※画像はイメージです(以下同) 共働きが一般的となり、家を買うときには「ペアローン」を組む夫婦も珍しくなくなってきました。しかしいまだに「家を買う=男」という先入観は根強いようで……。
先日のX(旧Twitter)では、そんな家を買う際の“あるある”に怒りと共感の声が溢れていました。
◆ハウスメーカーが夫には趣味部屋、私は労働部屋!?
4月上旬にXに投稿された、1歳と3歳のお子さんを育てているとある30代の女性アカウントのポストが話題となりました。
家を建てようと間取り提案を受けているなか、とあるハウスメーカーから、女性が仕事部屋としてリクエストした部屋を勝手に「家事部屋」と命名した間取りを見せられた、といった趣旨の内容です。
「車も家も、いまだに妻を夫の付属品として見てくる」と、怒りを表明するポストでもありました。
このポストに「うちも私の仕事部屋のスイッチに『家事室』とシールが貼られていた」「私も『旦那様には趣味の物を置く書斎を、奥様には家事部屋を』と言われて『なんで夫には趣味の部屋で私には労働の部屋なんですか?』と聞き返した」「夫婦で家の相談に行ったのに夫にだけ名刺を渡してきた」など、同じような体験談が続々と寄せられました。
なかには「私が世帯主で私がローンを組むのに、ハウスメーカーが一連の書類をすべて夫名義にしてきた」、「私が買うのに夫の年収しか聞かれなかったし、夫のほうだけを向いて説明をされたからキレた」といったエピソードも。
◆ペアローンの割合は年々増えている
こうした出来事が起こるのは、昭和的な性別役割分担をハウスメーカーが想定していることが背景としてあるのでしょう。
家の購入に対してお金を出すのは夫であり、家事をするのは妻というジェンダーバイアスを色濃く残したままになってしまっていそうです。
しかし住宅金融支援機構が2023年10月から2024年3月までに住宅ローンの借入れをした全国の20歳以上70歳未満の人を対象にした調査(*1)では、「ペアローン」(同一物件に関して、夫婦又は親子等が各自の収入を基準にして、それぞれ住宅ローンを利用する形態)を利用した割合は22.8%。
「収入合算」(住宅ローン申込本人の収入と、その配偶者や親子等の収入を合算して、1つの住宅ローンを利用する形態)を利用した割合は15.4%でした。
またリクルートの調査(*2)では2023年の首都圏の新築分譲マンション契約者に占める「世帯主と配偶者のペアローン」の割合は33.9%でした。
これは調査を始めた18年以降で最も多い結果に。特に首都圏においてペアローンは今や珍しいものではなくなっている現状があります。
こうした実態があるにもかかわらず、夫だけに家の説明をしたり、妻だけが家事労働をする前提の家作りを勧められたりしては、女性たちが憤りを感じるのも当然のことでしょう。
◆不動産屋やハウスメーカーの営業担当に男性が多いことも原因か
ハウスメーカーや不動産会社の営業担当には男性が多いことも、こうした事態が起きる原因なのかもしれません。
営業としてバリバリ働いている女性であれば、自分事としてローンを組む可能性や、夫婦共働きを前提にするなら家事も分担して然るべきだとの意識を持っていそうです。
実際に筆者の知人でも、ペアローンを組んでマンションを買うことを伝えたのに、家事動線やご近所付き合い、町内会の話などあらゆる無償労働について自分にだけ説明された経験をした女性がいます。
このときの担当者も、中年男性だったそうです。挨拶の際に夫にだけ名刺を渡してきたことから、内心はその時点でこの会社は候補から外していたとも。
一方で別の不動産会社の営業担当は、若い女性だったとか。すると夫婦2人に対し、それぞれ在宅ワークがあるかどうかや、家事頻度といった、個別の生活状況をヒアリングしてくれたそうです。こうした好感の持てる対応によって、マンション購入の話まで進んだと話していました。
営業担当がどのように振る舞うかも、家の購入決定を大きく左右することがわかります。
◆男性は「家事をしない」決めつけによって弊害がある体験も
またハウスメーカーや不動産会社が勝手に「家事は女性がやるもの」と想定した家作りをすることで、男性側を困らせることにもなるようです。
ネット上の、とある男性アカウントは「キッチンの間取りや台の高さを妻に合わせられ、今は腰をかがめながら料理や掃除をするハメになって後悔している」と体験談を綴っていました。
しかし、そもそも、誰が家の購入に際してお金を多く出そうが、家事をメインに担おうが、売る側に関係ない話であるともいえるのではないでしょうか。
夫婦2人で家作りの話を聞きに来ている時点で、どちらか一方だけに名刺を渡したり説明したりするのがありえない、失礼な対応だと断罪してもおかしくはないはずです。
仮に「妻が単独でローンを組む」としても、営業担当者が夫に対しては家の説明をまったくしないで勝手に「(夫の)家事部屋」と決めつけて来られたとしたら、いかにおかしな対応であるかが見えてはこないでしょうか。
共働きが増えたといった時代の変化以前に、夫婦のどちらかを蔑(ないがし)ろにするような事態そのものが糾弾されるべきことです。
台所事情や家事分担をはじめ、暮らし方には家庭ごとにさまざまな事情があります。
そうした繊細な機微をハウスメーカーや不動産会社の営業担当が理解しないことには、顧客を逃すはめになっていきていることを、各会社は重く受け止めるべき頃合いになっているかもしれません。
*1…住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2024年4月調査)】」より
*2…株式会社リクルート「2023年首都圏新築マンション契約者動向調査」より
<文/エタノール純子>
【エタノール純子】
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中