も、魅力のひとつである。

 アフリカ系の選手が数多く奮闘するフランス「リーグ・アン」の経験により、フィジカルもたくましくなった。強烈なショルダーチャージを嘲笑(あざわら)い、一気に加速してマーカーを無力化するケースも増えてきている。

 ヨーロッパのクラブに籍を置く日本人選手が総じて肉体的に強くなっているのは、プレーの圧が高いリーグをこなしたからこそ身についたアドバンテージである。近い将来、中村も鋼の肉体を搭載するはずだ。

 もちろん、現在でも十分な強さを有している。だが、いずれ訪れるに違いない「トップリーグ・チャレンジ」のためには、さらなるパワーアップが必要で、なおかつ余計な筋肉をつけてはならない。

 睡眠、休養、バランスのいい食事、情報の取捨選択に努め、過度なウエイトトレーニングは避けるべきだ。極端な負荷をかけて作った筋肉は、思わぬ大ケガを招くリスクが非常に高い。競技は違うものの、メジャーリーグで活躍したイチロー氏も松井秀喜氏も「ウエイトトレーニングに時間をかけすぎると筋肉が硬くなり、肉体的なプラスにはならない」と語っていた。

 4月11日のRCランス戦で、中村は2ゴールをマークした。1点目はクロスをダイレクトで合わせ、2点目は自陣深くから全力スプリントを怠らず、最後は体勢を崩しながらも右足を振った。

【代表では三笘・前田を脅かす存在】

 今シーズン11ゴール目。クラブのトップスコアラーであり、リーグ・アン全体のランキングでも10位タイ。25試合で4ゴールに終わった昨シーズンを大幅に上まわっている。スタッド・ランスは降格ソーンとわずか2ポイント差の15位に低迷しているが、中村は好調だ。

 当然、日本代表を率いる森保一監督の評価も変わる。左ウイング、左ウイングバックのファーストチョイスは三笘薫であり、大ブレイク中の前田大然が現時点ではプライオリティで上をいく。

 しかし、彼らとタイプの異なる中村が貴重な戦力であることに疑いの余地はない。日本代表が北中米ワールドカップで優勝を目指すのなら、生粋のウイングや類稀(たぐいまれ)なハードワーカーとともに、2列目、トップ、ウイングを器用にこなす中村のようなタイプは戦略・戦術の幅を広げる意味でも絶対に必要だろう。

 プランAを軸に世界最速でワールドカップの出場権を獲得した今、ある程度はプランBにトライすべきだ。必要以上にメンバーを固定すると組織は歪み、出場機会に恵まれない選手が不満分子に変身する。ネガティブな情報を外部に漏らしたケースを幾度となく見てきた。

 中村が森保監督に反旗を翻す、とは言っていない。日本代表のレベル向上のためには、ありとあらゆるタイプのタレントを有効活用すべき、という筆者の考え方だ。中村が今シーズンの好調を維持し、よりパフォーマンスに磨きがかかれば、三笘と前田の立場も危うくなる。この競争力が、日本代表を強くするのだ。

「ゴールにこだわっているところは、指導者からすると最高評価ですね。『打ち出の小槌』のように振れば入るみたいな......。彼の技術の高さかなと思います」

 森保監督の発言からも、中村に対する確かな期待がうかがい知れる。

 今シーズンの大目標はスタッド・ランスのリーグ・アン残留に貢献し、中村個人としては15ゴール以上だろうか。この記録は一流ストライカーの証(あかし)と言っていいだろう。昨シーズンのリーグ・アンではキリアン・エムバペ(現レアル・マドリード)、ジョナサン・デイヴィッド(リール)をはじめわずか5人。狭き門である。

 そして15ゴール以上をクリアした時、中村は移籍市場の上位に浮上してくる。リーグ・アンに精通し、フィリップ・トルシエ元日本代表監督の通訳を務めていたフローラン・ダバディ氏も、「ビッグクラブからオファーが届きそうですから、スタッド・ランスが留めておくのは難しいですね」と語っていた。

【相性のいいプレミアクラブは?】

 フランス国内で大出世を目論むのなら、パリ・サンジェルマン以外に選択肢はない。ウスマン・デンベレ、ブラッドリー・バルコラ、フビチャ・クバラツヘリアの牙城を崩すのは至難の業(わざ)だが、中村の可能性を信じてみたい。

 ブンデスリーガのボルシアMGとフランクフルトが興味津々、との情報も流れている。ラ・リーガではディエゴ・シメオネ監督のアトレティコ・マドリードだろうか。高いプレー強度を好むアルゼンチンの闘将に、中村はフィットする気がする。

 彼の希望はプレミアリーグだという。中規模改革を図るマンチェスター・シティとリバプールの周囲から「KEITO NAKAMURA」の名前は聞こえてこない。オーバーホールが避けられないマンチェスター・ユナイテッド、人材過多のチェルシーも同様だ。

 人件費高騰に苦しむアストン・ヴィラは補強より整理が優先で、トッテナム・ホットスパーは監督交代が必至となり混乱している。アーセナルとニューカッスルも左ウイングは空いていない。

 いや、ピッチに立てる可能性が大きいクラブを選んだほうがいい。

 シーズン開幕前は降格候補のひとつに挙げられながら、チャンピオンズリーグ、あるいはヨーロッパリーグの出場権獲得の公算が大きくなったノッティンガム・フォレストは、今夏も大胆な補強を図り、選手層を拡充する予定だ。

 中村がRCランス戦で見せた自陣からの全力スプリントはノッティンガム・フォレストの戦い方にマッチしており、現状ではカラム・ハドソン=オドイに次ぐ2番手と考えられる。だが、週1試合から2試合となる来シーズンは多くのポジションでローテーションが余儀なくされ、中村にも多くのチャンスが巡ってくる。

 プロスポーツは試合に出てナンボ、の世界である。メガクラブでベンチを温めたり、帯同メンバーから外れたりするのは、精神的に不健康だ。ちなみにノッティンガム・フォレストはチャンピンズカップ(現チャンピオンズリーグ)優勝2回の名門だ。中村のキャリアにも十分な箔(はく)がつく。

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