セレソン新監督はどうなる? キラ星のような候補者リストも、そこにブラジル人の名はなし

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2025年04月22日 18:11  webスポルティーバ

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 3月に行なわれたW杯南米予選で、ブラジル代表は長年のライバル、アルゼンチンに4対1で敗れた。これはブラジルのW杯予選史上最悪の敗北であり、ブラジル人サポーターの心に、強く、忘れがたい痛みを残した。

 この痛みは、苦悩と怒りが混ざり合ってできている。今、セレソン(ブラジル代表)は、アイデンティティも行く先も見失い、さまよっている。試合のたびに、ブラジルサッカーの誇りが踏みにじられていると、人々は感じている。ヨーロッパの強豪ではなく、10カ国ばかりのラテンアメリカ勢を相手にして屈辱的な試合が続く限り、この状況は終わりそうにない。

 ブラジルは現在、2026年W杯南米予選で4位につけているが、3位のウルグアイ、5位のパラグアイとは勝ち点が同じ。6位のコロンビアとはたった1ポイント差だ。もしこれまでどおり南米から4.5チームしか出場できない大会だったら、本戦出場も危ぶまれる順位だ。悲しいかな首位のアルゼンチンには勝ち点で10もの差をつけられている。まぎれもなくブラジル史上、最も苦戦しているW杯予選のひとつだ。

 悲惨な状況に追い打ちをかけるかのように、アルゼンチン戦の責任を追及されドリヴァル・ジュニオールが代表監督の座を追われた。カタールW杯で敗退してチッチ監督が辞任して以来、セレソンの監督は目まぐるしく変わっている。ラモン・メネゼス、フェルナンド・ディニス、そしてドリヴァル・ジュニオール。3年足らずで3人目だった。

 現在、監督の座は空白、6月5日と10日に予定されているエクアドル戦、パラグアイ戦で誰がベンチに座ることになるのかも、見当がつかない状態だ。

 優秀な選手がいないわけではない。チャンピオンズリーグ(CL)で得点王を争い、今年のバロンドール最有力候補と言われるラフィーニャ(バルセロナ)を筆頭に、ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ(ともにレアル・マドリード)......。浮き沈みはあるものの、それぞれのクラブでは輝きを放っている。

 だが彼らも、いったんカナリア色のユニホームを纏うと、自信を失い、恐れを抱き、持てる能力を存分に発揮できなくなってしまう。代表での失敗を重ね、サポーターやメディアの怒りに触れるたびに、恐怖は増大し、プレーは委縮してしまう。まさに悪循環だ。

【浮かんでは消える新監督の名前】

 この深刻な危機的状況から脱出する一番の策は、優秀な監督をベンチに招くことだ。瓦礫からチームを再建し、セレソンを再び世界のサッカーの頂点に返り咲かせる術を知る監督が必要だ。だが、正直に言って、それは「魔法使い」と同義語なのかもしれない。

 経験、カリスマ性、そして優れた戦術的ビジョンを併せ持つだけでなく、選手たちに自信を取り戻させ、力を最大限に引き出せるための心理学にも精通していなければならない。チッチ監督が辞任して以来、CBF(ブラジルサッカー連盟)はそんな監督を探し求めている。

 これまでに多くの監督候補の名前が浮かんでは消えていった。カルロ・アンチェロッティ(レアル・マドリード)、ジョゼップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ)、ジョルジェ・ジェズス(アル・ヒラル)などの名前は、常に優先順位のリストのトップに位置している。だが彼らは現在、それぞれのクラブで多忙であるため、いったん候補から外されている。

 しかし、それ以外の候補者のリストも依然としてハイレベルだ。

 ヨアヒム・レーヴ。2014年ブラジルW杯優勝国であるドイツの監督だったレーヴの名前は、ブラジル人をワクワクさせる。ブラジルサッカーに関する彼の経験と知識は豊富だろう。なにせブラジルW杯では、セレソンに7対1というスコアで勝利したのだ。興味深い候補者であると言わざるを得ない。 レーヴはドイツ代表を去り、現在はどこのチームも率いていないが、CBFからオファーがあれば、再びベンチに戻ってくる可能性もある。

