【国別フィギュア】アリサ・リウは見る者を明るい光で照らす 驚異的な復帰も「これが私の上限ではない」

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2025年04月21日 19:10  webスポルティーバ

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【天才少女から休養のち世界女王】

 天才少女から世界女王へ。アリサ・リウ(19歳/アメリカ)は、史上最年少の13歳で全米選手権を制したのち、2022年の北京五輪に出場。そのシーズンの世界選手権では、初出場ながらも銅メダルを獲得した。輝くような明るい笑顔とはつらつとした演技で世界を魅了したアメリカのスターは、16歳で「フィギュアスケートの目標を達成できた」と競技を引退。スケート靴を履くことなく、学生生活を楽しんでいた。

 2年間の休養期間についてリウは、「たくさんのことをしてきました。私はご存じのとおりスケートばかりしてきたので、世のなかにあるさまざまな部分を探究したいと思ったんです。ショーやハイキング、水泳、旅行にも行きました。絵を描いたり、縫いものをしたり、パズルをしたり、映画もたくさん観ました。ほかのスポーツ、たとえばバレーボールやテニス、卓球などなど、やりたいことをすべてやりました」

 そんなリウが今季、競技に復帰。チャレジャーシリーズ、グランプリシリーズに出場し、全米選手権では2位。今年2月の四大陸選手権と3月の世界選手権への出場権を勝ち獲った。ホームカントリーであるアメリカのボストンで開催された世界選手権では、ショートプログラム(SP)、フリーともに生き生きとした滑りを見せ、金メダル。最高のかたちで復帰シーズンを飾った。

【心から楽しみながら首位の演技】

 今季最後の試合となる世界国別対抗戦(4月17〜19日)では、初参加となるチーム競技を心から楽しんでいるリウがいた。「チームボックス」と呼ばれるチームごとに分かれた席に座り、大きな声でチームメイトを応援する。自身のSPでもスムーズで伸びやかな滑り、着氷後も途切れることなくスピードを保つジャンプなど、彼女のスケートの優しさや繊細さを余すことなく表現し、首位に立った。

 演技後、リウは、「チームのためにポイントを追加する十分な演技ができたと思います。クリーンなプログラムができて本当にうれしい。ほかのスケーターの演技を見ると全員が驚異的な出来だったので、その勢いをキープしたかったんです。それを達成できてうれしいです」と弾けるような笑顔を浮かべた。

 キス&クライで点数を待つ間のパフォーマンスも団体戦の見どころのひとつ。リウの演技後、自国のほかのスケーターたちが左右にはけると、中央にはリウが浮き輪に乗ってポーズを取っていた。

「ジェイソン(・ブラウン)のアイデアでした。私はそのプランを知らなかったんですけど、チームメイトが『浮き輪に座って。私たちがあなたを扇ぐ演技をするから』と。やってみて、すごく楽しかったです。誰かがその動画を投稿していないか探してみようと思っています。きっとすごくよい出来だと思う。私たちはおふざけが好きなんです」

 お祭りのようなチームイベントを心から楽しんでいるリウだが、試合前にも日本を楽しんでいた。昨年11月のNHK杯で来日した際、「カットモデルに」と声をかけてきた美容師に連絡を取り、新しいヘアスタイルに変身していたのだ。

「NHK杯の時は時間がなくてできなかったけれど、今回の来日でヘアカットとブリーチをしてもらおうかなと思ってメッセージを送りました。そしたら彼が覚えてくれていて、カットとブリーチとトリートメントを3時間くらいかけてしてくれました。だから私の髪は今、ものすごく健康的です(笑)。デザインについては、私は物事を木のように考えるのが好きなんです。木の年輪は毎年、年齢ごとにリングが増えていきますよね。だから最初のカラーは2023年の冬、次に2024年の全米選手権のあとに追加しました。これからも毎年、リングを追加していくつもりです」

【弾ける笑顔で見る者を照らす】

 大会2日目(18日)は女子の試合はなく、リウは時間の許す限りチームUSAを応援。彼女の明るさはチームにとっても大きな力となっていたことだろう。

 大会3日目(19日)の女子フリーでは、ドナ・サマーの『MacArthur Park』に乗り、彼女の真骨頂であるパワフルなスケーティング、安定感のあるジャンプで観客をどんどん引き込んでいく。中盤から後半にかけて曲が盛り上がっていくにつれて、会場の熱気もヒートアップ。

 ステップシークエンス、音楽を表現するコレオシークエンス、そしてラストにかけて、ダンサブルな音楽を自ら楽しむように、この場で滑ることを心から楽しんでいるように、弾ける笑顔で駆け抜けていく。彼女の演技は、見る者を明るい光で照らすような喜びに満ちている。

 演技後は氷の上に倒れ込んでいたが、リウは「リンクがとても暑かったので、すぐにオーバーヒートする感覚がありました。だから演技が終わったら横になろうというのが私のプランでした。身体を冷やしてくれるだろうと思って」と笑顔で話した。

 試合後の囲み取材では、「この大会で優勝したことは、じつは信じられません。本当に感謝していますし、光栄です。皆さんが私の演技をこんなにも気に入ってくれたので、もっと頑張りたくなりますし、もっといい演技ができる気がします」とコメントした。

【これが限界でも上限でもない】

 2026年に控えるミラノ・コルティナダンペッツォ五輪について、「北京五輪の前は、次の日に氷の上に立てるかどうかわからないほど、絶え間ない戦いの日々でした。でも、今は五輪まですごく時間があります。まだトレーニングに戻ってきてから1年も経っていないので、五輪前に1年あるということはちょうど半分まで来たということだと思います。オフシーズンは一生懸命にやって、4倍くらい進歩できるように頑張ります」と話す。

 休養前は、トリプルアクセルや4回転という高難度ジャンプも武器のひとつだった彼女だが、今季はその武器を持つことなく演技の完成度を磨いて世界の頂点に立った。だが、来季、トリプルアクセルを戻してくることは、確実に計画のうちに入っているという。さらに、オフの練習では筋力や体幹を鍛え、4回転にも着手するかもしれないと彼女は明かす。ただし、「長くスケートをしたいので、ケガのリスクはおかしたくないんです。だからまだ未定です」。

 リウの驚異的なカムバックシーズンは、チームUSAの優勝で幕を閉じた。このシーズンを彼女は「大きな意味がありました」と振り返る。

「復帰シーズンがこんなにうまくいくなんて、思ってもいませんでした。だからすごくうれしいですし、来シーズンに向けての勢いにもなります。それに、もっと頑張りたいとも思わせてくれました。なぜならもっともっとできるとわかっているので。これが私の限界でも上限でもありません。だから未来が楽しみです」

 すべてを照らすような輝きを放つ彼女のスケートは、これからどんな進化を遂げていくのだろうか。その軌跡を見つづけていきたい。

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