岩本和子さん“奇跡の42歳”のキャッチコピーを引っ提げて、日本中の熟女好きを沸かせたグラビアモデルの岩本和子さん。しかし、人気絶頂だった2019年5月、JR熱海駅構内にて、当時交際していた男性(以下、K氏)の顔を切りつけ現行犯逮捕された。この一件は「熱海事件」と呼ばれ、その後、彼女は芸能界の第一線から姿を消していた。
だが、今年になり表舞台に姿を見せる機会が増加。3月3日に新橋の熟女スナック「新橋チャレンジ酒場あけみ」のトークショーイベントへ出演した。イベント当日には、なんと、熱海事件で岩本がカッターで切りつけた相手を知るという人が客として訪れた。彼は「あの男は、ターゲット(被害者)に女を当てがって金を騙し取るようなこともしていたんですよ。僕も迷惑をかけられた一人。岩本さんに会えると聞いて、今日ここにきました」と暴露。客席にどよめきが起きたのは言うまでもない。
深掘りして真相を聞き出すべく、岩本さんにインタビューを申し込んだ。包み隠さず語ってくれたエピソードの数々は、2時間ドラマ顔負けの強烈なものだった。
◆40代の間にイメージを覆したかった
ーーここ最近、メディアでよくお見かけするようになりました。何かあったのでしょうか?
岩本和子:「熱海事件の岩本和子」っていうイメージがすっかりついてしまいましたよね……。芸能人として頑張っていたのに、それまでに築いたキャリアは全て壊れてしまいました。事件を起こしてしまうと、逮捕されたことは大々的に報じられても、不起訴処分になったことは全くといっていいほど報じられないんですよね。今年、私は49歳。40代の間にイメージを覆したくて、再び芸能界に戻りたいと思ったんです。
ーーイベントには当時交際していたK氏のことを知る人(以下、Aさん)も客席にいました。
岩本和子:はい。びっくりしました。でも、同じように彼によってつらい思いをさせられていた“同士”と実際にお会いできて、励まされた気持ちになりました。
◆音信不通になったため、熱海まで出向くことに
ーーAさんは、K氏に熱海の資産家Yさんを紹介したとお話しされてましたね。YさんはK氏と知り合って以降、人が変わったようになってしまい、億単位のお金をK氏に渡しているとのことでした。ところで、岩本さんが熱海駅にいたのは、K氏が熱海の資産家のところへ通っているという情報を得たため……ということでしょうか?
岩本和子:はい。LINEをしても返信がない、電話をしても繋がらない……そんな状態だったため、K氏に関することをなんでもいいから教えてほしいと色々な伝手を頼りました。当時、K氏が足繁く通っていた熱海に行けば会えるのではないかと言われ、熱海に行ったんです。
ーーAさんの知人たちも、K氏にお金を取られてしまったということで熱海駅で待ち伏せしていたとのことでしたね。騙された人は多かったのでしょうか?
岩本和子:K氏と交際していた当時の私は彼の裏の素顔を全く知りませんでした。事件を起こしたあとに、ブログ等を通して、たくさんの人から『あいつは詐欺師で、自分も被害にあった』という連絡が来て初めて本性を知りました。K氏が、その人からいくら取るのかというのは、それぞれ人を見て判断しているようでした。数百万円の人もいれば、それこそ何千万円という単位の人もいましたし、なんなら億を超えた人もいると聞いています。
◆今でも許せないことが2つある
ーーYさんも億単位でお金を取られてしまったとのことでしたね。Aさんは、YさんにK氏を紹介したことを非常に後悔していると話されていましたが、岩本さんは今も強い感情が残っていたりするのでしょうか。
岩本和子:はい。今でも許せないことが2つあります。それは、子どもを堕ろしたことに対して一言も謝ってくれなかったこと。何か一言、言葉をかけてくれれば私はそれでよかったんです。それから、母のお金を騙しとったことです。母に申し訳ないし、本当に悔しいです……。
ーーAさんは、「K氏は、学歴も高く、一流企業にお勤めもされていた。それに、マメに連絡を取り、細やかな気遣いも素晴らしい。人として魅力的だと思い、すっかり信頼してしまった」と言っていましたね。人たらし……という表現がしっくりくる気がするのですが、具体的にはどこが魅力的なのでしょうか。
岩本和子:私は、親が経営者という家で裕福に育ちました。甘やかされて世間知らずだったと思います。人を疑うことを知らず、どちらかというと天然といっていいほど…。そんな私の未熟さもあったと思いますが、彼が言うことを疑うことはありませんでした。偶然、道端で彼が奥さんと一緒に歩いているところにバッタリ出くわすまで、まさか既婚者だとは思いもしませんでした。
◆非情な一言…「堕ろしてくださいね」
ーー奥さんとバッタリ会った時は、もう妊娠されていたのですか?
