
春のGIシリーズが中休みの今週、香港ではFWDチャンピオンズデーが開催され、チェアマンズスプリントプライズ(シャティン・芝1200m)、チャンピオンズマイル(シャティン・芝1600m)、クイーンエリザベスII世カップ(シャティン・芝2000m)と、3つのGIレースが行なわれる。
この3競走には、計8頭の日本調教馬が参戦。日本でも馬券が発売される。
3戦とも日本調教馬の勝ち負けが期待され、もちろん各馬の健闘を祈っているが、ここではあくまでも馬券勝負に徹したい。しかも、狙いは好配当。各レースにおいて、配当的な妙味がありそうな"穴馬"をピックアップしていきたいと思う。
まずは、チェアマンズスプリントプライズ。日本からはエイシンフェンサー(牝5歳)、サトノレーヴ(牡6歳)、ダノンマッキンリー(牡4歳)、ルガル(牡5歳)の4頭が出走する。
断然の人気を誇るのは、デビュー以来14戦12勝、2着2回という圧巻の成績を残し、ただいま11連勝中の地元カーインライジング(せん4歳)だ。同舞台ではレコードタイムを2度も更新。ここでも大崩れは考えられない。日本でも同馬の人気は揺るがず、GI高松宮記念(3月30日/中京・芝1200m)の覇者サトノレーヴが2番人気、GI3戦を含めて重賞4戦連続2着の地元香港のヘリオスエクスプレス(せん5歳)が3番人気と続くのではないか。
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これら3頭の牙城は分厚いが、一角崩しがあるとすれば、およそ1年ぶりの出走となる地元香港のラッキースワイネス(せん6歳)。一昨年に、このレースとGI香港スプリント(シャティン・芝1200m)を制した先代の香港スプリント王だ。
左前脚の故障などでこの1年は戦列を離れていたが、まだまだ衰える年齢ではない。長期休養を強いられる前までは使い詰めだったことを考えれば、むしろこの休養はいい効果をもたらすかもしれない。フレッシュな状態で迎える今回、大駆けの可能性は大いにある。
もう1頭、不気味なのはラッキーウィズユー(せん7歳)。一昨年の香港スプリントでは、前出ラッキースワイネスの2着。昨年はなかなか上位争いに加われなかったものの、直近3走で復調気配を見せている。乾いた馬場で時計がかかるようなら、面白い存在だ。
ガイアフォース(牡6歳)の初の海外挑戦となるチャンピオンズマイルは、現在GI3連勝中と覚醒したヴォイッジバブル(せん6歳)が人気。そもそも近年の香港を代表する名馬、ゴールデンシックスティやロマンチックウォリアーがいなければ、この馬も歴史に残るレベルの逸材。GI4連勝も十分にあり得る。
これに続くのは、オーストラリアのGIを9勝しているミスターブライトサイド(せん7歳)。マイル戦では21戦してすべて4着以内と、今回も上位争いに絡んでくるのは間違いない。
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この「2強」に割って入るとすれば、地元香港のギャラクシーパッチ(せん5歳)か。昨年のGI香港マイル(シャティン・芝1600m)では、日本のオッズでも4番人気に推された実力馬だ。
同レースでは7着に終わったが、スタートで跳ね上がったうえ、内の馬から寄せられて完全に後手を踏んでしまった。最後の直線でもなかなか進路が見つからず、伸び始めたところで再三挟まれる不利を受けたことが響いた。この敗戦から、今回は人気の盲点になりそう。馬場があまり渋らなければ、勝ち負けを演じても不思議ではない。
逆に馬場が渋った場合は、レッドライオン(せん6歳)、ハッピートゥギャザー(せん6歳)ら地元香港の伏兵2頭に要注意。レッドライオンは昨年も人気薄で2着に入って、波乱を演出している。
最後にクイーンエリザベスII世カップ。過去3連覇を果たしているロマンチックウォリアーが不在で、タスティエーラ(牡5歳)、プログノーシス(牡7歳)、リバティアイランド(牝5歳)の日本調教馬3頭vsフランスのゴリアット(せん5歳)といった対決の構図。各馬の実績を鑑みれば、どの馬にも戴冠のチャンスはある。
しかしながら、4頭とも懸念材料を抱えている。日本調教馬3頭は長らく勝ち星から遠ざかっており、ゴリアットは昨年のGIジャパンカップ(6着。東京・芝2400m)以来の実戦で、実のところ2000m戦は未勝利。それぞれの能力は認めるものの、いずれも全幅の信頼は置きづらい。
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そこで一発を期待したいのは、ニュージーランドから遠征してくるエルヴェンセドール(せん6歳)。GI3連勝を含めて、目下4連勝中だ。ただ、その連勝は地元の強豪が不在のレースでのこと。その意味では、同馬に対する評価も分かれるところだが、それを補って余りある"推し"の材料がある。
第一に、今回鞍上を務めるのが"香港の帝王"ザカリー・パートン騎手であることだ。しかも、同馬との初コンタクトを取ったあと、同騎手は「楽しみにしててよ」と好感触を見せた。
次に、展開面。有力どころには展開を作る馬が不在で、二枚腰を使う同馬の先行力は大きな魅力だ。そのうえ、馬場が渋った際のシャティン・芝2000mは内枠先行有利。最内枠を引いたのは、かなりのプラス材料だ。
人気の面々が後方で牽制し合うようなら、この馬がアッと驚かせる場面があってもおかしくない。