劇場アニメ『卓球少女 -閃光のかなたへ-』夏川椎菜×雨宮天×麻倉もも 青春を駆ける少女たちと3人の挑戦

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2025年04月28日 11:10  クランクイン!

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クランクイン!

劇場アニメ『卓球少女 -閃光のかなたへ-』に出演する(左から)雨宮天、夏川椎菜、麻倉もも (C)Hua Mei. All Rights Reserved.
 中国の人気アニメ『白色閃電』の日本語吹替版として、5月16日より全国公開となる劇場アニメ『卓球少女 -閃光のかなたへ-』。物語の軸となるのは、卓球を通して出会い、ぶつかり合い、刺激し合いながら成長していく少女たち。演じるのは、TrySailとしても活動する夏川椎菜(ジャン・ルオイ役)、雨宮天(ワン・ルー役)、麻倉もも(リ・シントン役)。クランクイン!では、本作の公開を記念した3人の鼎談インタビューを実施。それぞれが演じるキャラクターに込めた想いや熱量あふれる試合シーンの裏側、さらに3人の“原点”ともいえる学生時代のエピソードやTrySailとしての成長まで、たっぷりと語ってもらった。

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■青春、挫折、そして再起。3人の演じた少女たちと芝居に込めた想い

――女子卓球を題材にしたアニメ『卓球少女』ですが、最初に作品をご覧になった際の感想を教えてください。

夏川:卓球って、すごく身近なスポーツじゃないですか。誰もが一度はやったことがあったり、体育の授業で触れたり。でもこの作品は、そんな馴染みのある題材を使って、青春をものすごく丁寧に描いているんです。

登場するキャラクターたちは、一度は壁にぶつかって挫折を経験しているんですけど、それを“辛い過去”として描くんじゃなくて、ちゃんとその挫折を経た“今”にフォーカスしている。その今をどう前向きに生きているか、どう卓球と向き合っているのかが丁寧に描かれていて、観ていてすごく心が温かくなりました。

雨宮:最初は「ストイックで熱血なスポ根ものかな?」というイメージを勝手に持っていたんです。ひたすら自分と向き合って、黙々と練習を積み重ねるような。でも、ジャン・ルオイのキャラクターデザインを見たときに「あれ?」って。実際に観てみたら、もちろん熱い試合のシーンもあるんですけど、それだけじゃなくて、日常の何気ないシーンもすごく丁寧に描かれているんです。

たとえば、制服がジャージだったり、食卓に並ぶ料理が日本と全然違ったり。そんなふとしたところに日本との文化の違いが見えて、リアルさと面白さがあって。構えずにリラックスして観られるし、その中にちゃんと熱さもある。そんなバランスがすごく魅力的だと思いました。

麻倉:「中国では、卓球ってここまで愛されているんだ」というのが、最初の印象でした。屋外に卓球台が置いてあって、誰でも自由にプレイできるような文化があるのだと驚きました。

キャラクターたちそれぞれが、いろんな想いや悩みを抱えて卓球に向き合っていて、試合のシーンでは本当に息をのむような展開もあります。でもその一方で、日常ではクスッと笑えるようなシーンもあって。試合の緊張感と、日常のやわらかさ。その緩急がすごく心地よくて、「この世界にもっと浸っていたい」と思わせてくれる作品でした。

――それぞれが演じたキャラクターの第一印象、演じるうえで特に意識したことは?

夏川:最初にジャン・ルオイを見たときは、「クールな子なのかな」という印象が強かったです。物語の冒頭でも彼女はすでに一度、卓球で大きな挫折を経験しているんですよね。そこから話が始まるので、「もしかして影のあるキャラクターなのかな」と思いながら見ていました。

でも、物語が進むにつれて気づいたのは、彼女はその挫折を重たく背負っているわけではなく、すごくまっすぐに、前向きに受け止めているということ。過去に起きたことをきちんと自分の中で整理して、そのうえで“今やりたいこと”や“今できること”にしっかり向き合っている。そんな姿がとても印象的でした。