岩本和子:はい。K氏は私に会うやいなや一目散に走って逃げてしまい、私は追いかけたんですけど、転んでしまって……。路上に倒れている私と奥さんがあとに残されました。そして、お腹の大きい私に、奥さんは「堕ろしてくださいね」と言って去って行ったんです。本当につらかったです。その少し前には、K氏は私の母のところに結婚の挨拶にも来ているんですから。
ーー岩本さんのお母さんにご挨拶されてたんですか?
岩本和子:ホテルの一室を取って顔合わせをしました。うちは母しかいないので母が、向こうは父親を連れてくるとのことでした。しかし、なぜかお父様は部屋には来ないで下のロビーで待っているとのことでした。結局、お父様がいらしているというのも嘘だったのですが……。
ーー親同士の顔合わせは叶わなかったものの、親への挨拶は済ませたとなると、当然結婚するのだなと岩本さんもお母様も思いますよね。
岩本和子:はい。私も母も幸せな気持ちでした。でも、K氏からしたら、私が妊娠しているという状況が、まさにお金の話を持ちかけるのに格好の状況だったのかもしれません。もし、妊娠がなければ、母が騙されることもなかったでしょう。母は経営者として長く仕事をしている女性でとてもしっかりしています。母としては娘のお腹の子の父親であり、結婚相手となる大切な人なので信じてしまったのだと思います。
◆母が3000万円を貸した経緯
ーーK氏は、どのようにお母様に話を持ちかけたのですか。
岩本和子:社会貢献がしたいということで、知人と一緒に福祉関係の会社を立ち上げたものの、そのパートナーに裏切られて何千万も持っていかれてしまった。信じた人間に裏切られて困っている。まもなく国からお金が出る予定だが、2〜3日後に控えている支払いをしなければ事業自体がダメになってしまう。必ず返すので一時的に3000万円貸してほしい、という話で。信じた母は「世の中、悪い人がいるけれど頑張ってね」といったことを言いながらお金を渡しました。結局は返ってきませんでした。K氏の事業に投資したというよりは、困っているK氏を助けるために貸したという感じでしたね。
ーー事件に至ったのは、お母さんがK氏にお金を貸したあとですよね?
岩本和子:はい。借りたお金は返さない、既婚者だということが明るみに出てしまった、こちらは妊娠しているという状態の中で、相手が逃げてしまった。なんとか探し出して、顔を合わせて話して、謝ってもらいたい……そんな思いだったんですよね。
◆お金だけではなく、人生を滅茶苦茶にされた
ーー貸したお金は、結局返してもらっていないそうで。お母様は取り戻したいなどとはおっしゃりませんでしたか?
岩本和子:お金は返ってきていません。私が起こした事件は、結果的に不起訴になりました。しかし母としては、もしかしたら娘が刑務所に入るのではという状態でした。不起訴になった後はもうお金なんてどうでもよく、とにかく相手の男とは関わるなの一点張りでした。
ーー岩本さんとしてはお母様に迷惑をかけてしまったと心苦しいですよね。
岩本和子:そうです。私が傷つくのは仕方ないことです。私が選んだ男性ですから。しかし、既婚者だと知っていたら、そもそも付き合わなかったので、罪のない命を奪う選択をせずに済みました。子どもを身ごもることがなければ、母もお金を取られることもなかった…。そう考えると悔しいです。あの男にはお金を取られただけでなく、人生を滅茶苦茶にされています。しかし、熱海事件では私が加害者で相手が被害者ということになっています。そして、彼に騙されたというメールを何通かいただいています。多くの人の人生を狂わせているのです。いつかK氏が司法に裁かれることを祈るばかりです。
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現在、岩本さんは蝶ゆり子という源氏名でメンズエステ店で働きながら、芸能界復帰をめざしている。今後については「投資詐欺被害者のために社会貢献活動も行なっていきたい」とのことだ。美熟女グラドルの頂点から人生のどん底を味わい、もがきつつも捲土重来を狙う岩本さんの活躍が楽しみである。
<取材・文/中山美里>
【中山美里】
性風俗、女性問題、金融犯罪などを中心に取材・執筆するフリーライター。性とお金に対する欲望と向き合う人間のフィールドワークがテーマ。ショークラブダンサー等を経て、未婚で1児を出産後、結婚。3児の母。高齢者の性を取材・執筆した『ルポ 高齢者のセックス』(扶桑社)など著書多数。性の仕事に対する差別や偏見解消に取り組む一般社団法人siente代表。