
備蓄米を放出しても下がらないコメの価格。そんななかトランプ政権は関税交渉をめぐり、アメリカ産の米の輸入量を増やすよう、日本に求めています。もしコメの輸入が増えると価格は安くなるのでしょうか?
農家「収入が減り、経営が成り立たなくなる」 アメリカから輸入拡大したら…井上貴博キャスター:
日本人の主食であるコメの政策をどのように見直していくのか、根本的に考え直すべき時期にきているのかもしれません。
アメリカから輸入拡大してくれないかという話をされていて、仮に拡大した場合、国内産のコメにどんな影響があるのでしょうか。
まず、それぞれの価格を見ていきますが、国産米は5キロで4217円で、15週連続の値上がりとなっています。
※4月7日〜13日の全国のスーパーの平均価格
一方で、アメリカ産のカルローズ米は、5キロで3751円でした。10キロの7501円から換算したものです。
※22日の大阪府内のスーパー
国産米よりも安く提供されています。もう一つニュースになっているのは、韓国産のコメです。
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韓国農協インターナショナルは、3月に2トンを輸入し、完売したということです。5月には20トンを輸入予定です。
日本の年間生産量は700万トンと言われていて、それに比べると相当少ないんですが、韓国米の輸入は2012年の16トンを上回り、過去最多の見通しだということです。
22日の都内のスーパーでは、5キロで4833円と、国産よりも高くなっていました。
※4キロ3866円から換算
輸入米が拡大したらどうなるか、価格の面で専門家に話を聞きました。
東京大学 鈴木宣弘 特任教授
「価格が下がる可能性が高い。消費者は安いコメを求める傾向にあるので、輸入米の流通量が増える分、国産米も下げざるをえない」
無理やりでも、下げるしかなくなるのではないかということです。
消費者としては値段が下がるのはいいことですが、農家としては経営が立ち行かないということになります。
小池農園 小池貴史さん
「コメ価格は下がると思うが、収入が減り、経営が成り立たなくなる。輸入に頼らず、国産米を増やすべき」
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そのためには、政府の補助金が必要だと訴えています。
今まで減反政策を行っていました。その際に、畑に変えていました。
それを田んぼに転換することが必要ですが、期間は約2年、費用は数百万円かかると言われています。
さらに、用水路の整備、畑を平坦にするなどが必要になります。その他にも、機材費や燃料費もかかってくるので、数百万円を補助してもらわないと立ち行かないというわけです。
農家の皆さんから言えば、政府の言う通りに、減反政策に従って生産調整して、畑などに変えてきました。そして、今、「輸入米を入れるのか」という声があるのは当然だなと思います。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
今回の関税交渉で、日本側がアメリカの要求のコメの受け入れ拡大をすることはありません。政府の関係者に聞いてみても、今回はやりませんと言っています。
理由はいくつかあって、一つはアメリカが本当にコメの輸入拡大を求めているかどうかという点です。トランプ政権の中でも相当揺れ動いていて、はっきりしていません。
やはりコメの自給は、日本の食料安全保障の根幹です。あまり議論のないまま、アメリカにお土産を出すみたいな形でやるのはもうやめましょう、ということで、この問題は少し先送りになっていると思います。
井上キャスター:
コメの政策に関して、日本は今まで減反政策(生産調整)をして、輸入も制限して守る形でやってきました。
例えば、これからはコメをたくさん作って、余った分は輸出するなど、大転換をするような話し合いにはならないのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
少しずつそういう市場原理を取り入れるなどをやってきて、減反自体はもう解消してますが、なんせスピードが遅いんです。
そうこうしているうちに、農家の人たちの高齢化が進んで、平均年齢が70歳近くなってしまい、後継者もいないという事態になっています。
この状況から転換するには、非常に難しい状況まで陥ってしまいました。こういう段階で、無理に市場原理を導入してしまうと、地道に作っていた農家が潰れてしまうことになります。
なので、保護しながら、市場原理を少しずつ入れることをやっていく必要があると思います。
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出水麻衣キャスター:
現場から「補助金が欲しい」という声もありますが、他に何か手立てはあるのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
なんだかんだ言っても、日本のコメ政策は小規模なんですよね。小規模でコストが高いので、それを少しでも大規模にしていくなどでしょうか。
他には、コメ作りをやめた人を相手にレンタルできるようなシステムを拡大していくこと。
移住した若い人で「コメを作りたい」という人がいるので自由にできるような仕組みづくりをすることですね。
それから、基盤整備みたいなものは自治体や農水省が手伝うなど、そういう工夫の余地はあります。
なんせ、日本の食料自給率は38%しかないので、ここでコメも外国から頼るわけにはいきません。日本全体の食料をどうするのかを、枠組みで考える必要があると思います。
5月1日にも関税交渉か トランプ氏からは輸入拡大の要求?井上キャスター:
輸入を増やそうという話が上がったのは、国内で値段が上がっているからというわけではなく、アメリカから持ちかけられているということになるわけです。
ミニマム・アクセスという制度があって、関税がかからない輸入枠が設けられています。年間で約77万トンで、日本の年間生産量の10分の1くらいの量です。
2023年度、アメリカからは約34.8万トンを輸入しました。トランプ大統領からは、輸入を拡大するように求められました。
赤沢経済再生担当大臣は、4月30日から3日間、渡米する予定で、5月1日にも2回目の関税交渉が行われるとみられます。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
目前の参院選で、農業関係の票を自民党は失いたくないということはありますが、もう少し長い目で見て、日本にとっていかにコメが大事かという問題もあります。
アメリカの要求で、トランプ大統領が本当にコメの市場開放を望んでいるのかとなると、アメリカのコメはカリフォルニアで作っているのですが、カリフォルニアはトランプ大統領にとって天敵の民主党の牙城です。なので、実はトランプ大統領自身もあまり関心がないのではないかとみられます。
小麦に関しては中西部で作っていたりしますが、小麦の方に関心が移りつつあるのではないかというくらい、アメリカの要求がどんどん移り変わっています。
どこにフォーカスしていいかわからないというのが現状だと思います。
井上キャスター:
赤沢経済再生担当大臣が4月30日に渡米の予定とのことですが、ある程度話し合いをつけていくのか、「とりあえず2回目、行ってみよう」という感覚なのか、どのくらいの温度感なのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
明らかに日本政府の対応は、引き伸ばし作戦になってきましたね。
そうこうしているうちに、アメリカも中国との関係で、関税を下げると言い始めました。
アメリカ自身がいろいろな要求をトーンダウンさせていくのではないかとみていて、それを見極めるのが赤沢大臣の一番大きなミッションだと思います。
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<プロフィール>
星 浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年