【ロンドン時事】エネルギー安全保障の強化に必要不可欠な再生可能エネルギーへの移行の取り組みが世界で加速している。ただ、エネルギーに関するサプライチェーン(供給網)には大きな偏りがあり、多様化は喫緊の課題。また、再エネ移行には膨大な投資が必要で、投資促進に向け国際社会の連携がカギとなっている。
「エネルギー安全保障は国家安全保障にとって不可欠だ」。25日までロンドンで開かれた「エネルギー安全保障の未来サミット」には、約60カ国・地域の政府代表や業界リーダーらが参加。この言葉を共通認識とし、エネルギー安保の強化に向け国際社会が連携することで合意した。
しかし、課題は山積している。コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻、世界的な貿易戦争では、たびたびエネルギーやその原材料が戦争や交渉の道具として利用されてきた。日本や欧州などエネルギーや原材料を輸入に頼る国・地域の国家安全保障における脆弱(ぜいじゃく)性が露呈した。
電力需要がますます増大する中、重要鉱物や偏った供給網はエネルギー安保上のリスクとなり得る。サミットの共同議長を務めた国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、電力需要の高まりで2035年ごろに重大な銅不足に陥るとの予測を踏まえ、調達先や供給網の多様化が肝要だと指摘した。
再エネへの移行は企業からの投資が欠かせない。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は、企業の参入には「規制の確実性、予測可能性などが必要」と説明し、国際的に連携した環境整備への取り組みを訴える。
一方、気候変動対策を撤廃した米国とは不協和音が高まる。米エネルギー省の担当者は、50年に温室効果ガス排出量ネットゼロを達成する目標の追求はエネルギー不足を招き、「有害で危険だ」と強調。重要鉱物のほぼ全てを供給する中国に振り回されかねず、「敵対国の利益にかなう」と批判した。