本番中、ストップウォッチ片手にトイレへ…73歳・山田透アナが明かす“実況よもやま話”【ニッポン放送ショウアップナイター実況アナVol.2】

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2025年04月19日 08:00  ORICON NEWS

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山田透アナ(C)ニッポン放送
 2026年に放送開始から60年を迎える“ラジオ野球中継の雄”『ニッポン放送ショウアップナイター』。「聴くプロ野球中継」を長年にわたってけん引してきた同番組の真髄に迫るため、ORICON NEWSでは今シーズン、実況アナウンサーへのリレーインタビューを敢行する。第2回は、「野球中継はワイド番組だ」との持論を持つ山田透アナウンサー(73)。細かな数値なども飛び出しながら、野球中継の多様性を説く。

【写真】笑顔で…ガッツポーズをする煙山光紀アナ

■解説の里崎智也と“ゴルフの飛距離”トーク? 実況で外してはいけない“臨場感”

――(第1回で)煙山さんのインタビューを行った際、山田さんが「野球中継はワイド番組だ」ということをおっしゃっていたことが話題になりました。

僕ら、実況だけじゃなくてベンチリポーターもやることがあるのですが、イヤホンで自分の局のオンエアを聴いてるわけですよ。そのうち2回ぐらいから、眠くなってくるんです(笑)。つまり、野球中継は子守歌と一緒だと。それくらい心地いいのが一番いいのだという意味ですね。打った、投げた、アウト、セーフ…だけではなくて、いろんな要素を含んでいないと、聴いているみなさんも疲れちゃうので、いろんな遊びを混ぜたいなという意識でやっています。

最近だと、甲斐拓也が巨人に移籍して第1号ホームランを打ったことをきっかけに、サトちゃん(里崎智也)と「打てるキャッチャーベスト3」みたいなトークをしていたんですよ。野村克也、田淵幸一、そして阿部慎之助だろうと。阿部慎之助はホームランも406本打っていて、ヒットも2000本超えているわけだから、サトちゃんはそこには入らないか…みたいな話をしながら。そこから派生して、サトちゃんが先日、ゴルフの飛ばす飛距離が格段に伸びた…みたいな話に脱線していって(笑)。ただ、ここでの本題である「打てるキャッチャー」については、数字を頭にしっかり入れておいて、そこの情報はしっかり伝えておかないといけないなと。

――山田さんがナイターを担当する日は、どういったスケジュールで動かれていますか?

1日最低2時間は、資料整理で帳面付けというものがあるんです。アナログで、昔のように新聞を切って貼って、その作業を通して内容が頭に入ってくるんですね。そこで疑問が生まれたら、さらにその選手のことを調べていくんです。本番では資料を見てしゃべることは、僕は極力しないようにしているんです。やっぱり、目の前の試合展開から目を離すわけにはいけないですから。例えば、きょうは北海道の局向けにロッテ対日本ハムの実況を担当するのですが、両チームのホーム・ビジターでの勝敗、一軍登録のピッチャーの情報、野手の打率やどのタイミングで交代になったのか…など、すべて資料にまとめて実況に臨みます。それをやるとなると、やはり毎日2時間はかかりますよね。僕はゴルフが大好きで、実はあしたもゴルフに行くんですけど、シーズンが始まってからは、もう3週間以上クラブを触ってないんです。どうしても「あしたはこれで、来週はこういうスケジュールか」なんて確認をしていたら、もうそっちにしか気持ちが向かなくなるんですよね。

――そこから球場に向かわれるんですね。

そうです。コロナ禍以降、取材のルールが変わってしまって、個別に選手に接触することが難しくなったので、そこは腕の見せどころじゃないですが、コーチの方が話しかけてくれたり、いろいろな方法で情報を集めています。巨人の阿部監督も入団の頃から見てきているので、感慨深いものがあります。

――実際に実況を行う中で、気にかけていることはありますか?

先ほどとの重複になりますが、グラウンドから目を離さないということです。伝え方にもテクニックがあって、ピッチャーがセットポジションに入りました、足を上げました、投げました…。それで0.8秒くらいの間があるのですが、そこが臨場感なんです。それを伝えるためには、本来であれば「高めか低めか」「変化球なのかまっすぐなのか」といったことを全部言わなきゃいけないんだけど、どこを省いて心地良くするのかも必要なんです。

■締めのあいさつで「サンキュー!」 貫いてきた“イズム”「自分が楽しくなければ、聴いている方も楽しくない」

――山田さんの中で忘れられない実況はありますか?

本当にたくさんあるから…でも、これかな。阪神タイガースが日本シリーズ第1戦を久しぶりに甲子園でやるということがあって。もう何回も甲子園でしゃべっていますけど、あれほどの大音響は聞いたことがなかったんですよ。ヘッドセットしていても、自分の声すら聞こえなくなっちゃう。それで終わってから、東京に帰ってきた3日後くらいに、突発性難聴になったんです。すぐ医者に行って「1ヶ月以内に治らなかったら。もう治らない」と言われたのですが、1週間後に戻ったからよかった…ということがありました。

あとは、10年くらい前なんですが、中継の最後の「締めコメント」で遊びすぎちゃったこともありました。その日、朝見ていた番組で大友康平さんが歌っていて、歌い終えた後に「サンキュー愛してるぜ!」と呼びかけていて、これはいいぞと(笑)。それで「神宮球場からお届けしてまいりました。解説は江本孟紀さん、実況は山田透でした。サンキュー愛してるぜ!」で終わって。さすがに(Mr.ショウアップナイターと呼ばれる)深澤弘さんから「お前、遊びすぎだ!」と言われてしまって…。