それに、方向音痴だったり、甘いものが苦手だったり、ちょっと天然っぽいところもあったりして……意外とギャップのある子なんですよ(笑)。普段はあまり感情を表に出すタイプではないんですけど、卓球の話になると、心の揺らぎが少しずつ見えてくる。モノローグが増えたり、表情が変わったりして。本当に卓球が好きなんだなっていうのが伝わってきたので、そういう“卓球への熱”がにじむように、私自身も大切に演じました。

雨宮:ワン・ルーは、パッと見て「優等生だな」と思いました。実際、勉強もできるし、代表として全校生徒の前でスピーチを任されたりもしていて、まさにその通りの子なんです。でも本編を見てみると、意外なほど表情豊かで、ギャグ顔になる率がたぶん一番高いんじゃないかってくらい(笑)。そのギャップがすごく面白かったです。

演じるうえでは、中国語の原音以上に、場面ごとの感情の切り替えをしっかり出すことを意識しました。普段はプライドが高くて、自分に自信がある話し方をするけれど、悔しい場面ではしっかり悔しがる。ギャグシーンでは思いっきり振り切って、楽しそうに演じる。

ルオイもそうなんですけど、髪が長くて一見クールに見えるところがあって、そういう意味では近い印象を持たれるかもしれません。でも、演じ分けるためにもしっかりとキャラの緩急をつけて、“らしさ”がより伝わるように意識しました。

麻倉:リ・シントンは、見た目からして明るくて、誰とでもすぐ仲良くなれるような子。実際に演じてみても、その第一印象は最後まで変わりませんでした。とにかく元気で、チームのムードメーカー的な存在です。

でも、試合のシーンになると一変して“解説ポジション”になるんですよね。他のみんなと一緒に試合を観てるんですけど、彼女だけが自分の世界に入り込んで、実況をしてるような独特のテンションで。すごく面白くて、印象的でした。

演じる際には、ご覧になるみなさんの中には卓球をあまり知らない方もいるだろうと思って、技の名前や道具の名称などがきちんと伝わるように意識していました。専門用語も多かったので、リズムや発音を丁寧にして、自然に耳に入ってくるよう心がけました。

――息をのむ迫力の試合シーンも魅力の本作ですが、アフレコもかなりハードだったのでは?

夏川:やっぱり卓球って、実際の試合でもラリーのスピードがものすごく速いじゃないですか。アニメでも試合が盛り上がるほどテンポがどんどん速くなっていって、もう“相手が打った瞬間に自分も返す”くらいの感覚で。なので、アフレコ中もとにかく息をつく暇がなくて(笑)。

その緊迫感とか、集中力の高まり方が、本当に試合をしてるような気分になるくらいリアルで。大変だったけど、演じながら気持ちが自然と熱くなるような、すごく貴重な体験でした。

雨宮:今回はすでに完成された映像に声をあてる、いわゆる「完全吹き替え」だったんですけど、特に試合のシーンでは、1球ごとにサーブを打つ、返す……そのすべてのタイミングに細かく息や声を入れる必要があって、本当に大変でした。

しかも、動きがめちゃくちゃ早いので、キャラクターの口の動きと台詞・息を瞬時に合わせなきゃいけなくて。「アッ!」って勢いよく声を出したら、実はキャラの口が閉じてて、「あ、これは“ンッ!”だった!」みたいな(笑)。自分から「リテイクさせてください」ってお願いしたことも何度もありました。

でも、そうして丁寧に収録した分、完成した映像を観たときに、試合の迫力や臨場感がすごく伝わってきて。「ああ、頑張ってよかったな」って、報われた気持ちになりました。

麻倉:シントンはプレイヤーというよりは、解説ポジションが多かったので、試合のシーンにはあまり出ないんですが……それでも結構大変でした(笑)。というのも、私自身が卓球初心者だったので、最初は台本に出てくる言葉の意味がまったく分からなくて。技の名前も道具の名称もカタカナばかりで、しかもすごく長かったりして。

「これはどういう技?」「どういう場面で使われるの?」って、まず“知るところ”から始めなきゃいけなかったんです。だからこそ、観る人にもしっかり伝わるように、ひとつひとつ理解しながら、言葉に気持ちを乗せて演じるように心がけていました。

■「この役はこの人にしかできない」3人が語る、仲間の“輝き”

――お互いの演技で「ここがすごい!」と思ったポイントは?

