オリックス・クレジットがドコモ・ファイナンスへ社名変更 本格的にドコモ経済圏入りし、さらなるシナジー効果を発揮

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2025年04月19日 18:01  Business Journal

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ドコモ・ファイナンス社長の岡田靖氏

●この記事のポイント
・オリックス・クレジット(現:ドコモ・ファイナンス)は、資本業務提携によってNTTドコモグループの傘下に入り、商号をドコモ・ファイナンスに変更。
・「与信力強化・オペレーションの高度化によるdスマホローン事業の拡大」「新たなローン商品の共同開発・販売」などを実施していく。
・スマートフォンを起点とした様々な商流の中で、ファイナンスニーズを捉えることに取り組んでいく。


 2024年3月、オリックス・クレジット(現:ドコモ・ファイナンス)は、資本業務提携によってNTTドコモグループの傘下に入り、2025年4月1日に商号をドコモ・ファイナンスに変更した。岡田靖社長は1970年生まれ広島市出身。1993年にオリックス・クレジットに入社し、営業部長、 経営企画部長を経て2021年に代表取締役社長に就任。NTTドコモグループ入り後も代表取締役社長を継続している。資本業務提携の成果と重点戦略を聞いた。


●目次



協業で経済的なメリット
3カ年の中期計画で重点的に取り組む施策

――オリックス・クレジットがNTTドコモの連結子会社になった経緯について、検討した事項も含めて振り返っていただけますか。


岡田 株主の変更自体は、オリックスとNTTドコモ間での取引となりますので、私から詳細な経緯の説明は控えさせていただきますが、当社の社長の立場からお話しします。


 キャッシュレスの普及やデジタルの急速な発展により、消費者の行動が変化し、スマホさえあればエンタメやショッピング、決済、融資に至るまで、あらゆるサービスが利用できる時代となっています。ファイナンスサービスの訴求方法は、テレビCMなどのマスメディアへの広告から、経済圏における顧客ニーズに合わせたパーソナライズされたアプローチへと変化しています。当社も以前は広告宣伝費を使い、マスメディア向けの広告展開をしていましたが、想定していた投資効果が見込めなくなってきていました。コンシューマーファイナンスサービスを提供する当社がエコシステムへ入ることで、既存事業の成長と新たなサービスの展開が可能であると考え、経済圏などの顧客基盤を持つ企業との協業を模索していた際に、NTTドコモとのご縁があり、今回の資本業務提携のお話をいただきました。


 当時のオリックス・クレジットの成長戦略を考えた時に、オリックスグループに残ったほうがよいのか、あるいはNTTドコモのエコシステムの中で経営したほうがよいのか。どちらのほうが純粋に成長するのだろうかと検討した結果、BtoCという領域では、NTTドコモグループに入ったほうが伸ばせる余地が大きいのではないかと考えました。


――資本業務提携のアプローチはどちらから行ったのですか。


岡田 NTTドコモからです。マネックス証券と資本業務提携をするなど非通信のスマートライフ事業を強化する中で、私どもにお声がけいただいたと理解しています。


――経営統合に伴うデメリットには何が挙がりましたか。


岡田 正直な話、我々サイドで考えた時に、デメリットはありませんでした。


協業で経済的なメリット

――NTTドコモが66%、オリックスが34%の出資比率についてどのようにお考えですか。


岡田 当社は無担保ローン事業、信用保証事業、モーゲージバンク事業の3事業を展開しており、オリックスのネットワークも活用させていただきながら、金融機関や不動産業者との提携を拡大してまいりました。このネットワークを引き続き活用する上で、オリックスが株主となっていただいたことは大変ありがたく、事業拡大に向けて良い出資比率になったと思っています。当社とNTTドコモとの協業で事業拡大が進めば、オリックスにとっても経済的なメリットが出るのではないでしょうか。


