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山梨県甲州市の中央自動車道上り線笹子トンネルで昨年4月、大型トラックが軽乗用車に追突した事故があり、1歳の男児が死亡した。男児が乗った車に不具合が生じ、速度が上がらなかった可能性がある。自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた男性運転手の初公判が17日、甲府地裁(馬場潤裁判官)であった。【野田樹】
起訴状などによると、男性は茨城県五霞町の会社員、田所義光被告(55)。昨年4月4日午前7時15分ごろ、中央道上り線笹子トンネル内で、考え事をして前方の安全を十分確認せず、軽乗用車に追突した。軽乗用車の後部座席にいた男児(当時1歳)が死亡し、運転していた母親(当時19歳)は軽傷だった。
裁判で事故当時の状況が明らかになった。母親は男児を後部座席のチャイルドシートに乗せ、午前7時過ぎに一宮御坂インターチェンジから中央道に乗った。笹子トンネル内でアクセルを踏んでも加速せず、ハザードランプを点灯して非常駐車帯に車を止めた。ランプを点灯したまま再発進した直後にトラックが追突。軽乗用車はアクセルを踏んでいたのに減速しており、衝突時は時速7キロしか出ていなかった。
一方、田所被告は4日午前3時過ぎに勤務先を出発し、午前6時前に山梨県内の工場に到着。荷物を下ろして会社に戻るため、時速90キロでトンネル内を走行していた。考え事をしながら約19秒間運転し、非常駐車帯から出てきた軽乗用車に気づかずに衝突した。
検察側によると、母親の軽乗用車は無段変速機(CVT)に不具合が生じた可能性がある。事故前日もブレーキを踏んでいないのに時速20キロから10キロに減速し、エンジンを切って再始動したという。母親の供述調書には「止まるところを探していて気づいたら病院だった。警察から状況を聞き、非常駐車帯を発進したことを後悔している」との言葉が並んだ。
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田所被告は起訴内容を認め、被告人質問で「本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」と謝罪。免許取り消し処分を受け、勤務先の内勤に異動した。自家用車も手放し、自転車で通勤している。「重大な事故を起こして運転する気にはなれない。免許は要らないです」と吐露した。
検察側は、前方を注視していれば車線変更などが可能だったと指摘。「職業運転手の適性を欠いた危険なものだった」とし、禁錮2年6カ月を求刑した。弁護側は「一瞬の気の緩みが原因で、車線外から入ってきた車がとどまり続けるのは想定しにくい」と述べ、執行猶予付きの判決を求め、結審した。
判決は5月15日に言い渡される。
高速で走行中に故障したら
高速道を走行中、車に異常があった場合はどうすればいいのか。日本自動車連盟(JAF)は、ハザードランプを点灯させて非常駐車帯や路肩のなるべく広い場所に車を止め、安全な場所に避難して救援を依頼するように呼びかけている。
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JAF山梨支部によると、車が故障したりした場合は非常駐車帯や路肩に車を止め、まずは同乗者をガードレールの外側などに避難させる。車の後方に発煙筒や三角板を置き、高速道にある非常電話や携帯電話で連絡する。担当者は「おかしいと感じたら無理に車を動かそうとせずに身の安全を確保し、周囲に異常があると知らせるのが重要だ」と話した。
高速道で止まった車に衝突する事故は過去にも発生している。宮城県の東北自動車道で2023年5月、故障して路肩に止まっていたバスに大型トラックが衝突。バスの後方にいた運転手と乗客の3人がはねられて死亡した。
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