ブラック・ジャックが夢見た未来はここに? パソナが万博で描く、iPS細胞×テクノロジーの社会

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2025年04月26日 09:01  ITmedia ビジネスオンライン

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パソナのパビリオンはどう? ブラック・ジャックが案内

 大阪・関西万博の西ゲート付近、ガンダム立像の向かいに位置するのが、パソナグループの「PASONA NATUREVERSE」だ。「いのち、ありがとう。」をコンセプトに、生命と医療の未来を体験できる空間を展開している。この空間は、どのような未来社会の可能性を示唆しているのか。


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 パビリオンは、テーマごとに「いのちの歴史」「からだ」「こころ・きずな」という3つのゾーンに分かれており、「身体の健康」「心の健康」「社会的な健康」を実現する「Well-beingな社会」の発信を目指している。


 入場すると、「生命進化の木」が来場者を迎える。1970年の大阪万博で岡本太郎氏が太陽の塔内部に設置した「生命の木」をモチーフに、多くの命が刻んできた進化の歴史を地層のように表現している。樹上の窓からは、未来の地球の一部を垣間見ることができる。


 パビリオン全体のナビゲーターとして「鉄腕アトム」と、「からだゾーン」のナビゲーターとして「ブラック・ジャック」が登場する。


 心を持ったロボットというアトムのコンセプトは、人とテクノロジーの共生というパビリオンのテーマと重なり、患者を救いたいという意志を持つブラック・ジャックの姿は、テクノロジーの目的が人間の幸福にあるという考えを象徴している。


●「医療」と「いのち」の未来を創るテクノロジー


 「からだゾーン」では、「iPS心臓」を展示している。iPS細胞や、すでに実用化されているiPS心筋シートの技術を基に、生きた細胞による立体の心臓を培養したもので、重い心臓病の新たな治療法として期待されている。


 約3.5センチの心臓は、外部からの電流や操作ではなく、自律的に拍動している。iPS細胞をもとにした心臓の立体モデルの動態展示は、世界初の試みという。


 実際の人間の心臓とは形状が異なるものの、拍動する心臓からは、今後の医療分野で大きな役割を果たす可能性を感じた。


 注目度の高い展示とあって、多くの来場者が熱心に撮影していた。パビリオンのエグゼクティブプロデューサーであり、iPS心臓を開発した大阪大名誉教授の澤芳樹氏は、「展示を通して『いのち』を感じてほしい」と語る。


 体験コーナーもあり、「未来の眠りエリア」では、センサーを多数搭載した特殊形状のベッドを展示。体の状態や呼吸、心拍数をリアルタイムで認識し、最適な角度に自動で調整する。約2分間で、深い眠りから快適な目覚めまでを疑似体験できる。来場者が快適そうに横たわる姿は印象的だった。


 未来の医療技術も提案しており、遠隔治療を可能にする未来のカテーテル手術体験や、人間とシンクロする遠隔操作ロボットである「マスターリモートシステム」などを用意している。オペレーターの動きに合わせてロボットアームがスポイトを掴み上げる精密な動きは、将来的には医療や介護の現場での活用も期待される技術だ。


●「NATUREVERSEショー」も目玉のひとつ


 「未来のわたし」をテーマにした展示では、障害や年齢にかかわらず誰もが生涯活躍できる社会を提案する。


 加齢や病気で身体機能が低下した人でも装着するだけで機能改善を可能にする「装着型サイボーグHAL」の仕組みを体験できるコーナーを設け、実用化が進むサイボーグ技術は、将来的に身体的なハンディキャップの克服につながる可能性を示している。


 そのほか、バイタルサイン(脈拍や呼吸など)の変化を常時モニタリングする小型センサー「Cyvis(サイビス)」や、X線や造影剤不要で微小血管の状況をリアルタイムで可視化する「Acoustic X(アコースティックエックス)」など、最先端のサイバニクス技術を紹介している。健康管理技術の進化が、予防医療の普及にもつながることを示唆する。


 本パビリオンの目玉のひとつでもあるのが「NATUREVERSEショー」だ。約2メートルの巨大キューブが上下水平に移動しながら未来社会の誕生を描いている。自然とテクノロジーが共生し、人々が思いやりでつながる世界を、約5分間の映像と音楽で表現している。


 巨大キューブが鮮やかな映像に連動した姿は迫力があり、ショーが始まると足を止める来場者が目立った。


●「互助の社会」というビジョン


 パソナグループが掲げる未来社会のビジョンは「ミューチュアル・ソサエティ(互助の社会)」だ。同グループ代表の南部靖之氏は「創業50周年を迎える今年、パビリオンで発信する世界の実現を目指したい」と語る。


 パビリオンの建築デザインには「心臓(いのち)の螺旋」というコンセプトを採用。約4億年前に誕生し、3回の大量絶滅期を乗り越えて繁栄したアンモナイトの螺旋形状を、人と人がつながり合う社会の象徴として位置付けた。


 パビリオン名の「NATUREVERSE」は、自然(NATURE)と宇宙・世界(UNIVERSE)を組み合わせた造語で、自然を尊重する世界を築きたいという思いが込められている。


 万博終了後、このパビリオンはパソナグループが本社機能の一部を移転した淡路島(兵庫県)へ移設する予定だ。同グループが描く未来は、単なる技術の進化ではなく、人間らしさを大切にした社会の実現にある。


 生命科学の進化がもたらす可能性と、互いに支え合う社会の大切さという2つの視点から、誰もが健康でイキイキと活躍できる社会を提案している。


(カワブチカズキ)



このニュースに関するつぶやき

  • パソナと言うだけでお先真っ暗だし 今が23年前にパソナとトヨタと三井が作り出した未来だぞ
    • イイネ!2
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