雨宮:今回は中国語の原音に合わせた吹き替えだったんですけど、ナンちゃん(夏川さん)が演じたルオイは、原音と印象がけっこう違うんですよね。でも、それがすごく良かった。原音に引っ張られることなく、自分の中でキャラクターをしっかり解釈して、再構築してお芝居しているのが伝わってきて……「このルオイはナンちゃんにしか出せないな」って感じました。

麻倉:ルオイって、基本的にはあまり感情を表に出さないキャラクターなんですけど、やっぱり物語のクライマックス、特にラストの卓球の試合のシーンでは、静かな中に“燃えてる”感じがすごくあって。内に秘めた熱さというか、ジャン・ルオイの心の中にある炎みたいなものが伝わってきて、「うわぁ……かっこいいな」って思いました。

ルーも、優等生の顔とギャグキャラの顔を見事に切り替えていて、その振れ幅がめちゃくちゃ楽しかったです(笑)。本当に見ていて飽きないし、魅力がどんどん増していくキャラクターでした。

夏川:ルーは、とにかくギャグシーンでの爆発力がすごかったです。やりきり方が本当に見事で、あのテンションの高さと、その後ふっと引いていく感じ。まるで一つの芸術作品を見ているようで、「ギャグの芸術だ!」って思うくらい(笑)。聴いていてすごく楽しかったです。

そして、もちさん(麻倉さん)のシントンは、早口で卓球の知識をバーッと言わなきゃいけないシーンが多くて、もうそれだけでも大変そうなのに、応援のシーンではまた違った表現が必要で。試合中の仲間たち、ルオイやルーに向けて、いろんな“応援のかたち”を届けてくれるんです。あの演技に、私もたくさん力をもらっていました。

――三者三様の輝きがありますよね。それぞれのキャラクター目線で特に印象に残ったセリフやシーンはありますか?

夏川:私、この作品の中でとても好きなセリフがあって。それが、本編中で何度か出てくる「まだ終わってない」っていうセリフです。

すごく短い言葉なんですけど、それがこの作品全体を象徴しているように感じました。一度は挫折を味わったけれど、それでも前を向いて、今を一生懸命生きている。そんなテーマがぎゅっと詰まったセリフで、とても心に残っています。

雨宮:私は、ロン・シャオっていうルーの知り合いとのやり取りがあったシーンが特に印象に残ってます。ルーがギャグ顔になるくらい、テンション高くわちゃわちゃしていて(笑)。場所はただの町の歩道なんですけど、まるで舞台のようににぎやかで、あの空間がすごく好きでした。

ルーって普段は優等生で、ちょっとプライドが高くて真面目な子なので、あんなに崩れることって実はあまりないんですよね。でもあのシーンがあったことで、「この子、こんな一面もあるんだ」って、自分の中でルーの幅がぐっと広がりました。演じていても、とても楽しかったシーンです。

麻倉:私が好きなのは、シントンがルオイを誘って一緒にタピオカを飲みに行くシーンです。すごく静かで落ち着いた空間で、2人が少しずつ心の距離を縮めていく時間が流れていて。途中でちょっとしたアクシデントがあって、そこから一気に仲が深まるんですよね。

学園ものならではの“甘酸っぱさ”というか、“初々しさ”みたいなものがあって。観ていても、演じていてもすごく心が温まる、大好きなシーンでした。

――アフレコ現場の雰囲気はいかがでしたか?

