
「土砂降りなので洗濯バサミロケットが、虹を出しておきます」
ノートを開いたページの上で鮮やかに発光する「洗濯バサミロケット」の動画が「X」で大きく注目を集めました。罫線の引かれた真っ白な紙の上を、軽々と飛んでいくようなファンタジックな姿が多くの人を魅了し、絶賛のコメントが相次ぎました。
「天才です!!」
「おおぉ 美しくて元気出ます♪」
「形もさることながら、噴射炎の根本が青く、外側に行くほどオレンジや赤になってるのもリアリティあって完璧ですね」
「スタートレックのUSSエンタープライズ号に見えた」
動画の投稿主のお名まえは「岡本なう」さん(@okaphotoart)といいます。座右の銘は「人生は選択と洗濯の連続である」だという岡本さんは、数年前から「洗濯バサミフォトグラファー」として洗濯バサミをモチーフにした写真作品をSNSにて発表し続けています。これまでも「まいどなニュース」にて、洗濯バサミでかたちづくられた「青い彼岸花」や「紫色のアジサイ」などのユニークなアート作品をご紹介してきました。
|
|
どしゃ降りの日に、きらめく「洗濯バサミロケット」が「発射!」した時のことを、岡本さんにお聞きしました。
虹を作り出しました
――なぜこんなふうに「洗濯バサミロケット」は点火したように見えるのでしょうか?
この炎のように見えるものは、光の屈折・反射を利用して撮影した虹です。ひび割れたプラスチック水槽に水を入れ、太陽光を絶妙な角度であて、水面の動きや光の屈折・反射を活用して虹を作り出しました。
安全性に配慮しつつ撮影
――とても美しい光です。
水面が揺れることで、虹がロケットのジェット噴射のように見える面白い効果が生まれます。虫眼鏡などで光を一点に集めて熱を発生させる集光実験とは異なりますが、安全に配慮しつつ撮影を行いました。
|
|
――記事執筆時点で「11万件」もの「いいね」がついています、反響への感想はいかがですか。
今回、本当に多くの方にご覧いただき、反応していただき、本当に嬉しかったです。本当にお一人お一人に感謝の気持ちでいっぱいです。実はこの投稿は、同日、XだけでなくThreadsでも大変大きな反響をいただきました。そんな中でも、特に「今、疲弊していて何もかもを投げ出したい気持ちだったけど、投稿を見て少し元気が出た」というコメントを見た時には、涙が出ましたね。
「雨に濡れることでしか、見つけられない虹がある」
――それはうれしいですね。
この投稿をあげようと思った背景には、その日の天気がありました。朝から雪が降ったり、土砂降りだったり、雷が鳴ったりするなど、春の不安定な日でした。そこで、「雨上がりに見上げる空に虹を見つけられない日でも、雨に濡れてほっつき歩くことのある人間にしか見つけられない虹がある」ということに、ふと気づき投稿しました。そして、このコメントを見た時、その思いが通じた気がしました。
◇◇
|
|
「誰か一人でも笑ってくれたら」
今回、切なくなるような光を放つ「洗濯バサミロケット」を見せてくれた岡本さんは「僕は洗濯バサミフォトをしているわけですが、『私はこれが好き』『私はこれがいい』と思って生きている人はたくさんいると思うんです。その違いや個性、独自性が認められ、それぞれが輝ける土壌こそが、本当の多様性だと思っています。それがきっかけで(お互いに)価値観や人生が変わる瞬間もあるかもしれません。ただ、SNSをはじめとする今の仕組みでは、どうしてもトレンドや過去のパターンが優先されがちで、そういった個性や独自性が届きにくいこともあります」と作品を発表すること、それを遠くまで届けることの困難さを語りました。
そのうえで、「でもだからこそ、アートや表現には、その“違い”や“独自性”を伝える力があるんじゃないかなって思っています。『ニッチって、(ひとり)ぼっちじゃないんだよ』ってことを、自分の活動を通じて少しでも感じてもらえたら嬉しいです。もし誰か一人でも楽しんでくれたり、ちょっと笑ってくれたら、それが現在の何よりの目標です。そして、きっとそれは、自分自身も『(ひとり)ボッチじゃない』と感じられる瞬間なんだと思います」と自身が創作を続ける理由を話してくれました。
季節のモチーフを洗濯バサミで表現
さらに「(毎年のことなんですが)これからチューリップの時期になるので、洗濯バサミでチューリップを撮ってみたいなと思っています。あとはネモフィラや藤の花、夏になったら蝉や花火など、季節ごとのモチーフを洗濯バサミで表現できたらうれしいです。こうやって地道に投稿を続けていく中で、ニッチだと見られがちなものにも、SNSを通じて新たな価値が見つかったり、ちょっと見直されたりする瞬間があればいいなと思っています」と今後の抱負を話す岡本さん。次はどんな作品を見せてくれるのか楽しみですね。
(まいどなニュース特約・山本 明)