馬名の由来を知っておけば/島田明宏

0

2025年04月24日 21:00  netkeiba

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

netkeiba

▲作家の島田明宏さん
 人によって、発音の難しい言葉がある。

 ずいぶん前、初めて日本に来た知り合いのアメリカ人女性の東京見物に付き合った。彼女は、街のいたるところにパチンコ屋があることに興味を示した。ドアが開くたびに店内から流れてくる音にも惹かれたようだ。あれは何かと訊かれて「パチンコ」だと教えたのだが、何回言っても彼女は「パ」をはっきりと発音しない。私は、「パ」を抜いた場合の意味を教え、ちゃんと「パ」をつけるか、もっと小さな声で言うかどちらかにするよう言ったのだが、結局、日本を出るまで直らなかった。

「手術」や「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」のように、単に言いづらいとか、舌足らずになりやすい言葉のほか、前後を逆に言ってしまったり、空目して、違う文字(音)で読んだりしやすい言葉がある。

 恥ずかしいことに、私は、「日本競馬の父」安田伊左衛門が所有し、1909(明治42)年にロシアのウラジオストクで行われた日露大競馬会で日本馬による海外初勝利を挙げた芦毛馬スイテンを、しばらく「ステイン」と空目していた。

 さらに、少し前までは、クロワデュノールを「クロノデュワール」と言い間違えることがあった。私だけなのかと思い、今、旧ツイッターのXで検索してみたら、結構な数の人が間違えている。

 スイテンに関しては、安田翁が実馬を見ずに大枚をはたいて買ったところ「不見転(みずてん)」と言われ、それにちなんでスイテン(水天)となったという馬名の由来を知ってから間違えなくなった。

 クロワデュノールは、同じ斉藤崇史厩舎で、同じ北村友一騎手が乗り、馬主も同じクロノジェネシスの馬名の響きが耳に残っていて混乱したのだと思う。クロワデュノール(Croix du Nord)の馬名の由来は「北十字星」のフランス語。クロノジェネシス(Chrono Genesis)は母名の一部+「創世記」。母名はクロノロジスト(Chronologist)。「クロワ・デュ・ノール」と「クロノ・ジェネシス」。もっと早く、こう書き出して、何度も声に出して読み直せばよかったのかもしれない。

 皐月賞で2着となったクロワデュノールは、向正面での不利が響いたうえに、瞬発力のあるミュージアムマイルに切れ負けした感じだった。北村友一騎手は、ビッグレースでの大本命の鞍上にふさわしく、堂々と勝ちに行く競馬をした。ミュージアムマイルとの1馬身半差は逆転可能なはずで、日本ダービーではまた中心になってくるだろう。

 それにしても、ミュージアムマイルはこんなに強かったのか――と思ったのも、私だけではなかったはずだ。これも馬名の由来をちゃんと調べておけばよかった。ミュージアムマイルというのは、私はてっきりマイルでの戴冠を意識しての命名かと思っていたのだが、ニューヨークのマンハッタンの5番街にある通りの名称だという。しかも、ウィキペディアによると、「実際には1マイルより2ブロック長い」とのこと。皐月賞でも距離がもつというサインだったとも言える。

 さて、2、3週間前から、左手の親指の付け根が痛み、少し経ってから、左手の人指し指に針で刺されたような痛みを感じるようになった。ときどき中指も軽くしびれる。そのうち治るだろうと、痛みの強いときだけ痛み止めを飲んだり、消炎剤を塗ったりしていたのだが、あまり症状は変わらない。

 ネットで症状を検索してみたら、神経痛の疑いがあるかもしれないので、この原稿を送ったら、追突事故のあと通っていたい整形外科で診てもらおうと思う。

 追突されたのは一昨年の10月末だから、もう1年半ほど経つのだが、まだときどき首に痛みを感じる。

 追突してきたドライバーに対する怒りはないが(本当に)、彼が乗っていた車のメーカーに対して思うところはある。新車として売る車には、衝突回避ブレーキを標準装備すべきだ。これに関してあれこれ言うと長くなるので、このくらいにしておく。

 明日から北海道に取材に行く。ついでと言ったら先祖に怒られそうだが、墓参りもしてくるつもりだ。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定