夏川:生徒がたくさん登場する作品なので、とにかく出演者の人数が多くて。スタジオの中もかなりミチミチで(笑)、とても賑やかな収録でした。

しかもその日は収録の順番的に、最初に一番重いシーンをみんなで録ることになっていたので、もう冒頭からフルスロットル。みんな自然と集中モードに入っていて、「よし、やるぞ!」って一体感がありました。あの熱量は今でも印象に残っています。

雨宮:ほんとに「学園ものあるある」なんですけど、とにかく人数が多くて! スタジオには常時30人近くいて、しかも兼ね役の方もたくさんいるので、マイク前は常に混雑状態。自分のセリフを言いながら、背中で「次の人が入りたがってるのを感じる」みたいな瞬間が何度もありました(笑)。

それでも、声がかぶると録れなくなってしまうので、最終的には分けて録ることも多かったですね。限られた収録時間の中で、ものすごく集中して一気にやりきった感じでした。体力的にも結構ハードだったけど、やりきった感はすごくありました!

麻倉:人数が多いぶん、現場は本当にワイワイしていて、隣の方とおしゃべりしたり、すごく和やかな雰囲気でした。でも、卓球の試合シーンに入ると一転して、空気がピンと張り詰めるんです。見ているだけでも息をのむような緊迫感で、実際にアフレコしていると、ほんとに「息ができない!」って(笑)。

それに人数が多いと、単純にスタジオの酸素が薄くなるんですよね……。だんだん頭がふわふわしてきて、「あ、これはやばいかも」って。だからちょっとずつ換気しながら、声を掛け合って、マイク4本をみんなで使い回して。まるで部活みたいな感じで、すごくチームワークが生まれた現場だったと思います。

――また、本作の主題歌「アストライド」はTrySailが担当されていますが、どのような楽曲となっていますか?

夏川:楽曲は、まさに“王道の青春もの”といった印象で、TrySailとしてこういうまっすぐな青春感を歌うのは、実はけっこう久しぶりだった気がします。

爽やかな曲調なんですけど、明るいだけじゃなくて、少し泥臭さや、拳を突き上げたくなるような熱さも込めたくて。レコーディングでは、力強さを意識して歌う部分もあったりと、ただ眩しいだけじゃない、“リアルな青春”に寄り添ったような楽曲になったと思います。

雨宮:最初は10代のピュアな青春を描くような気持ちで歌おうとしていたんです。でもレコーディングの際にディレクターさんと話して、「もう少し“今だから歌える青春”にしよう」となって。ただの未熟さや希望だけじゃなくて、現実も知っている、でもそれでも夢や仲間に向かって突き進む。そういう“大人の青春”の要素を意識して歌いました。

私の場合、その“意志”が強く出すぎると“戦い”みたいになっちゃうので(笑)、「今のは戦いすぎたから、もう少しキラキラに戻して」とバランスを調整しながら歌っていました。聴いてくださる方には、そんな“輝き”と“意志の強さ”の両方を感じ取っていただけたら嬉しいです。

麻倉:私も最初に聴いたときは、キラキラした音の印象から「これは若い青春ソングだな」と思って、そういう方向で準備していたんですけど……、レコーディングの順番的にすでに2人が歌い終えていて、方向性が“今だからこそ歌える、大人の青春”になっていたので(笑)、自分もその流れに合わせて、声の出し方や表現を少しずつ変えていきました。

私も当初、希望やキラキラ感を前面に出そうと思っていたんですけど、レコーディングを進める中で、「もっとエモーショナルに」となって。自分の中の感情を深掘りしながら、ひとつひとつの言葉に気持ちを込めていきました。結果的に、3人それぞれの想いが重なって、とても胸に響く曲になったんじゃないかなと思います。


■全力だった過去が、今につながっている。彼女たちの原点と進化

――卓球と青春を描いた本作ですが、みなさんが学生時代「熱くなった瞬間」は?