――NTTドコモグループ入りにともなって「与信力強化・オペレーションの高度化によるdスマホローン事業の拡大」「新たなローン商品の共同開発・販売」「ドコモのメディアや販売チャネルを活用した既存事業の強化」「両社のデータを活用した商品の提案」などを実施すると発表しました。現在の成果はいかがでしょうか。


岡田 昨年の8月からdスマホローン事業のコールセンター業務の受託が始まって、今年4月からは、NTTドコモが外部に委託していたコールセンター業務の大部分を当社へ移管することができました。与信力の強化については、お互いに保有しているスコアリングモデルを両社のリスク管理部門でディスカッションをして、与信の最大化に取り組んでいます。


 商品開発ではNTTドコモのお客様向けに「おまとめローン」と「ビジネスローン」の2つの商品をリリースすることができました。「おまとめローン」の取り扱いは昨年10月に始めて、他社でお借り入れをされているお客様向けにご案内しています。「ビジネスローン」は、法人経営者と個人事業主向けのローンで、昨年12月に取り扱いを始めたところです。2つの新商品を出したことは当社の既存事業の活性化にも繋がっていると思います。


 既にdポイントを販促ツールとして、我々のお客様へご提供しております。さらに今後はdポイント提携店として、データ連携によって迅速にお客様へご提供可能となります。


――これらの事業の進捗をどう評価されていますか。


岡田 当初想定していたよりも、早くスタートできたと受け止めております。今年度はそれぞれの取り組みにおいて、実績を出すことにこだわっていきたいと思っております。


――新たなM&Aについてはどのような見通しでしょうか。


岡田 スマートフォンを起点とした様々な商流の中で、ファイナンスニーズを捉えることに取り組んでいきます。リース業から始まり、多角的に事業領域を拡げてきたオリックスのDNAを受け継ぎ、当社は既存事業に隣接する領域へと事業を拡大してまいりました。無担保ローンから始めて、信用保証、そして住宅ローンに事業を拡げてきましたが、我々の中で各事業のつながりがあります。FintechもM&Aも、NTTドコモとオリックスグループのリソースを活用できる領域にトライしたいと思っております。


3カ年の中期計画で重点的に取り組む施策

――ご経験を踏まえて、M&Aでシナジー効果を出すポイントは何だとお考えでしょうか。


岡田 一番大事なことはパートナーとの間で同床異夢にならないことだと思います。同じ意見を述べていても、結果として総論賛成・各論反対になってしまうケースがあります。当社とNTTドコモは非常に相性が良かったこともあるのでしょうが、やるべきことの方向性に齟齬がなかったので、NTTドコモが外部に委託していたコールセンター業務をスムーズに我々に移管していただきました。


――NTTグループはもとが公社、ドコモ・ファイナンスは独立系と出自が対称的ですが、両社の企業文化をどのように融合したのでしょうか。


岡田 融合とは反対かもしれませんが、一番ありがたいのは当社の独立性を尊重していただいていることです。NTTドコモのやり方に従うようにという要請もありませんし、我々の生い立ちや成り立ちをしっかりと尊重していただき、人事制度も当社独自の制度を運用しています。型にはめられることもなく、より当社が成長する環境を整えていただいており、社員も戸惑うことなく業務ができており、非常に感謝しています。


――向こう3カ年の中期計画で重点的に取り組む施策を教えていただけますか。


岡田 最優先課題はNTTドコモと一体となった無担保ローン事業の拡大で、その中でAI活用などデジタル化も進めていく方針です。それから当社の利益を牽引する信用保証事業を安定的に伸ばしていきます。モーゲージバンク事業では、長期固定の「フラット35」を中心に取り扱っております。現在は、住宅ローン利用者の多くが変動金利を選択していますが、金利が上がってきたことで少しずつ固定金利に回帰してくると予想しております。その動向も踏まえてドコモのお客様にも「フラット35」をご案内するなどして、取り扱いを増やしていきたいと思います。すべての当社の事業において、NTTドコモとのシナジー効果が出せると考えています。


(取材・文=小野貴史/記者)



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