【フィギュア】ミラノ五輪で日本はメダルを獲れるか? 勝負のカギは「カップル競技」

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2025年04月20日 18:30  webスポルティーバ

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【前哨戦はアメリカに次ぐ2位】

 2年に1度開催される、フィギュアスケートの世界国別対抗戦が盛況のうちに幕を閉じた。各国の主要選手たちが、極めた技で競い合った。一体感にあふれた祭典だったと言える。

 一方、それは2026年2月のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪に向けた"新シーズンの序章"も意味していた。

 国別対抗戦は五輪団体戦の前哨戦。フィギュアスケート関係者のなかでも、そう位置づけられていた。レギュレーションは同じではないが、男女シングル、ペア、アイスダンスのポイントで争い、総合力が求められる。ひとつの試金石になるだろう。

 チームジャパンは、ミラノで団体のメダルを獲れるのか?

 2022年の北京五輪、日本は団体戦で史上初のメダルを獲得している。10チームで戦い、日本は男女シングル、ペアでポイントを稼ぎ、アメリカに2点差まで迫った。そして、暫定1位だったロシアがカミラ・ワリエワのドーピング違反で失格になったことで、昨年夏に正式に銀メダルへと繰り上がった。

 6チームでの国別対抗戦で、日本はアメリカと1位を争った。結果、アメリカが126点で1位、日本が110点で2位と後塵(こうじん)を拝したが、前回大会が3位だったことを考えれば上々だろう。3位にはカップル競技に強いイタリアが86点で入り、4位のフランスが78点、5位のカナダが72点、6位のジョージアが68点と続いた。

 ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪でも、日本のメダル獲得は有力と言える。アメリカと金色を争うことになるはずだ(ロシアは2022年2月にウクライナを侵攻した制裁で、国を代表しての五輪参加は禁止)。

【りくりゅうが日本チームをけん引】

 今回、日本は男子シングルで、鍵山優真が(12人中)ショートプログラム(SP)が4位、フリーが5位に終わるも、これは4回転フリップ挑戦などで産みの苦しみを味わった結果だろう。イリア・マリニンを脅かせる実力者は彼だけだ。

 佐藤駿は大健闘だった。SP5位、フリー4位で、日本男子シングルの選手層の厚さを証明した。五輪メンバーはこれからし烈な選考争いになるが、鍵山に匹敵する男子選手がいるのは心強い限りだ。

 女子シングルは、坂本が君臨している。国別対抗戦はSP2位、フリー3位も、コンディションを考えれば限界は出しきったと言える。

「気合いで乗りきったという演技でした」。大会後、本人はそう笑っていたが、どうにかジャンプをこらえて、観客を引き込む姿はまさに"坂本劇場"だった。

 千葉百音は今シーズン、GPファイナル2位、世界選手権3位で、著しい台頭を見せたが、国別対抗戦はSP4位、フリー5位で疲労の色が濃かった。「いろんな選手と戦うたび、足りないところを感じている」と本人は真面目に言うが、それは進化のプロセスだ。

 そしてペアの三浦璃来、木原龍一の「りくりゅう」は、SPで久々に80点台をたたき出し、貫禄の1位だった。フリーも自己ベストの1位で、圧倒的な技量を見せつけた。世界選手権2度目の王者の経歴は伊達ではない。前回の五輪でもメダル獲得の原動力だったが、存在感は当時以上だ。

「練習を積み重ねてこられてよかったと思います。シーズン後半にピークを合わせて、滑り込んできた結果を出せました」(三浦)

「(いまや日本チームをけん引していることについての質問に)10年前は想像できていなかったこと。自分たちがけん引している、というのはうれしい言葉ですが......全員で引っ張っていけたらと思います」(木原)

 2014年と2018年の五輪団体戦で、日本はそれぞれ4位と5位で、あと一歩でメダルに届かなかった。りくりゅうの登場で、戦局が劇的に変わっている。ポイントを稼げなかったカップル競技で、強力なカードを手にした。

【うたまさの伸びしろに期待】

 一方、アイスダンスはやや厳しい戦いになりそうだ。国別対抗戦で吉田唄菜、森田真沙也の「うたまさ」は、リズムダンスもフリーも6組中6位だった。5位には20点前後も得点差がついた。アメリカのマディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組とは比較も酷で......。

 しかし、うたまさは十分に健闘している。はつらつとした明るい演技で、観客の拍手も浴びた。結成2年目の若者に、これ以上は求められない。アイスダンスは緻密さが求められ、一つひとつのエレメンツを完璧に仕上げ、失敗は命取り。言い換えれば、完成にはとにかく時間がかかるのだ。

「自分たちは一生懸命さが前面に出ちゃうんですが、トップの方はこなれている。私たちのダンスを見ていると、まだ見ている方が疲れてしまうので、見ていて疲れない演技をできるように」(吉田)

「うれしい思いも悔しい思いも2年間してきて......それをどう生かせるか。それが3シーズン目になるはず。五輪はとても大きな大会なので特別視をしていない、は嘘になりますが、プレッシャーを感じすぎず、本番に挑めるように」(森田)

 うたまさがどんな演技ができるか。それは点数以上の話かもしれない。彼らの全力の演技は、バトンを渡すようにほかの選手につながるはずだ。

「強い私たちを見せられるプログラムを」

 うたまさは来季に向け、そう誓っていた。

 前哨戦はアメリカの強さが際立ったが、上々の大会だった。日本のシングルはこれが最高値ではないし、アイスダンスは伸びしろが多く、りくりゅうはチームジャパンのジョーカーになるはずだ。

「リンクサイドの応援がなかったらくじけていましたね。チームメイトも、観客のみなさんも楽しんでくれて。みんなが見ていてくれるから、頑張ることができました」

 キャプテンを務めた坂本の言葉は、五輪団体戦に向けた羅針盤だ。

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