 ユルゲン・クロップ。ブラジルが希望するもうひとりのドイツ人だ。元リバプール監督で、現在はレッドブルの幹部であるクロップは、もう監督業から離れると見られていた。だが「セレソン再建」という挑戦は、彼の考えを変えさせるかもしれない。クロップ自身はブラジルメディアの取材に「現在の仕事は疲弊する」と漏らしていて、監督に復帰するのならばレアル・マドリードかブラジル代表ではないかという見方がある。

【ブラジル人監督はどこへ?】

 ジネディーヌ・ジダン。元レアル・マドリードの伝説的選手の名前も挙がっている。ブラジル人に愛され、尊敬されているジダンは、監督としてもすでにその資質を証明しており、CLで3連覇を果たしている。現在の彼の最大の目標は2026年W杯後のフランス代表監督の座と言われている。CBFからのオファーも一度は断っている。しかし、ロナウドなどのブラジルの元選手たちとの深い友情は、その考えを変えさせるかもしれない。

 ルイス・カストロ。ポルトガル人のカストロは、ボタフォゴの元監督であり、ブラジルサッカーに精通している。ブラジルとサウジアラビアでの功績が、彼を信頼に足る候補者としている。ブラジル国内での彼の評価は高く、アル・ナスルではクリスティアーノ・ロナウドとともに仕事をしており、スター選手の扱いも心得ている。このリストの他の候補者たちに比べると無名だが、利点は多い。

 シャビ・エルナンデス。グアルディオラの愛弟子であるシャビは、CBFが「ぜひセレソンに」と思うひとりだ。監督としての経験はまだ浅いものの、攻撃的で積極的なプレースタイルは興味深く、また選手時代にブラジル人とプレーした経験もある。現代的な考えを持つ若手であることから、セレソンのベンチには最適な候補者のひとりと考えられている。

 マウリツィオ・サッリ。ナポリ、チェルシー、ユベントスで監督を務めた経歴を持ち、リーダーシップとチーム運営における革新的な手法で知られている。彼も現在、どこの監督もしておらず、有力な候補者である。ブラジルは今こそタフでエネルギッシュな監督を必要としているからだ。

 マッシミリアーノ・アッレグリ。リストに載っているもうひとりのイタリア人。アッレグリは多くの勝利を手にした監督だが、イタリア以外での経験がまったくなく、ブラジルサッカーの知識も皆無だろう。そのためブラジル代表監督には適していないとの声もあるが、彼の戦術能力がCBFの興味を引いているのだ。

 候補者はみなビッグネーム。世界に名だたる監督ばかりだ。ただ、実際にブラジルがこれまで契約してきた監督たちのことを思うと、理想と現実の差が大きすぎて、不安が残る。なにせ、これまでずっと失敗してきたのだ。

 それにしても、次期セレソン監督候補にブラジル人の名がまったく出てこないのは、どういうことだろう。この問題は、サッカーを国技とし、世界中のファンに夢を与えてきたブラジルサッカーが今、深刻な衰退の危機に直面していることを物語っている。

 率直に言って、ブラジルには代表を任せられるような有能な監督がいない。ブラジルのビッグクラブも、多くが外国人監督に率いられている。

 ライバル、アルゼンチンと比べるとその差はよりはっきりしてくる。マルセロ・ビエルサ(ウルグアイ代表)、ホルヘ・サンパオリ(レンヌ)、ヘラルド・タタ・マルティーノとハビエル・マスチェラーノ(ともにインテル・マイアミ)、マウリシオ・ポチェッティーノ(アメリカ代表)......。アルゼンチンにはヨーロッパのトップリーグで活躍してきた指導者が多い。

 その理由のひとつは、アルゼンチンには歴史のある監督養成機関があるからだとされる。一方、ブラジルにはコーチという仕事をきちんと学べる場所がない。監督養成において、いつまでもリノベーションができていないのだ。

 いずれにせよブラジル代表の監督探しは、今後の数週間が勝負となるだろう。

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