
4月21日にフジテレビ系ニュースが報じていた、大阪・関西万博の入場者男性による警備員への“カスハラ”騒動。一応の収束となったが、なんともモヤモヤ感ーー。
発端はフジテレビが取り上げた、万博来場者によって撮影された動画。4月17日の午後4時ごろ、西ゲート付近で男性の大きな怒鳴り声を耳にし、撮影を始めたところ警備員がおもむろに土下座したのだという。
大きなピンク色の手提げ袋を肩にかけ、腕を組んで高圧的な態度をとる男性。目の前には両膝をついて正座姿勢とり、そのまま両手を地面につけて深々と頭を下げる警備員。この行動に男性はさらにヒートアップして、何やら叫んでいる。
この放送された動画が拡散されると、SNS上では警備員に“土下座させた”男性に「カスハラ」指摘がなされ、多くの批判の声が上がっている。たしかに騒動の一部分とされる動画を見る限りは「カスタマーハラスメント」そのものだがーー。
このフジテレビ報道に対し、主催者である日本国際博覧会協会は4月22日、当時の状況を『J-CASTニュース』の取材に次のように答えている。
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なんでも当該男性から万博会場からの帰路を尋ねられるも、正確なルートを認識できなかった警備員が案内したのがデジタルサイネージ(電子看板)の場所。この応対に「なぜ、わからないんですか?」と詰問する男性に、警備員は謝罪しつつ案内を繰り返したようだ。
警備員は「自ら土下座を選んだ」
1度はデジタルサイネージに向かうも、その後の警備員の行動が不満だったのか、踵を返すと大声を出して詰め寄ってきた男性。身の危険を感じた警備員は、これ以上のトラブルを避けるべく自ら土下座を選んだ、というのが“真相”とのこと。
つまり協会によると、土下座はあくまでも警備員の自主的行動であって、男性から「強要」されたわけではなく、また警察に被害届を出す意向もないという。
土下座を強要することは「強要罪」に問われ、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられる可能性もある。かつて衣料品チェーン『しまむら』にて、店員に土下座を強要してSNS上に公開した客に、罰金30万円の略式命令が出された実例もある。いまや、カスハラは立派な犯罪行為と言えよう。
今回は「強要はなかった」との説明だが、となると冒頭のフジテレビ報道に“矛盾”が生じる。現場に居合わせた撮影者のインタビューによると、
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《男性が怒って、怒鳴っていて、警備員さんに。それで“土下座しろ”的な大きな声を発して、(撮影を始めたら)警備員さんが土下座をしたという状況ですね。(2人の間に)何があったかっていうのは確証がないんで言えないんですけど、“土下座しろ”っていう大きい声が聞こえて、そのまま警備員さんが土下座したって感じです》
さらに横にいたもう1人の警備員が、“同僚”が土下座する様子を目の当たりにして、仲裁に入るわけでもなく、《これがカスハラなんだな》と話していたことも“証言”している。
「土下座なんか…」要求ではない?
男性が「土下座しろ」と警備員に強要したとする、撮影者の話が事実ならば「強要罪」の成立も判断される状況。万博側が明かした“事実”とは異なるが、全国紙社会部記者は騒動を次のように見る。
「万博としては、“強要はなかった”との見解が事実だとしても、入場者による“カスハラ”でイメージを損ねたくない、事を荒立てたくないのが本音だと思います。実際、デジタルサイネージへの案内は適切だったとしつつも、警備員による自主的な土下座は“適切かどうかは判断していない”と、どこか誤魔化しているようにも聞こえます」
一方で、動画を取り上げたフジテレビ報道にも問題があるとする。現在もFNNプライムオンラインでは、“土下座”動画が配信され続けているのだが、
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「警備員が土下座をした直後に、テロップでも《土下座なんか…》と途切れた、後半部分の音声が聞き取りにくい会話が入り込んでいますが、男性は大声で“土下座なんかせいなんて言ったかよ”と話しているようにも聞こえます。
もちろん撮影者の証言通り、動画を撮る前には“土下座しろ”と言っていたのかもしれませんし、はたまた聞き間違いや記憶違いの可能性も否定できません。フジテレビ報道は、事前に協会側に事実確認をした上だったのか、“裏どり”ができていたのかは気になります」(前出・記者)
見る人が見れば人物を特定されかねない動画だけに、特に今なお多大な影響力を持つテレビ局には慎重な報道姿勢が求められそうだ。