ゲオの「PS5レンタル」絶好調 物価高の時代に“昔のビデオレンタル屋さんスキーム”が光明に?

115

2025年04月20日 15:40  ITmedia NEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia NEWS

ゲオ店頭のPS5レンタルコーナー(出典:ゲオ)

 ゲオが2月28日に始めたPlayStation 5(以下、PS5)のレンタルサービスが好調だ。店舗によって機材の稼働率には多少の差があるものの、サービス開始1カ月時点で「およそ半数の店舗でほぼ100%稼働」しているという。全体でも約80%だそうだ。


【その他の画像】


 「想定以上に好評です」と話すのは、ゲオのレンタル商材全般を担当するゲオ商品1課の坂井祐介マネージャー(株式会社ゲオ、ゲオ事業本部 ゲオ商品部 ゲオ商品1課)。坂井さんの部署はレンタルCDやレンタルDVDを手がけているが、動画や音楽のサブスクサービスの普及によって事業としては下火になりつつあるのは否めない。そんな状況で企画したのが、PS5本体のレンタルだった。


 企画を立ち上げたのは2024年の夏ごろ。PS5の供給がようやく増えてきた一方で、値上げの話が出てきたタイミングだった。当時、PS5の標準モデルは6万6980円だったが、24年9月には7万9980円に価格改定され、消費者にとっては購入の心理的なハードルがぐんと上がった時期といえる。


 「今あるレンタルの仕組みを使ってPS5の本体レンタルができないか? と検討を始めました」と坂井さん。全国には約1000店舗のゲオがあり、ゲームソフトやゲーム機本体も扱っている。そして「ゲオはPS5の買取も行っているため、メンテナンスなどのノウハウがあります。PS5レンタルを始めるにあたり、新たに人件費や教育費はかかりません。業界最安値で提供できます」。こう話すのは、坂井さんと同じ部署の塚本佑紀さんだ。


 条件はそろっていた。


●レンタルビデオ屋さんスキームとは?


 サービスを発表したのは2月27日。「7泊8日で980円」という料金を打ち出し、市場にもそれなりのインパクトをもって受け止められた。SNSでは「神サービス」といった言葉も見受けられるなどゲームユーザーは概ね好意的だった。


 「レンタルは、もともと高価なものを安価に、自宅で楽しんで頂くためのもの。PS5レンタルも、その理念の延長線上にあります」と坂井さん。ゲオの祖業であるレンタルビデオの考え方が多分に影響しているという。


 ゲオの歴史は、1986年に創業者の遠藤結城さんが愛知県豊田市にオープンした「ビデオロードショー美里店」まで遡る。80年代といえば、一般家庭にもビデオデッキが普及し始めた頃。ベータマックスとVHSが覇権を争っていた時代だ。


 もちろんインターネットなど存在しないので(前身のARPAnetが大学や研究機関をつなぎ始めていた)、動画配信のサブスクなんてない。電話は固定式で、一家に一台が基本。ビデオゲームでは任天堂の「ファミリーコンピュータ」(83年発売)が一大ブームを巻き起こし、PCでは「MS-DOS」が走り始めた頃だ(81年にVer.1.0出荷開始)。


 そんな時代だったから、映画は基本的に公開中に劇場で見るか、「〇〇ロードショー」といったテレビ番組で放送される時に録画するしか見る手段がなかった。ビデオテープやレーザーディスク(LD)、VHD(LDの競合規格)の映画ソフトも販売はされていたものの、高価過ぎてほぼマニア向けの商品だった。


 「当時のビデオソフトは、映画1本で1万5000円とか、2万円近くするものでした。それを安価に、自宅で楽しめるようにしたのがレンタルビデオです」と坂井さん。店舗へ行けば、大量の映画ソフトの中から好きなものを選び、1泊2日や2泊3日で劇場より安い千円程度(後に数百円)で借りられた。いかに画期的なサービスだったか分かるだろう。


 「時代が流れ、今また“需要はあるのに高額なもの”、つまりPS5があります」と坂井さん。多くの人が遊んでみたいと思っても高価でなかなか手が出せない。そんなゲーム機にレンタル需要を見い出した。


