特殊清掃業者が明かす、心が折れかけた仕事。倒れるスタッフが続出、現場は“地獄絵図”に

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2025年04月23日 16:01  日刊SPA!

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画像提供:ブルークリーン
 悲惨な現場の多い特殊清掃業者でさえも、あまりにもひどすぎて仕事を躊躇ってしまうことがあるという。清掃の過程でも心が折れそうに……。
 部屋一面に広がる“体液の海”、マンション全体を覆い尽くす腐敗臭。頭痛や吐き気で倒れるスタッフが続出するなど、まさにトラウマレベルだ。

 都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに詳しい話を聞いた。

◆マンション全体を覆い尽くす腐敗臭

 まずは高齢者のワンルームマンションでの孤独死の現場だ。一見いつもと変わらぬ現場のように思えるが。

「マンションの5階にある一室を清掃してくれとの依頼でした。季節は真夏でかなりの猛暑、1階に着いた時点で激臭を感じました。明らかに何かが腐敗しているぞ、と。エレベーターの中にも臭いが充満し、建物の共用部分すべてに腐敗臭が漂っているようでした。おそらく、他の住人の部屋まで臭いが広がっていたと思います」

 現場に到着すると、共用部分の2倍くらいの臭いが鼻を刺激したという。

「住民もこの状況でよく日常生活を送れていたなと思いましたね。苦情はたくさん来ていたようですが、業者の手配が遅れてしまい、このような状況になってしまったようです。ソファーの上で亡くなっていたのですが、くっきり人型のシミが残っていて。ホラー映画のようでしたね。体液がソファーから床のカーペット一面に広がってしまっていて、かなり手のかかる清掃でした」

 高齢者がソファーで寝たままの状態で亡くなり、死後かなり時間が経ってから発見されたようだ。

「死因は、心不全だったようです。シミを見る限り、悶えたり暴れ回った形跡がなかったので、寝たままお亡くなりになられたみたいです。ご本人も亡くなったことに気づいていないかもしれません」

◆頭痛や吐き気で倒れるスタッフが続出

 清掃作業中は気温が30度以上ある状態で、熱中症で倒れるスタッフが続出したようだ。

「なるべく外に匂いを漏らさないように空調を消して作業するんですよ。本来ならば清掃を終えている部分に水分補給ができる休憩所を作るのですが、全てに臭いがこびりついてしまっているので休憩所を作れず。

 ベランダを休憩所にしてもよかったのですが、見晴らしが良すぎて、“あそこで特殊清掃をやっている”とわかってしまうので。あんまり噂にしたくないといった要望もありまして、かなり気を遣いましたね。臭いや虫問題などで、周囲への被害があまりにひどかったので結果的にはネットなどで話題になってしまったようですが……。本来ならば、自分の判断で30分以内に水分補給などの休憩を取らなくてはならないのですが、臭いがひどすぎて防毒マスクを外すことができなかったので、それもできず」

 清掃が進み、防護服を簡易的なものに切り替えられれば水分補給は簡単にできるのだが、まだ匂いがひどい状況で危険レベルを下げるという判断には至らなかったという。

「熱い現場の時は空調服を着たいところなのですが、臭気を吸ってしまうので空調服は使えないのです。だから苦肉の策ですが、薄いベストを着て、中に氷の入った袋を入れて物理的に体を冷やすというやり方をします。そうでないと熱中症で死んでしまうので。

 でも、なるべく体が動きやすいように氷を入れたりするのを嫌がるスタッフも多いです。そういう人が熱中症で倒れていきました。みんな、頭痛と吐き気をもよおして、現場はめちゃくちゃでしたね。夏の水分対策としては大きめのクーラーボックスに大量の氷と飲み物を入れていくのですが、7時間くらいは熱い中でろくに水分補給もできずに作業していたと思います」

 なんとか現場は綺麗になったのだが、共用部分の臭いが取れていない状況だった。

「建物全体に臭いが染み込んでしまってるので、これは長い戦いになるぞと思いました。臭いの原因が不明な部分もあったんですよね。だから、しらみつぶしに原因っぽいところを清掃し続けました。匂いを取る清掃工程をなんども繰り返して、1ヶ月程度経ってから、ようやく臭いが鼻で感知できない程度になりましたね。

 毎日清掃作業に入っていたわけじゃないですが、60時間くらいは臭い取りの作業に奮闘していたと思います。作業が長引いてしまったせいで近隣の方にも迷惑をかけてしまいました。近隣被害でいうと、僕の知っている限りだと一番といってもいいレベルでした」

◆部屋一面が“体液の海”

 また、別件で臭いがひどく、部屋一面に“体液の海”が広がっていた悲惨な現場もあったという。

「築年数が古めで1Kの木造アパートの一室でした。体重が100キロ以上あるお相撲さんのような体格の人が突然死した現場だったのですが、床がすごいことになっていました。カーペットや布団の上などで亡くなった時の体液は布で吸収されて、ある程度は被害を抑えられるのですが、フローリングの上でなくなると、体液が吸収されず、そのまま広がってしまうんですよ」

 死後4日ほどで発見されたにもかかわらず、ひどく腐敗が進んでいた。

「3週間くらいは経過してるような腐敗具合でした。気温も暑いわけじゃないのに、なぜ、ここまでになってしまったんだろうと考えたところ、おそらく体の脂肪分が多すぎたからだな、と。いつもなら畳一枚分くらいの清掃で終わるはずが、部屋一面に体からでる油が広がってしまっていました。床はぬるぬる滑って、下手したら転んでしまうのではないかと思いました。人間からこんなに油が出るんだって、驚きでしたね。いつもの清掃時間の3倍くらいの時間がかかってしまいました」

 本来なら不動産屋が遺体がどういう状況になっていたのか確認するのだが、腐敗臭がひどすぎて玄関部分で諦めたという。

「ベッドの上から転がり落ちたような形跡がありました。おそらく、突然の発作でもがいていたのでしょう。持病があり、自宅で闘病生活を送っていたようですね。手前から順番に油を取っていきました。しかし、それでも臭いが取れなかったので床を外し、基盤である根太(ねだ)が見えるまで解体しました」

 年に何度かはこのようなひどい現場に遭遇するというが、やはり仕事は楽じゃない。

<取材・文/山崎尚哉>

【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦

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