CCC、なぜ書店ツタヤの海外進出を加速?マレーシアで人気、カンボジアも出店

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2025年04月25日 18:00  Business Journal

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「TSUTAYA BOOKSTORE イオンモール プノンペン」(CCC提供)

●この記事のポイント
・CCCが東南アジアで「蔦屋書店」「TSUTAYA BOOKSTORE」などの大型ライフスタイル提案型書店の出店を加速
・東南アジアの多くの国々では識字率が高く、読書文化が根付いているため、本を通じたライフスタイル提案型書店の需要が高い
・今月にはカンボジアに初出店し、同国で6店舗の出店を予定。今後もAPECでの出店を計画


 カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、マレーシアやカンボジアなど東南アジアで「蔦屋書店」「TSUTAYA BOOKSTORE」などの大型のライフスタイル提案型書店の出店を加速させている。すでにマレーシアでは3店舗を展開し、今月にはカンボジアに同国1号店をオープンさせたが、なぜCCCは東南アジア市場に目をつけたのか。また、その店舗は日本の「TSUTAYA」とは大きく異なるのか。CCCに取材した。


●目次



経済成長とともに中産階級が増加
クアラルンプールの蔦屋書店は人気を博している

 国内「SHIBUYA」のフラッグシップ点の「SHIBUYA TSUTAYA(渋谷ツタヤ)」(東京・渋谷)が昨年(2024年)4月にリニューアルオープンし、店内を埋め尽くしていたDVDやCD、書籍などがなくなり、大きく様変わりした光景が話題を呼んだが、国内では書店数が減少の一途をたどっている。


 そうしたなか、CCCは書店事業の海外進出を加速させている。2022年にはマレーシアの首都・クアラルンプールに同国1号店となる「ブキット・ジャリル 蔦屋書店」を、23年には「TSUTAYA BOOKSTORE」を、24年にはジョホールバルに「TSUTAYA BOOKSTORE イオンモール テブラウ シティ店」を相次いで出店。今月にはカンボジアの首都プノンペンに同国1号店となる「TSUTAYA BOOKSTORE」をオープン。34年までに同国内に6店舗を出店予定となっている。


 背景には、両国のめざましい経済成長があげられる。CCCがマレーシアへの進出を決めた21年時点での同国の一人当たりGDPはASEAN加盟国の中で3番目に高く、22年の実質GDP成長率は8%台。人口約3400万人(24年現在)のなかで若年層の比率が高く、「ライフスタイルに対して感度の高い人々が多く暮らす」(CCCのプレスリリースより)点も、CCCが同国市場に注力する要因の一つとなった。カンボジアはリーマンショック以降もGDP成長率が年約7%に上り、人口は約1700万人(22年現在)。今後も人口増加と経済成長が続くと予測されており、人口構成比として労働力となる現役世代の割合が高い。


 たとえば昨年にオープンしたマレーシアの「TSUTAYA BOOKSTOREは、文具雑貨やアート本を豊富にそろえ、英語、中国語、マレー語、日本語の4言語の書籍や、海外でも人気の日本のIP(アニメ・コミックなど)を扱い、英語、中国語、マレー語に訳された日本の絵本を多数そろえた児童書売り場を充実。ファミリー層の取り込みを意識した店舗づくりとなっており、日本の店舗でもおなじみの「BOOK & CAFE」スタイルとなっている。


経済成長とともに中産階級が増加

 東南アジアで書店事業を拡大させる背景について、CCCはいう。


「CCCは、APECにおいて市場の成長性と多様性に注目し、各国の企業とパートナーシップを結びながら、TSUTAYA BOOKSTOREの出店を強化しております。特にマレーシアやカンボジアなどの国々では、経済成長とともに中産階級が増加していることもあり、文化的な消費への関心が高まっている為、企画会社として多種多様な文化を取り入れたライフスタイル提案が行えるチャンスがあると考えております。また、東南アジアの多くの国々では識字率が高く、読書文化が根付いているため、本を通じたライフスタイル提案型書店の需要が高いと考えております」


 日本の「TSUTAYA」とは容態やコンセプトなどは、どのように異なるのか。


「東南アジアで展開している『TSUTAYA BOOKSTORE』は、日本の店舗と同様にライフスタイル提案型の書店ですが、現地のニーズに合わせた特徴を持っています。例えば、マレーシアの店舗では、英語や中国語の書籍を中心に取り扱い、現地の文化や嗜好に合わせた商品ラインナップを展開しながら、東南アジアでも人気の高い日本の雑貨や、アニメ・コミックなどのIPコンテンツの提案も行っております。また、CCC独自のカフェを併設し、現地の食文化と日本の食文化を融合させたメニューを提供するなど、地域に根ざしたサービスを提供しています」


クアラルンプールの蔦屋書店は人気を博している

 気になる来客数や売上などは、どのような状況なのか。


「マレーシアの『TSUTAYA BOOKSTORE』『蔦屋書店』は、開業当初から多くのお客様にご来店いただき、地元の人々から高い評価を受けております。特に、クアラルンプールの『ブキット・ジャリル蔦屋書店』は、広大な店舗面積と豊富な品揃えで人気を博しています。来客数や売上について、営業情報となるため、具体的な数字の回答は差し控えさせていただきますが、強い手応を感じております」


 今後の東南アジア、および海外における出店計画について聞いた。


「2025年4月24日にはカンボジアに初出店し、2034年までに同国で6店舗の出店を予定しております。今後もAPECでの出店を計画しており、ブランド認知度を高め、日本と出店国との文化の架け橋となり、文化発展や地域社会に貢献することを目指しています」


 総合商社社員はいう。


「マレーシアやタイ、インドネシアなど東南アジア諸国の都市部は、初めて行く日本人が驚くほど都会化しており、スマホなどデジタルツールも普通に使われているが、意外にTSUTAYAのようなライフスタイル対案型の大型書店というのは、ほとんどなかった。高い経済成長が続いているなか、誰も参入していない空白地帯ともいえる市場があり、そこに目をつけたCCCが素早く進出したということ。CCCは国内で培ったエンターテインメント性の強い大型書店を運営する高いノウハウを持っており、東南アジア事業を大きく成長させていくと予想される」


(文=BUSINESS JOURNAL編集部)



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