――山田さんは、深澤さんから誘われる形で、当時いたラジオ局からニッポン放送に入られたんですよね。

そうです!ある人を通じて「深澤さんが、話があるみたいだ」と聞いて、実際に会ってみたら「ウチに来ないか?」と言っていただいて。スポーツのアナウンサーはスポーツ部に配属となるので、そこからはずっとスポーツ中継をやっていましたね。深澤さんもアナウンサーとして活動されていましたけど、もう“ボス”みたいな存在で(笑)、僕は何回も怒られました。一方で、イタズラ好きでもあって、僕のメガネにサインペンで目玉を描いたり、帰るときになんか重いなと思ってバッグの中を見てみたら、ヤクルトが10本ぐらい入っていたり…そういう方でもありました(笑)。

――深澤さんからの教えで印象に残っているものはありますか?

チェックは厳しかったですよ。ある時、神宮球場のナイトゲーム、6時に試合開始の「ヤクルト対広島戦」っていうのがあって。僕は試合の1時間半前の4時半くらいに、立ち食いそばを食べたんですけど、そこで汁を全部飲んじゃったんです。ニッポン放送では巨人戦を中継していて、これはRCC中国放送に向けた中継だったんですが、3回くらいから尿意がやってきて、実況に力が入らなくなっちゃったんです。そんな時に限って試合も長引いてきて、巨人戦も終わって、ニッポン放送も神宮球場の中継に切り替わると。

そうしたら、池山隆寛が1イニングに満塁ホームランと3ランホームランを打って、スコアは「16対16」の延長戦という、もうすさまじい試合になっちゃって。午後10時半くらいに、さすがに我慢できないということでイニングの間のCM中に(実況室から)急いでトイレに駆け込んでいったんです。CMタイミングで1分15秒くらい猶予があるということで、ストップウォッチを持って行ったんですけど、ずっと我慢していたからか、15秒くらい出ない(苦笑)。そのあと、40秒間出したんですが、全部は出しきれず、無理やり止めて中継に戻った(笑)。結局、に試合が終わったのは0時過ぎで、僕は6時間以上しゃべっていたんですね。

聴いているリスナーのみなさんからしたら、僕がそんな状況だったなんて、わからなかったと思うのですが、翌日深澤さんに会ったら「お前、きのうの放送なんだったんだ?心も気持ちもこもってなかったじゃないか」と言われて、ちゃんと聴いていたし、見抜かれていたのだなと感じました。

――数々の実況を行ってきた山田さんが、今の後輩のアナウンサーのみなさんに伝えたいことはありますか?

みんな真面目ですね。それぞれのカラーがあるんだけど、僕なんかはやっぱり野球ばっかりやっていると疲れるから、随所に遊びじゃないけど、そういったものも入れてもいいのではないかなと思いますね。そういえば、松本秀夫くんが本に書いてくれていましたけど、ある時、僕が実況で「きょうは、私の母の誕生日であります」と言っていたことがあったみたいで。さて、どんな文脈で言ったのかな(笑)。そんなこともありながら、例えば10対0といった大味な試合になった時、僕は塩梅を考えながらですが「10対0になっちゃいましたよ!これから、もっと点数が入っちゃうんじゃないですか?」なんて煽るんです。聴いているみなさんのことを考えて、そういった実況をやることもあるので、いろんなことをやってみてほしいなと思います。

――19日と20日にはBSフジのプロ野球中継『BSフジLIVE プロ野球2025』とのコラボ放送も行われますが、山田さんは20日に江本孟紀さんとのタッグで臨まれますね。

もうよく知った顔ぶれなのですが、エモやん(江本氏の愛称)をうまく乗せていきながら、できればと思っています(笑)。21日からはスペシャルウィークでもありますが、僕は同じくエモやんと一緒に25日(金)に甲子園球場で「阪神対巨人戦」を担当します。この前の東京ドームで、阪神が巨人を3タテしましたよね?だから、そのお返しを巨人ができるのか…といったところなど、ポイントがたくさんあります。打ち合いのゲームもいいのですが、我々が中継をしていて「ナイスゲーム」と思うのは、1対0とか、いわゆるロースコアゲームが緊張感もあっていいですよね。

――改めて、最後に山田さんから見た『ショウアップナイター』の魅力をお聞かせください。

番組のタイトルである『ショウアップナイター』という冠を今まで一度も変えずにここまできて、まもなく60周年を迎えると。やはり、それはひとえに支持してくださるリスナーの皆様のおかげだと思っています。みなさんの期待に応えるべく「自分が楽しくなければ、聴いている方も楽しくない」という方針でしゃべっているので、これからも楽しみながらやりたいですね。

【山田透】
1951年10月20日生まれ、秋田県出身。公私に渡る破天荒な遍歴のなかで、『ショウアップナイター』をライフワークと公言。時に大袈裟なまでのエキサイティング実況は徹底したサービス精神に満ちている。ウォーキングと脱炭水化物で減量中。ギラギラとしたバイタリティーは衰え知らず。サウナとゴルフで今日も絶好調。

■ショウアップナイター情報
【山田アナの今週の実況担当】
20日(日)「ヤクルト×巨人」(神宮)
25日(金)「阪神×巨人」(甲子園)

また、番組では4月末まで『総額100万円相当』の「熱ラジ!祭り」を開催中。現金5万円はじめ豪華賞品を連日プレゼントする。

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