「勝手に撮影・無断投稿」『日経』の“生肉ハンバーグ”記事、食中毒の危険で問われる倫理観

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2025年04月27日 09:10  週刊女性PRIME

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週刊女性PRIME

日経が取り上げた『極味や』という店

 日本が誇るクオリティペーパー『日本経済新聞』。そんな一流紙の電子版が4月10日に配信した記事が波紋を呼んでいる。

 記事のタイトルは《福岡発、体験型ハンバーグ 「自ら焼く」投稿が行列呼ぶ》。同記事は、ひき肉をこねて成形した生状態のハンバーグを客に提供、“体験型”の名のとおり客が自身で鉄板・鉄石で焼くスタイルの店を記事で紹介している。

『日本経済新聞』の記事に波紋

「牛肉で食中毒を起こす『O157』などの病原性大腸菌は腸管内にいて、食肉処理時に肉の表面につきます。肉の塊のステーキは全体の表面さえ加熱すれば安全といえますが、ひき肉のハンバーグは“中”に病原菌がいる可能性があるので、内部まで十分な加熱が必要です」(飲食店経営者)

 上記の記事には担当者が撮影したと思われる“動画”も載っていた。ハンバーグの元となる生のひき肉の塊が鉄板にのっている。それを適量にちぎり、熱せられた鉄石で焼きを入れる。担当記者は生肉ハンバーグを取り分けた箸を使って焼き、“そのままの箸”でタレの入った取り皿に入れ、食しているように見える動画だ。

 こんな日経の記事に批判が相次いでいる。

《危険すぎる。日経は責任取れるのか?》

《これ保健所激おこ案件だろ》

《ちょっと昔、相模原の「手ごねハンバーグ」で食中毒事件あったの覚えてますか? 過去にそういうが無かったか調べましたか? そういうチェックせずに、あなた達はこんな提灯記事書いてるのですか?》

《日経さん何やらかしてくれてんの?? 流石にハンバーグ生はねーよ というか店だってちゃんと事前注意してんのにさ》

 日経が取り上げたのは『極味や』という店。運営会社は福岡県にあり、記事で紹介されたのも福岡県内の店舗だったが、支店は東京・神奈川・愛知・三重にも。

 運営会社にこの件について話を聞いた。

「客側にゆだねている」状況

──本商品は、焼きの作業すなわち食中毒の危険性への対応を、「客側にゆだねている」状況となる。商品の提供方法および食中毒の危険性についての対応をどのように考えているのか?

「ご指摘の弊社商品は生食用ではなく、必ず中心部まで十分に火を通してお召し上がりいただくことを前提に提供しております。焼肉店と同様の考え方です。ひき肉に限らず、すべての生肉には食中毒の原因となる病原菌が存在するリスクがございます。
店舗内においては、適切な焼き方・召し上がり方を記載したPOPを設置し、肉を焼くときと食べる時のお箸を使い分けていただくように周知徹底させております。

 さらに食の安全対策の周知徹底を図るため、先々月より所轄の保健所と内容を共有し、保健所の御指導も仰ぎながら準備を進めてまいりました食べ方の動画が完成いたしましたので、自社ホームページ内の公式YouTubeチャンネルにて公開しております。併せて、『安心・安全に関するご案内ページ』も先日公開いたしました。

 上記動画につきましては、現在、各店舗で順次モニターを設置し、店頭での視聴環境の整備も進めております」(『極味や』株式会社わっはっは担当者、以下同)

──日経の記事は食中毒の危険性を感じさせる映像となっていたが?

「該当の映像は営業中の店舗にて日本経済新聞社の取材を受けた際に同社の担当者によって撮影されたもので、一部の撮影については弊社スタッフが常時立ち会って確認することができない時間がございました。

 その結果、映像の一部の内容が弊社の意図とは異なり、お客様に誤解を招きかねない表現となっておりましたため、弊社より日本経済新聞社に連絡を行い、該当動画は既に削除していただいております。記事につきましても一時的に公開が停止され、動画削除の旨が明記されたうえで記事の再掲載がされたことを確認しております。

 なお、記事および動画の内容に関しましては、日本経済新聞社の担当者がXに動画を投稿することも事前に確認がなく、動画の内容に関しても事前に当社への確認や情報共有はなかったため、X上への動画投稿についても、今回御誌からお問い合わせをいただいて初めて内容を確認いたしました。

 今後は、取材対応時の表現確認体制および事前確認のプロセスを強化し、同様の事態が再発しないよう社内体制を一層整えてまいる所存です」

 確かに映像には、店側が「焼く用(トングとしての用途)」と「食べる用」に分けて提供している2膳の箸が一瞬映り、確認できた。しかし、担当記者は箸を使い分けておらず、記事は食中毒の危険性についても言及していない。そのうえ、今回批判された動画については店側に対し“無断”で撮影されていた。

 運営会社が答えたとおり現在、当該動画は削除され、記事のタイトルも変更されている。

 かつて新聞(記者)は“社会の木鐸”とも言われた。それすなわち“世の中を教導し、正す人”

──今、新聞は、読む人をどこに向かわせたいのか。

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