夏川:私は中学時代、演劇部に入っていたんですけど、かなり本気の部活で、大会で優勝を目指すような熱い空気の中で活動していました。練習量も多くて、先輩後輩関係なく意見をぶつけ合うような、すごく真剣な環境だったのを覚えています。

中でも特に熱くなったのは、配役を決めるオーディションのとき。自分がどうしてその役をやりたいのかを語ったり、審査を受ける時の緊張感だったり……みんなの“この役にかける想い”がすごく伝わってくるんですよね。

その空気の中にいるだけで、自分も自然と感情が高ぶって。人のお芝居を見ていても、本気度がダイレクトに伝わってきて、毎回心が震えてました。あの頃の情熱は、今でも忘れられません。

雨宮:私も中学時代、演劇部に入っていたんですけど……実は2年生まで、演劇部自体がなかったんです(笑)。でも3年生のときに、演劇が大好きな先生が他校からいらっしゃって、そこで初めて演劇部が発足したんです。

部員はたったの4人。しかも全員が3年生。でも、その短い期間の中で、本当に濃密な時間を過ごしました。1人は裏方で、あとの3人が舞台に立って……。指導してくれた先生がすごく熱い方だったので、最後の発表のあとには、先生とみんなで抱き合って号泣するくらいの青春でした。

たった数ヵ月の活動だったんですけど、今振り返っても「エモかったなあ」と思える、かけがえのない時間でした。

麻倉:私は中高ずっとミュージカル部に所属していて、文化部ではあるんですけど、結構運動部っぽいノリのある部活でした。筋トレやランニングもあって、夏休みなんかは毎日朝から晩まで練習していて……本当に「部活のために学校に行ってた」っていうくらい夢中でした。

その中でも一番心に残っているのは、高2のときの最後の公演。5年間ずっと続けてきたものを、いよいよ締めくくるというタイミングで、やはり胸に込み上げてくるものがあって。練習中も、本番の舞台でも、いろんな思い出がよみがえってきて……。あの瞬間が、私にとっての“青春の頂点”だったと思います。

――素敵な学生時代だったのですね。また、声優としてのキャリアの中で「この経験が自分を成長させた」と感じた瞬間は?

夏川:今でもすごく印象に残っているのが、ある作品で初めて主人公を演じたときのことです。第1話のアフレコはセリフ量が多くて、しかも専門用語もたくさん出てくる作品だったので、事前にしっかりチェックして準備して臨んだんです。

ところが現場で、何度も出てくる「艦長」という単語のイントネーションが、私が思っていたものと違っていて。「艦長↓」じゃなくて「艦長↑」だったんです(笑)。しかもその単語がめちゃくちゃ頻出する!

声優って、現場でディレクションされたことをすぐに反映して返すのがプロだと思っていたので、もう必死に集中して、「艦長↑、艦長↑……」って何度も自分に言い聞かせながら演じました。冷や汗ものでしたけど、あのときの集中力と吸収力は、すごく自分の中で成長につながった経験でしたね。

雨宮:私は、しばらくの間、声優として自分にまったく自信が持てなかったんです。もともと人と関わるのがすごく苦手だったこともあって、一人で悩んでしまうことも多くて……。

でも、少しずつ同業の仲間と関われるようになって、飲みに行ったり、仕事の話をできるような友達ができて。そんな中で、自分よりもずっと経験のある声優さんからお芝居を褒めてもらったんです。

その一言が、私にとってすごく大きくて。「あ、自分はちゃんとやれてるんだ」って思えた瞬間でした。そこから、リラックスしてお芝居に臨めるようになったし、「じゃあ、こんな役も挑戦してみようかな」って自然に思えるようになって。怖がらずに挑戦できるようになったのは、あのときの経験があったからだと思います。

麻倉:私の中で「怖かったけど、成長できた」と感じているのは、アフレコ当日に映像を見て、すぐに演じるという現場を経験したときですね。事前に資料が来ないパターンだったんです。

心配性な性格なので、「えっ、このまま演じるの!?」って最初はすごく焦りました。でも、そういう“瞬発力”って、きっと声優という仕事に求められている部分なんですよね。

その場で映像を見て、空気を感じて、自分の中で噛み砕いて表現する。それを実感できたのは、私にとって大きな学びでした。

――ちなみに、TrySail 3人での成長を感じた瞬間はありますか?