●実は実験的&戦略的なサービス


 SNSの反応が示すように、7泊8日で980円という料金はかなり戦略的な価格設定だった。本体はなるべく安く貸し出し、ユーザーの来店機会を増やすことで、ゲームソフトなど関連商品の売上増につなげる。ゲーム機レンタル単体の収益よりゲーム関連売り場全体の活性化を狙った。


 もちろんこれは、CDレンタルやゲーム販売だけでなく、中古ハード/ソフトの買取や修理までを手がけるゲオだからできた料金設定ともいえる。実際、坂井さんは「PS5レンタル時にソフトの同時購入などもあるので、確実に売上増につながったとみています」と手応えについて語っている。


 サービスの開始時期については、人気シリーズの最新作「モンスターハンター ワイルズ」(カプコン)が発売される25年春に照準を定めていた。「最大のタイトルがモンハンワイルズだと思っていましたので、そこに間に合わせることを“最優先”としました」。もちろん本体のレンタルサービスの始めるに当たり、販売元であるソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)とも「がっつり話をした」という。


 PS5レンタルを実施する店舗は、1)ゲームの売上比率が多く、2)駐車場のあるロードサイド店を選んだ。「われわれとしても新しい取り組みなので、ゲームが多く売れていて親和性の高いとみられる400店舗を対象にしました。また現時点で(大きくて重い)PS5本体を持って電車に乗るのはきびしいと考え、クルマで来店される方の多いロードサイドの店を選びました」。


 店舗によってばらつきはあるものの、貸出機は1店舗あたりおよそ5台を用意した。ユーザーはビデオのレンタルと同様、店頭の貸出機に空きがあれば、その場で借りられるが、予約は不可だ。また、一度返却して再び借りる場合も別の貸出機があれば対応するが、同じ貸出機をそのまま貸し出すことはないという。


 理由は「貸出機の台数が限られているため、継続利用をされると行き渡らないユーザーが出ると予想される」ため。「今回のサービスは、より広い客に利用してほしいので、続利用はお断りしています。ただし在庫(=別の貸出機)があれば貸し出しは可能です」。


 オンラインレンタルサービスの「ゲオあれこれレンタル」でも同時にサービスを始めた。料金プランは店舗と同じなので、1週間のレンタル料金(980円)より送料(2620円)のほうが高いサービスになってしまった。


 それでもサービス開始とほぼ同時に全ての貸出機が出払い、Webサイトで確認できる6週間以内の「空き状況」は現在も「×」だらけ。ネット上では予約機能の追加や確認できる期間の拡大を求める声も上がっている。


 坂井さんによると、今の時点で新たな機能の追加は予定していないという。理由は「今のサービスは実験的な試み」のため。「まずはユーザーの意見を集めて分析します。その結果、必要と思われた機能については検討していきます」としている。


●リアルショップの良さも思い出して


 6月には、PS5の競合機となる「Nintendo Switch 2」が発売される。国内版は多言語版よりも2万円も安い価格設定で話題になったが、それでも約5万円(税込み、4万9980円)と、レンタルビデオ店が流行した時代のファミコン(1万4800円)や「ゲームボーイ」(1万2800円)を思うと隔世の感がある。


 まして、PS5は約8万円だ。昔のゲームとは性能やクオリティーが全く違うとはいえ、家庭用ゲーム機というものが、以前より気軽に購入できなくなったのは確かだろう。親が子どもに買い与える玩具として、あるいは中高生がお年玉を貯めて購入するものとしては厳しい価格帯になってしまった。そんな時代で、ゲオのようなレンタル屋さんが再び脚光を浴びる可能性も大いにありそうだ。


「街のレンタル屋さんは下火になっている状況ですが、新しい形でもう一度、皆さんにレンタルの良さを思い出していただきたいですね。その場で借りられる即時性やリアルショップならではの良さも感じていただければうれしいです」(坂井さん)



このニュースに関するつぶやき

  • 最近ゲームやらないからな。ハードも2だったか3だったか忘れた…面白いソフトでもあればだけど…借りてまではやらんだろうな( ´・Д・)
    • イイネ!10
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(73件)

ランキングゲーム・アニメ

前日のランキングへ

ニュース設定