【Jリーグ】川崎フロンターレ・長谷部監督の大胆起用 興味深い「改革」を選手はどう受け止めているのか

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2025年04月22日 10:10  webスポルティーバ

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 川崎フロンターレの"改革"が興味深い。

 今季の川崎は、昨季まで8シーズンにわたって指揮を執った鬼木達監督に代わり、長谷部茂利監督が就任。重要な転換点を迎えている。

 一般論で言えば、長く指揮を執った監督を代えることには、それなりの困難がともなう。長期政権下での成功体験が記憶に残るなか、すぐに結果が求められる一方で、大きく何かを変えようとすれば、反発を招きかねないからだ。

 とはいえ、鬼木監督時代を振り返ると、就任1年目からの5シーズンでは2度のJ1連覇を果たしたものの、その後の3シーズンは、カップ戦タイトルの獲得こそあったが、J1の順位は、2、8、8位。ジリ貧状態に陥っていたことは、数字が示している。

 ひと桁順位を保った昨季も、優勝争いに絡むどころか、J2降格を危ぶまれた時期もあり、むしろここまでよく巻き返したというのが、率直な印象である。

 この成績では、監督交代もやむを得ない。新たな指揮官を迎え、チーム再建を図ることは、川崎に必要な一手だっただろう。

 しかしながら、長谷部監督にとって、この役回りが厄介だったのは、就任1年目にして、非常にイレギュラーなシーズンを迎えることになったからである。

 2月に入り、J1の新シーズンが開幕。それと同時に、昨年から続く、AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)の戦いも引き継がなければならない。必然、試合日程は過密になった。

 とりわけ3月29日以降は、すべて中2、3日の間隔で、J1の7試合をこなす強行日程。これでは練習時間の確保も難しく、自らが志向するサッカーを落とし込んだり、戦術的な修正を図ったりするのは難しかったはずだ。

 ところが、新指揮官はメンバーを固定してチームの成熟を急ぐより、選手の疲労回復やケガのリスク回避を優先。選手のローテーション起用に努めた。

 その結果、出場機会が多くの選手に分配され、これまでに合計29人もの選手がJ1のピッチに立っている(うち26人は、最低1試合は先発出場している)のだ。

 そのなかには、大関友翔、神田奏真、土屋櫂大といった18〜20歳の選手も含まれる。

 長谷部監督の言葉を借りれば、決してローテーションありきではなく、「出るべき選手がチャンスをつかんだ」ということになるのだが、いずれにせよ、それが有望株の貴重な実戦経験につながり、選手層を厚くしていることは、間違いあるまい。

「年齢で判断される職業ではないので、監督がいいと思った選手(の年齢)が下であったり、上であったりするだけ。監督はそんなに年齢で(選手を)見ていないのかなと思う」

 そう語るベテラン、家長昭博は、「でも」とつないで、若手への期待を言葉に込める。

「若い選手は、チャンスを得られる機会があると思うので、もっともっとやってほしいと思うし、試合に出ることがすべてじゃなく、もっともっとこのクラブでは高いところを求められていると思うので、今その基準はもうちょっと上げなきゃいけないと思う」

 新指揮官にとって、きっと今季は難しい判断を迫られることの多いシーズンだろう。試合日程が過密だからといって、川崎は負けが許されるクラブではないからだ。

 だが、そんな状況にあっても、長谷部監督の選手起用はなかなかに思いきりがよく、大胆なものに見える。

 家長もまた、「選手からしたら、(ローテーション起用に)メリットはあると思う。ある程度の試合数に出ている選手は何人かいるが、その他はいろんな選手に(試合出場の)チャンスがある。勝てなかったりすると、結果論としてデメリットが出てくるが、何をしたとしても、メリットも、デメリットもあるものなので、当たり前のことかなと思う」と語り、その有効性を口にする。

 川崎はここまでJ1で12試合を戦い、4勝2敗6分けの勝ち点18。クラブごとに消化試合数が違うが、暫定順位では6位につける(4月20日開催分終了時点)。

 今季のJ1は現時点で、上位11クラブが勝ち点4差のなかにひしめく団子状態とあって、長谷部監督は「勝っていれば(混戦のなかから)抜けているのに」と、勝ちきれなかった試合が多いことを悔やむが、改革に痛みがともなうのは仕方のないことだろう。

 しかし、今季の川崎は、むしろ大胆な選手起用が目立つわりには、痛みを強いられてはいない。要するに、試合内容に大きな浮き沈みがないのだ。

 かつてのような圧倒的な攻撃力を求めるなら話は別だが、少なくとも、組織的な戦いのなかで局面ごとに高い強度を発揮しながら、安定した戦いを見せることはできている。しかも、試合で使える選手のパイをどんどん広げていきながら、である。

 ひとつの時代が終焉を迎え、改革の地固めを進めるチームは、これからどう変わっていくのか。

 今季の川崎には、そんな楽しみがある。

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