雨宮:結成してから最初の数年は、ライブって言っても、渡されたセットリストをそのままやるだけで、完全に“受け身”だったんですよ。でもあるとき、その渡されたセトリがどうしても納得できなくて……「これ、本当に私たちらしいライブなの?」って疑問が湧いてきたんです。

それをきっかけに、3人で飲みに行って、その場でセトリを一から見直したんです。スマホで曲を流したりしながら、「この流れの方がよくない?」って真剣に話し合って。それからは、自分たちでライブの構成を考えるようになり、ちゃんと「これがやりたい」という意見を出すようになって。初めて“自主性”が芽生えた瞬間だったと思います。あのときの夜は、今振り返ってもすごく大事なターニングポイントでした。

夏川:数年前、アニサマに出演させていただいたときがあって、そのとき私たちTrySailが“大トリ”を務めさせてもらったんです。もう……本当に「私たちがトリでいいの!?」って、3人とも不安でいっぱいで。でも、いざステージに立ってみたら、すごくいいライブができた実感があって。

あのステージをやりきったことで、グループとして大きく自信がついたと思いますし、「私たち、ここまで来たんだな」って心から思えた瞬間でした。

麻倉:何年か前に、全国を回る20公演のライブツアーがあったんです。半年くらいかけて、毎週のようにライブをしていて……体力的にも、精神的にも本当にハードでした。その中で、誰かが体調を崩したり、喉を痛めたりして、「今日は声が出ない……」みたいなこともあって。そんなとき、他の2人が自然にフォローに回ってくれて。「いつもはこの子が歌ってるけど、今日は私がカバーしよう」って、言葉にしなくても支え合えていて。

あのツアーは本当に大変だったけど、だからこそ、TrySailとしての“チーム感”がグッと深まった実感がありました。あの経験は、3人にとって確実に成長につながったと思います。

――そんな経験や挑戦の積み重ねが、今のTrySailの活躍に繋がっているのですね。最後に、ファンのみなさんへメッセージをお願いします。

夏川:卓球というスポーツを通して出会い、少しずつ心を通わせていく少女たちの姿が、とても丁寧に、まっすぐに描かれている作品です。過去に何かを挫折した経験のある方も、今まさに頑張っている方も、少し立ち止まっている方も……きっとそれぞれの立場から、何かしらの共感を見つけてもらえる作品だと思います。

観終わったあと、少し背中を押してもらえたような、あたたかい気持ちになってもらえたら嬉しいです。ぜひ劇場でご覧ください!

雨宮:この作品のテーマのひとつに「挫折を経て、今がある」ということがあると思います。私が演じたワン・ルーは、プライドが高くて、人との関わりの中でうまくいかないことに悩んだり、ちょっとしたことでイライラしてしまったり……そんな不器用な一面を持つ子です。でもそれって、誰しもが日常の中で経験する感情でもあると思うんです。そんなふうに、キャラクターたちの葛藤や成長に、自然と共感してもらえるんじゃないかなと思います。

この作品は、「挫折からの立ち直り」が無理やり描かれているわけではなく、あくまで自然体で、彼女たちの日常の中の心の変化が描かれています。卓球経験のある方にはまた違った視点で楽しんでいただけると思いますし、そうでない方にもぜひリラックスして観ていただきたいです!

麻倉:卓球の試合シーンがとにかく素晴らしく、スピード感、迫力、そして映像の美しさに本当に驚かされます。卓球をやったことがある方はもちろん、触れたことがない方でも「こんなに奥深いスポーツなんだ」と感じていただけるんじゃないかなと思います。

そして、白熱する試合シーンと、ゆるやかで温かい日常のシーンとのギャップも、この作品の魅力のひとつです。中国の文化や街並み、食事、日常の風景の中にある卓球台……そんな異文化の空気もぜひ楽しんでもらえたら嬉しいです。たくさんの方に、この作品の魅力が届きますように。劇場でお待ちしています!

(取材・文:吉野庫之介)

 劇場アニメ『卓球少女 -閃光のかなたへ-』は、5月16日より全国公開。

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